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報告−三田図書館・情報学会月例会

早稲田大学 金子昌嗣

参考:月例会報告資料

第4回研究会のあった翌日(9/21)、標記の会で報告を行いました(慶應義塾大学三田キャンパス)。与えられたテーマは「大学図書館における研究開発」でしたが、事務局を担当されている三田メディアセンターの加藤好郎さんからのご依頼で、ライブラリシステム研究会のことを紹介しました。

報告の基本的部分は、その前日に同志社で述べた「これまでの経過と提案」と重なっています。会の運営体制といった細かい話は省き、研究会が発足するに至った背景とその目的、および現在までの活動を説明しました。たとえばグローバル時代における標準化の必要性、日本の対応が後追いになりがちであること、その打開の方途を図書館やメーカの協力関係のもとに模索し、全体としてサービスの向上をめざしていることなどを述べました。また、前日が当のテーマである研究会の4回目にあたったため、持ち帰った配布資料を回覧して「最新情報」の披露も行いました。

報告後の質疑の時間には、「z39.50はもう古いのではないか」というコメントがありました。これはもっともなご指摘かも知れませんが、私としては、このプロトコルについての動きが国内で出てきたことをきっかけとして、当面するさまざまな課題を検討する場が必要になっているのではないかという考えを述べました。研究会の活動の趣旨については参加者から特に異論は出ず、基本的にはご理解いただいたように思います(参加者は図書館情報学の研究者や学生など10数名という小規模の会でしたが)。

「公共図書館も視野に入れてほしい」というご指摘がありました。たしかに従来は大学図書館を中心としたテーマを取り上げていたので、大事な観点であると思いました。おりしも、今回の関西での研究会開催に先立って、入江さんが岡山県の方と情報交換されました(第5回研究会にて講演いただくことになりました)。館種の違いによってニーズや問題意識が異なる部分も当然あるでしょうが、相互に学ぶことができればと思います。

公共図書館に関連して、「市町村合併で、図書館システムを統合するさいに、同じメーカのシステムなのにデータの細かな点などが違ってうまく統合できない」といった話を聞きました(月例会の後での個人的会話)。「カスタマイズよりも標準化」ということを報告で述べたのですが、まさにそれが教訓となるべき事例かと思いました。

また、「新たな標準を作っていくために、関係団体との連携をしてほしい」というご意見が出ました。標準的な仕様とルールの構築が必要であることが、研究会発足の根本にある認識ですが、もちろんこのことは研究会の内部で完結できる課題ではありません。本来的には規格やMARCフォーマット、目録規則の問題その他が関連してくることになります。たとえば慶應の酒井さんが日本の書誌データの問題点について報告されましたが、そうした提言をどこで受け止めて議論を起こしていくべきか、考える必要があります。

本来は、図書館情報学もそのような動きの中で求心力を持つべきではないかと思いますが、現状がどうであるのか、私には判断材料が足りません。ただ印象として、アカデミックな世界と現場とがあい渉る局面(または相互のインパクト)が乏しくなっているように思われます。現場の動きがあまりに急であることが一因となっているかも知れません。

「大学図書館における研究開発」というテーマをいただいた時、現場が余力を失っていてなかなかそこまで手が回っていない(少なくとも私の身近では)と率直に思いました。ライブラリシステム研究会は、組織を超えた連携によって困難を打開しようとしている、と一応いうことができるでしょう。図書館情報学について勝手な感想を述べましたが、現実を動かす原動力の一つとしての役割を、やはりこの学問に期待したいと思っています。

三田図書館・情報学会の月例会には久しぶりに参加しましたが、会場では懐かしい方々ともお会いでき、個人的には楽しい経験となりました。