日本へ書誌ユーティリティーが導入されて20年余り経過した今日、その当時欧米の 書誌共同作業、資源の共有という、実に図書館本来のミッションにふさわしい活動 が、日本の図書館でもあたりまえとなってきたかといえば、未だにその温度差が残存 しているといえます。 今更のことではありますが、そもそもMARCとは全世界の国々の書誌情報を国際間で交 換しようという国際書誌調整(UBC)の理念に基き生まれたものです。書誌情報の全世 界的な交換を可能にするために国際標準がMARCフォーマットですが、その情報の器以 上に必要なことは、図書館員が、協同で作業を行い、情報を共有し、資源をも共有す ることによって、自国のみならず世界中の利用者へのサービスを向上させることであ ると思われます。 現在、日本の図書館にShared Catalogingの理念が定着し、その目的をはたしている かというと必ずしもそうではなく、むしろ輸入、流用ばかりが目立ち、お返しに日本 からの情報発信に貢献するという役割は未だ不充分といわざるを得ません。欧米にお いても、もちろんこの20年余りの間に、Copy Catalogingへの傾きがあることは確 かですが、それでも、その根底にはやはり、 ライブラリアンシップといいますか、図書館という機関が担うべき本来の役割を着実 に果たしている、と思わせるだけの動きを目の当たりにすることができます。 MetaData, Resource digitalizationへの取り組みは、やはりDublin Core等の Gloval Standardの重要性を明確にした上で、実行に移されていることで一目瞭然で す。 官の主導で、システムを与えられてしまうと、そこに図書館およびライブラリアン本 来の情報の収集、保存、共同利用、次世代への継承というミッションは、何故か、書 誌調達の手段という 侠歪な目的に様変わりしてしまい、そもそもの目的を充分に果たせないものとなって しまっていることは日本の図書館全体として残念なことです。 Shared Cataloging, Resource Sharingの本来の意味は何かを、今一度考えるべきで はないかと思います。これは一次資料のデジタル化の進行、電子媒体の情報の増加、 メタデータの構築という命題への取り組みを求められている現在、尚さら必要です。 セミナーで提案された中身について、ひとつ私見を言わせていただきますと、 NACO,SACO等の典拠コントロールのプロジェクトは、もちろんしかるべき国を代表す る機関が主導し、牽引することが理想ですが、日本の場合、それを期待していてはな かなか机上論から、ぬけだせないのではないかと危惧します。 以前日本でサービスを提供していたカナダの書誌ユーティリティー、UTLASのフラン ス語のLC件名典拠ファイル,RVMは、ユーザー館のひとつであるLaval大学の図書館の プロジェクトとして作成され、維持されてきたものです。そして、UTLASの中で共同 利用されてきました。そのファイルはRLGにも搭載されておりました。 この例のように、むしろコンソーシアムのような形として、慶応大学、早稲田大学等 の有志で発足させ、NIIやNDL等の国の機関に後援してもらう形の方が、現実的ではな いかと思います。 また、件名、注記という目録言語を記録する書誌項目は、規則本来のルールから言え ば、その資料が発行された国の言語で付与されるものです。その意味から言えば、日 本の図書館は日本の利用者へのサービスとしては、洋書であっても本当は、日本語の NDLSHなり、BSHが付与されていて良いわけです。もちろん、MeSHなり、LCSHの日本語 版であってもいいわけでしょうが。 現実的には、日本語の件名の並列標目として、LCSHなりが付与されると理想だと思い ます。 折しも、NIIではLCSHの日本語訳、メタデータのLCSH付与への動きを具体化してして います。 最初はむしろ、LC以外の図書館が付与した英語件名として、BSHの日本語訳からス タートしてみることも一案かと思います。 ともかくも議論より一歩を踏み出すことに意義があると私は思います。 そこから、協力してくれる図書館、情報機関がひとつでも多くプロジェクトへ参加し てくれるようになることが理想の姿です。