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関西の大学訪問記

入江 伸 / 慶應義塾大学

関西で研究会を開催できることになったので、平和情報センターに勤務した頃にHappinessの営業で伺いお世話になった図書館の方々へ、ご挨拶をかねて見学と近況報告のため伺うことにした。今回、大学訪問させていただいた私立大学の方々は、その時代に知り合った方々なので、10年以上前からの知り合いということになる。

伺った時のテーマは次の2つである。

  1. 関西地区における図書館業務のアウトソーシング
  2. 国立大学図書館における独立行政法人化に向けての考え方
京都産業大学(訪問日:9/19 09:30 - )
京産大は、Tさんをお訪ねした。Tさんは、京産大の図書システムがFujitsuの汎用機を使っているときに、JEFの辞書を使って自動分かちプログラムを自分で書かれていた。

10数年くらい前の関西の大学には、自分で図書館システムを書いている職員がいらして、結構システムにうるさい方だった。Tさんはその中のお一人である。当時、東京の大学では、メーカにすべて抱えてもらって運用しているところが多かったので、そこに関西気質を感じていた。

京産大では、特に以下のことについての見学と意見交換をさせていただいた。

  1. 新しい図書館システムとシステムコンセプト
  2. 目録データの考え方
  3. TRCへの整理業務のアウトソーシングの現状

目録データについては、特に主題検索への対応としてSubject Headingへの現状と今後の方向性について話になったが、日本の現状を考えると、将来に明るい展望は見えてこないという話になった。 TRCへの整理・装備委託については、納品された整備済み図書を見せてもらったが、ブッカーがかけられ、きれいな状態だった。 費用面からみても採算に合うものだと思う。ただ、請求記号は、これまでのものを若干手直しして、TRCの整備ラインへ流さないとだめだったようだ。

アウトソーシングの範囲が学生図書なので、和書・一般書が多いが、これから、研究図書になった場合の対応が難しいと思える。また、TRCへのアウトソーシングが進んだ場合の図書整理部門は、何をやる必要があるかをまじめに考えないとならないという気になった。

立命館大学 (訪問日:9/19 15:30 - )
アウトソーシングというとまず立命館を思い浮かべてしまうように、立命館は、随分以前から、外部委託を利用して、図書館のサービス向上に努めてきた図書館である。外部委託についていろいろな意見がある中でも、確信犯的に全国に先駆け委託を進め、いろいろな意見が出されながらも、その流れは全国に普及していくという流行を作ってきた図書館である。

10年ほど前、立命館がALISというNECのシステムを使っている時に、Happinessを導入してもらい、NECのオンライン環境からHappinessを利用するために、何回となく図書館で徹夜をさせてもらった。朝試験を終わって、当時の責任者だったG課長に「うまくいきませんでした」と報告に行くのがとてもつらかった思い出がある。T次長はその時からの知り合いである。

立命館がCALISを導入していなければ、慶應もCALISが選定の中に入って来なかっただろうと思うと関係の深い図書館だと思っている。

立命館は、整理・レファレンス(データベースリテラシー)等の委託の現場を見せていただいた。つい最近まで、アウトソーシングでは先端と言われていた立命の委託ラインを今見せていただくと、図書館としてのいろいろなこだわりを感じてしまう。

この2年間のアウトソーシングモデルは、効率化から考えれば確実に立命モデルを超えてしまったと思える。それがいいことか・悪いことかはこれからの評価だろう。

その夜は、研究会に参加される丸善さんも合流して、いろいろな話題で盛り上がった。

京都大学 (訪問日:9/20 09:30 -)
今回訪問させていただいた中では、唯一の国立大学であり、知っている方のいない大学だった。(といっても以前の仕事でお世話になったHさんがいらしてとても恥ずかしかった。) 同志社大学のIさんにアポを取っていただきとても助かった。京都大学には、国立大学の独立行政法人化に向けての考えたかというとても大きなテーマをお願いしたので、はじめに、事務部長からのお話を伺うことができた。

巨大国立図書館の悩みや今後の方向性など、具体的にお話いただきとても有意義だった。巨大国立が一つになりまとまったら、私立大学なんて太刀打ちできないなと実感するものだった。

その後に、施設見学をさせていただき、システムと整理業務に分かれて業務の説明を伺った。

その後に、百万遍のところの和食屋さんを紹介していただき、みんなでお昼を食べた。 とてもおいしかったが、残念なことに、研究会の時間が迫っていたので、私は途中で抜けて同志社大学へ向かなければならなかった。(もう一回行って食べるぞ)

同志社大学 (訪問日:9/19 14:30 9/20 13:00 -) 同志社大学は、研究会の会場校だったので、あまり見学ができなかったのは残念だった。同志社は、文化財が多く、古都の古い大学という風情があり、とても落ち着いた雰囲気を持っている。システム的には、まだHITACHIの汎用コンピュータで働している。このシステムも図書館職員のオリジナルなシステムであり、これにもHappinessの導入でお世話になっている。(こう書いていると、どこでもお世話になっていて本当に申し訳ありません。)ここでも、随分前に、Happinessの性能が出ないで、よく田辺校舎へ伺った。

同志社のOPACの特徴は、標準のHappinessがデータ作成側でもOPAC検索側でも動いているのが特徴だった。同じソフトフィルターをかければ、誤ってキーワードを作成してもヒットするだろうというものだった。ここでの問題は、OPAC検索をかけると、必ず Happinessが動いてしまうということで、OPACがTSS環境で動いているもので、メモリを圧迫してしまって性能が出ないということが起きた。その解消に、VTAM配架に VTAMタスクとしたHappinessを貼り付けてTSSのユーザ環境との間で通信をする、VATMブリッジっていう製品があり、それを動かした。これは、IBMのDOBISで実績があったもので、富士通では、慶應でも稼働していた。ただ、HITACHIのVATMが、IBMとの非互換があり、うまく同期が取れない部分が発覚して、アプリケーション側で対応をしていた。同志社も、システムリプレースを準備しているとお聞きして、いっそう思い出された。

関西大学 (訪問日:9/21 10:00 - )
関西大学は、3年前からの整理装備アウトソーシングの先陣を切った図書館だ。関西のアウトソーシングの現状調査の名目で毎年伺わせていただいている。Yさんから、はじめのコンセプトを聞いた時には、一体図書館の専任は何をやればいいんだろうと悩んだが、現状のラインを説明を伺って、現実的なところに落ち着いているという印象をもった。現実的なラインに落ち着いた原因には、アウトソーシング会社が、関西大学の要望に応えられないということと、図書館員の責任範囲を明確にしたことによる、業務の内部留保があるように思えた。ただ、これは一歩でこれからの発展系が用意されているようであった。

総論 どこの図書館にいっても、図書館職員は減少傾向にあり、5年前に比べれば、3割から4割減となっている。その反面、コンピュータの利用環境整備、データベース・EJの普及に対応する業務は増え続けている。図書館職員の削減傾向と業務範囲の増加・アウトソーシングへの傾斜は、その経費のバランスを含め、今一度評価が必要がと感じた。