「Dublin Coreとメタデータに関する研修」報告

慶應義塾大学 理工学メディアセンター・木下和彦

日時:平成13(2001)年10月25日(木) 9:30〜18:00
場所:国立情報学研究所 一橋記念講堂(学術総合センター2階)

内容: 10:45〜12:15 Tutrial1:Introduction to Dublin Core Metadata / Eric Jul (OCLC, USA)
(チュートリアル1:Doblin Core メタデータの紹介)
13:30〜14:40 Keynote Speech:Metadata for Multimedia information / Nagao, Makoto (President, Kyoto University)
(基調講演:マルチメディア情報のためのメタデータ)
14:30〜16:00 Tutrial2:Introduction to Resource Description / Eric Jul (OCLC, USA)
(チュートリアル2:リソースデスクリプションの紹介)
16:30〜18:00 Tutrial3:Introduction to Application Profile : Namespaces,schemas, and application profiles / Andy Powell and Rachel Heery (UKOLN, UK)
(チュートリアル3:アプリケーションプロファイルの紹介)

今回の研修の目的は,国立情報学研究所の説明によれば,DC-2001 Dublin Core and Metadata Applications (Dublin Coreとメタデータの応用に関する国際会議)の中に設けられた,メタデータに関する学習の場(チュートリアル)を,国内の大学図書館等の担当者に受講してもらい,今後図書館などが取り組む必要のあるメタデータデータベース構築のための知識を習得するとともに,メタデータ整備における諸問題の解決策を見出す場とするとのことです。

実際,内容を見てもわかるように,Dublin Core を中心とするメタデータの概念を理解するための主要な3つの概念に関するチュートリアルが設けらています。以下,簡単に内容を記し,最後に個人的な感想を付します。なお,基調講演については,特筆すべきことがないため,ここでは割愛させていただきます。

Dublin Coreメタデータについて

リソースデスクリプションフレームワークについて

アプリケーションプロファイル(Application Profile)の紹介

メタデータ,RDFについては仕組みの紹介,アプリケーションプロファイルはメタデータの活用方法の一つの案の紹介といった感じでした。講演者の力量の差もあるのでしょうが,前の2つはわかりやすかったのですが,最後のものはいまひとつ要領を得ない感じです。

ただ,Dublin Coreをはじめとするメタデータは,作成者が自由にスキーマを設定できるため,複数のメタデータをまとめて扱うといった場合に,それぞれのメタデータで使われている用語に重複があったり,同じ用語で意味が異なるなどの理由から,混乱が生じる可能性がある。これを解決するのがRDFということになるわけですが,逆にそうして作成されたRDFを包括的に扱い,ひとつのスキーマとして活用していこうというのがアプリケーションプロファイルなのかな,という感じを受けました。

自分があまりメタデータについて,マジメに勉強していなかったので,Dublin Coreに基づいてメタデータを記述しておきさえすればインターネット上での情報共有が簡単に実現するような印象があったのですが,実際にはスキーマを独自に作成することから,interoperability の保証は意外と難しいのではないかという感じです。そのためのRDFであり,アプリケーションプロファイルなのでしょう。

ところでRDFにせよ,アプリケーションプロファイルにせよ,メタデータ中の個々のデータに明示的な意味づけを行うものです。その理由は,そのメタデータ内だけで,書かれたデータの意味がわかるようにしておくことで,その意味を読み取ることができるようにシステムを組みさえすれば,どのようなアプリケーションでもメタデータを処理できるようにするためです。

その将来像をわかりやすく説明したものが,T. BERNERS-LEE らが提唱するセマンティックウェブということになるようです。(セマンティックウェブについては,例えば日経サイエンス 2001年8月号 p.54-65 (原論文は Scientific American 2001年5月号 )。

もう一つ,図書館情報学の分野でも,昨今 Knowledge Management という言葉がもてはやされているようです。knouwledge というのは最近の流行言葉のようで,インターネットの活用によりナレッジを云々,というような表現をよく見かけますが,これがメタデータを抜きにして語れないこともわかってきました。これからの図書館員は,インターネット上の情報についても精通していないとやっていけないと世の中=メタデータにも強くなければいけないということになるわけで,今回の研修の主旨に戻ってくるわけです。とはいえ、まだまだ紙媒体の資料をベースにした業務が中心の中で,入江さんも指摘しているようにMARCとメタデータが別物であるとすれば,メタデータがライブラリアンに浸透するには,まだまだ時間がかかるように思いました。