情報の種類と特徴
大学のレポートやプレゼンテーションで根拠として用いる資料には、客観性や信頼性の高さが求められます。レポートやプレゼンテーションの評価にあたっては、内容はもちろんですが、適切な資料を選定して調査できているかも大事なポイントとなります。適切な資料を効率的に探すためには、まず様々な情報の特徴を押さえておく必要があります。
この章では、様々な「情報」のうち、映像・音声資料、アンケート・フィールドワーク・実験データなどは除き、オンラインも含めた文書情報について解説します。
情報の生産と流通
まず、世の中の情報が一般的にどのように生産されていくか流れを見てみましょう。
世の中で大きな出来事が起こる(例:震災の発生)
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一般市民がSNSで発信する インターネットニュースやテレビで第一報が発信される
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翌日、新聞で報じられる
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1週間後に週刊誌、1か月後に月刊誌など、時間の経過に見合った取材結果が雑誌記事として掲載される
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学術的な研究が行われる場合、数か月後(あるいはそれ以上)に学術雑誌に研究成果の論文が掲載される
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包括的な情報が、1年あるいは数年後、図書として出版される 公的な統計類も1年程度たってから公開される
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重要なものは、事典に掲載されたり、教科書に掲載されたりする
みなさんのレポートやプレゼンテーションには、どのタイプの情報が必要なのかを考えてみましょう。生産されるまでにかかる時間から、どのタイプの情報を利用するべきかを判断することができます。
情報のタイプ
ここからは、課題が出されてから提出までの具体的な作業を見ていきます。
- 誰が発信している情報か?
- Webサイトの記事は、誰(どこの機関)が書いたのか分からないものが多くありますが、レポートでは発信者が不明の情報を利用すべきではありません。また、発信者が分かる場合でも、公的機関や学会など、その分野に通じていて、かつ信頼のおける団体の発信する情報を利用するようにしましょう。
- 引用や出典が明記されているか?
- 情報の信頼性を確認するポイントに、根拠として引用や出典の情報が書かれているかどうかがあります。また、出典が書かれていれば、その元の情報源を確認し、レポートではそちらを利用するようにしましょう。
- いつ書かれた情報か?
- Webサイトの記事は、更新されていなかったり、更新日が不明瞭だったりする場合があります。いつの時点の記事なのか、確認するようにしましょう。
新聞
新聞は、世の中で起こった出来事を報道する媒体ですので、時事的な問題を調べたい時に特に有効です。
全国的に発売される全国紙(朝日新聞、読売新聞など)、各都道府県などを中心として発行される地方紙(東京新聞、神奈川新聞など)、さらに専門の分野について扱った専門紙(日本経済新聞など)があります。
ただ、新聞社によって記事の取り上げ方や論調に差がある点には注意が必要です。客観的に情報を判断するためには、いくつかの新聞を読み比べるとよいでしょう。
新聞社は、自社のWebサイトにも記事を掲載していますが、本紙のすべての記事を無料で閲覧できるわけではありません。また、多くの場合、過去の記事は見られないか、有料となります。 図書館では、多くの種類の新聞を購読・保存していますし、主要な新聞の本紙の過去記事を検索できるデータベースも契約していますので、有効活用しましょう。
雑誌
雑誌は、ある周期のもとに継続的に発行される出版物で、定期刊行物とも呼ばれます。 雑誌に掲載された各記事や論文では、図書には載らないような、特定テーマに踏み込んだ調査や、最新の研究動向なども知ることができるため、レポートの執筆には重要な資料です。
雑誌は大きく一般雑誌と学術雑誌に分けられ、以下のような違いがあります。
一般雑誌 | 学術雑誌 | |
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記事の執筆者 | 専門家・記者・ライターなど様々 | 研究者 |
対象の読者 | 一般 | 研究者 |
流通 | 書店やAmazonで入手可能 公共・大学図書館で閲覧可能のものも | 大学図書館などで閲覧可能 個人では入手できないもの、高額なものも多い |
一般雑誌は、商業目的であるために、読者を引き付ける誇張や偏向があったり、時には裏付けの不確かな記事が掲載されていたりする場合もあるため、レポートでは、なるべく学術雑誌の記事を利用することが望ましいと言えます。ですが、『週刊東洋経済』『日経サイエンス』といった、どちらかというと一般雑誌に分類される雑誌でも、レポートで参考になる専門的な記事が掲載されているケースもあります。また、学術雑誌の記事であれば100%信頼できる、というわけでもありません。学術雑誌の評価については、「情報を評価する」2-3.雑誌の評価を調べるで解説します。
TIPS
近年、海外誌を中心に学術雑誌はオンライン化が進んでおり、それらは電子ジャーナルと呼ばれ、以下のように分類できます。
購読誌 | 所属大学の図書館が購読契約することで、所属者は読むことができる |
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オープンアクセス誌 | 一般公開されていて、誰でも読むことができる |
ハイブリッド誌 | 購読機関の所属者が読める論文と、一般公開の論文が混在している |
他にも、論文の著者自身によって一定の制約の元で一般公開されているオンラインの論文も多くあります。
図書
図書は、出版されるまでに概ね1年程度を要しますので、速報性には欠けますが、あるテーマに関する情報を体系的に知りたい時にはとても有効です。
出版までに時間がかかる分、編集者による細かなチェックも経ており、内容の信頼性が高いと言える媒体です。
執筆者は、研究者や専門家、ジャーナリストやライター、タレントなど様々ですが、レポートで利用する場合は、そのテーマについて専門性の高い執筆者かどうかを見極めることが大切です。
レポート作成や学習のためには、まず教科書として指定されたものや参考図書として紹介されたものを読みましょう。教科書や参考図書は、その分野における基本的な用語や概念を解説することを目的として編集されているため、学習に必要な情報を体系的に得ることができます。
辞書・事典類
辞書は、ある事柄についての用語の意味や概念の定義が、事典は、さらに歴史的経緯、研究史や現状などについて簡潔に解説されたものです。事典類には、その分野の専門家たちの議論や検証を経て、明確になった事実が掲載されているため、発行まで時間はかかりますが、非常に信頼性の高いものと言えます。
事典のうち、広く一般的な主題・年代・地域についての言葉の意味や背景情報を調べたい時は、百科事典を用います。主なものに『世界大百科事典』『日本大百科全書(ニッポニカ)』『ブリタニカ国際大百科事典』があります。
特定の分野やテーマについての専門的な用語や事柄などを調べたい時は、専門事(辞)典・便覧・ハンドブックを用います。『経済学大辞典』『国史大辞典』『法律学小辞典』『ニューグローブ世界音楽大事典』『化学便覧』『ステッドマン医学大辞典』などがあります。
TIPS
Wikipedia(ウィキペディア)
分からない用語や事柄があった時、まずオンラインの百科事典であるWikipediaの記事で調べる人は多いと思います。Wikipediaは、通常の事典や図書に掲載されていないような、最新の用語や、細かな事柄でも掲載されているため、概要を知りたい場合にはとても便利です。
その反面、誰でも編集ができる仕組みのため、信頼性の観点から、レポートでWikipediaの記事を引用することは不適当と言われる場合があります。Wikipediaの情報を利用したい時は、出典欄に記載のある元の情報源にあたるようにしましょう。
公的資料
日本における国会や海外の議会資料、法令、裁判所記録、行政報告(白書、調査報告、年報など)、統計など、公的機関において作成される資料群があります。多くはオンライン公開されていますが、一部しか公開されていないものや、過去分は冊子のみのものもあります。
これらは信頼性の高い資料のため、レポートなどでの客観的な根拠として有用です。
統計資料
公的な統計は、国や地方自治体などによって作成され、政策や方針を決定するための根拠として利用されています。調査結果はWebサイトや冊子で公表されます。計画的・継続的に作成されるものが多いため、経年比較を見やすくなっています。 統計を探す主なツールには以下などがあります。
- e-Stat(政府統計のポータルサイト)
- 『日本統計年鑑』(総務省統計局)
- 『世界統計年鑑』(国際連合統計局)
TIPS
<もっと詳しく知りたい方は>
統計資料の探し方ガイド:統計資料を探す(慶應義塾大学リサーチナビ)
白書
白書は、各省庁が所管分野の行政活動・問題・展望等を国民に周知するためにまとめた年次報告書です。
例)『経済財政白書』『子供・若者白書』『情報通信白書』など
冊子体の他、e-GOVポータルなどでオンライン公開もされています。 多くの白書の中で主要な図表をまとめた『白書の白書』や、項目ごとの掲載箇所がわかる『白書統計索引』などを使って調べることもできます。