第3部 図書館の動向
1. 関西学院大学 アウトソーシングの現状
[浜田]こんにちは。関西学院大学の浜田と申します。今日はこの場で私どもの大学の事例が紹介できることになりまして、ありがとうございます。本来でしたら毎回この研究会に出席しております安本が紹介する予定ですが、本人の都合で私が代わりに事例を紹介させていただきます。今日は、入江さんのメールマガジンにも書いてありましたように、関西の大学のアウトソーシングのお話をということでしたので、お手元の資料もアウトソーシングを中心にまとめさせていただいておりますが、その前に、関西学院の方で今日の話にも関係がありますZ39.50がどういった状況なのか、安本からメモを預かっておりますので代読させていただきます。関西学院では現在、富士通さんの方で開発されましたiLiswaveに、今年の4月から全面的に切り替えまして業務をしております。その中に標準化としてZ39.50のサーバーが導入されるということで現在それを構築中ですが、実際どのように運用するのか、どのように公開していくのかは全く未定ということです。それからiLisSurfというシステムは今回のリプレイスでは導入しておりませんので、クライアント機能は当面関西学院ではないということです。仮にZ39.50を導入しても関西学院の方から他のZ39.50を検索することは今のところ予定がないということです。それと3点目はZ39.50をどういった形で使っていけるかということですが、今日のアウトソーシングのお話しにも関係してくるかと思うのですが、「PLATON」という紀伊國屋書店が開発しているシステムを発注管理で使っています。まだ全く検討はしていないのですが、Z39.50でOPACを公開すれば「PLATON」に蓄積されている発注管理のデータとOPACの蔵書のデータとの横断検索ができるといった方法も可能と聞いていますので、今後そういった方法を検討していく可能性はあるということは言えるかと思います。今日のお話しに関連しまして、関西学院大学の図書システムの現状を簡単に触れさせていただきました。
それではお手元の資料にもとづきまして、アウトソーシングの事例につきまして簡単にご紹介をさせていただきます。必ずしもライブラリーシステムに関連する話ばかりではありませんが、このような考え方でやっているということをお聞きいただければと思います。
まず図書資料の流れとしましては、図書あるいはパッケージ系のメディアであれば、選書・選択の後に発注をして、それが実際に図書館に入ってきて受入・整理・データ作成・装備といった業務を経て利用に提供されます。私どもの図書館では特に発注管理・受入・整理の部分につきましてアウトソーシングを取り入れています。これら以外に例えば雑誌の製本業務ですとかチェックインデータの作成、カウンター業務なども一部はアウトソーシングはしていますけれども、今回は発注管理から受入についてのアウトソーシングのお話しをさせていただきます。具体的には国内書につきましては、大部分を発注から整理を一連の業務として外部委託しております。それから視聴覚資料については整理業務のみを外部委託して、発注については図書館の方でやっております。これら以外に特別事業予算としまして、学部等の設置用に図書資料をまとまって購入することがありますけれども、それらにつきましてはその都度、発注から整理までを一連の業務としてそれぞれ専門の書店等にお願いするということがあります。日常の業務の中では国内書の発注から整理までが外部委託だと思っていただければいいと思います。外部委託の内容ですが、お手元の資料の3枚目に時系列でまとめたものがございますので、それを一緒に見ていただきながらお話しさせていただきたいと思います。今申し上げましたように関西学院では発注から整理、データ作成・装備までを一連の業務として委託したいという考え方で以前から取り組んでいました。まず14年前の1988年に図書の発注整理業務の一部の委託を始めています。この時は大学生協の書籍部に委託をしました。データ作成は生協書籍部からTRC、すなわち図書館流通センターに委託するという形でした。この時の目的は、整理業務の省力化と処理の迅速化です。14年前の1988年度という時期は時代も良かったんでしょうか、図書館の図書資料費が毎年増額されていました。当然、購入量も受入の数量も増えていた時代なんですが、図書館の職員は以前の少ないままなので、それでは処理が追いつかないということで外部委託を始めたというのが、この時期です。この時は、新刊の国内書を対象といたしました。その理由は図書館流通センターのTRC-MARCを使うことで、ご存知のように出版された時点で既にMARCができあがっていますから、そこに委託することで発注から配架までがかなり早くなるだろうということを期待しました。結果として、実際そういう効果が得られていました。それと図書の発注からをすべて生協書籍部に任せますから、いわゆる発注データの入力も書店の方に委託することができるという効果もありました。もう一つこれが大事なところと思うのですが、あとの目的にも関係しますけれども、発注先を一つの書店にまとめやすい国内書新刊は、色々な書店から当時購入していたのですが、生協書籍部に発注がまとめやすかったという理由が大きいと思います。一つの書店にまとめないと、どうしても発注段階の重複調査のために別のしかけを考えるのは難しくなるということがあったので、生協書籍部にまとめて発注ができる国内新刊書を外部委託したということになります。この理由の裏返しで国内書の新刊以外は発注先を統合することが難しい、それからTRCの方でMARCが揃っているとは限らないという理由で館内処理を続けました。その後、同じような考え方で視聴覚資料についての委託も始めたのですが、1997年度から状況が大きく変わりました。
関西学院大学では新しい図書館が西宮上ケ原キャンパスに秋にオープンしまして半年後の1998年度から図書館の予算で買われた図書資料は図書館に集中配架しましょうという計画が決まりました。それまでは学部に配分された予算で学部が発注した図書を図書館は整理をするだけだったんですけれども、発注も図書館に集中しようということになりました。そうなりましたら重複調査をきちんとして効率的な予算執行をしましょうということになるのですが、じゃあその仕組みを実際にどうしようかということが問題となりました。発注時点での重複調査をきちんとするためにはOPACの蔵書検索での重複調査だけでは当然不十分ですから、発注データを一元化しておかなくてはならないということになります。でも当時の図書システムでは、そういったきめ細かなことは難しかったので、書店が運用する発注管理システムというものを導入したらどうだろうということで、1995年の秋頃から検討を始めまして、1997年度から国内書については生協書籍部が運用するシステムを導入して、外国書については紀伊國屋書店が運用する「PLATON」を使うことになりました。この結果、国内書については大部分の発注は生協書籍部にまとまっていましたから、発注データの入力から重複調査から委託整理まですべて任せることができたということになります。それから紀伊國屋書店の「PLATON」の場合は紀伊國屋書店への発注は外国書の中では一部ですけれども、それについては発注データは紀伊國屋書店に入力してもらう、他書店の発注については重複調査のために発注データを一元化しないといけませんから図書館の方で入力しましょうという形で始めました。
この方法でしばらく業務が続いていたのですが、2002年度、つまり今年から、生協書籍部と図書館流通センターの契約が終わりましたので、国内書についても紀伊國屋書店の「PLATON」で一元管理をするということになったというのが今の現状です。視聴覚資料につきましては、生協書籍部に委託して図書館流通センターのデータを使っていたんですけれども、同じ理由で「PLATON」の方に図書館でデータを入力して委託整理だけを図書館流通センターに頼むという、ちょっと変則的な形になっています。外部委託の目的なんですが、経緯の中でお話ししましたように、一番大きな目的は業務の省力化、特に発注から整理業務までの省力化、それからMARCがすでにできている図書に限られますけれども処理の迅速化、集中配架に伴う重複購入を避けるための処理量増大への対応の三つが大きくあげられるかと思います。この三つを私どもでは目的と考えていまして、よく言われてますコスト削減については今までのところはアウトソーシングの目的とかアウトソーシングの効果としては考えていません。実際に費用を計算しましても、国内書については館内整理と大きな差がないので外部委託をしていますが、外国書の場合はMARCのデータが高いこともあると思うのですけれども館内整理の方が安いという結果がありますので館内で整理をしています。なぜ館内整理のコストが安いかと言いますと、私たちの図書館ではかなり以前からアルバイト職員の活用ということをやってます。専任職員がやる仕事とアルバイト職員がやる仕事をきちんと切り分けて、専任職員の指示でアルバイト職員が仕事をするということをかなり以前からやってますので、その効果があって委託整理と館内整理とに大きな差があったり、館内整理の方が安いということが言えるのだと思います。これは大学によって事情が違っているかもしれません。
次に資料の2枚目を見ていただいて、「アウトソーシングの展望」として、今後の課題をいくつか簡単に紹介させていただきたいと思います。関西学院で実際に実感している課題として、一つは発注管理から整理業務のところですが、書店の方が来られているので言いにくいのですが、購入先に依存しない外部委託、つまり発注から整理までを一連の業務として委託しようとすれば必ず他書店に発注するものも流れに乗せないと効果があがらないということがあります。私たちの事例では、国内書については以前は生協書籍部に今は紀伊國屋書店に発注するのですが、古書だとか直取り、学会発行のものなどは書店の方が扱いにくいとか扱わないとかおっしゃるものがあるとこの流れに乗らない、結局館内整理が残る。外国書の場合には今は委託整理はしていませんけれども、仮に委託整理をしようとした時でも紀伊國屋書店さんの方に発注をまとめるということが非常に難しい、国内書以上に流通経路がいっぱいありますから、発注先を一つにまとめることはできない、だけれども整理は一つにまとめたいということがあります。ですから他書店に発注するものも外部委託にしてくださいね、ということがきちんとできるのかなというのが一番目の課題になります。特に国内書は、外国書もそうかもしれませんけれども、物流のある関東で図書の現物を集めて、整理をした後に各地の図書館に搬送するという方法が一番効果的です。一度地方の、関西も地方ですけれども、地方の図書館で受入をしてまた東京に送り返して委託整理をするというのは非常に不効率ですね。
2番目には、外部委託先に判断と責任を任せる範囲をきちんとしましょうということがあります。すべての業務をアウトソーシングできればこういう問題はないのでしょうが、実際には図書館とアウトソーシング先と連携をとって仕事を進めないといけない。それと委託できる企業が限られていて、委託できる企業での人材確保だとか人材養成というのが非常に大きな問題になってきているというように考えています。学内でノウハウの蓄積ができなくなりますという問題はアウトソーシング全般に言われていますので、ここでは敢えて触れませんけれども、委託先の方でそういったノウハウが、知識が蓄積されていかないとアウトソーシングが維持できないだろうというのが問題としてあります。今私たちのところでは図書館で作った仕様書を基本にアウトソーシングをしているのですが、どうしても図書館と連絡をとって図書館の方で判断をして指示をする必要があります。例としてあげますと分類番号とか請求番号について、分類番号がこれでいいのか、請求番号がこれでいいのかという問題について、かなりしょっちゅう電子メールやFAXでやりとりをしています。それと、もう一つは発注管理や予算のところに関係しますけど、予算が残り少ない時にこの図書を優先して発注して受け入れましょうという判断、これをアウトソーシング先に任せられるかということがあります。A学部とB学部で発注が出たもののどちらを先に買うのか、A先生とB先生の発注のどちらを先に買うのか、これには非常に微妙な問題があって、これを機械的にマニュアルで処理できるのかという問題です。アウトソーシングを本当にするのであれば、こういったことも責任を持って任せられる方法を考えておかなければいけないなと思います。
3番目は、業務の標準化とカスタマイズです。一般によく言われるのはアウトソーシングする場合には業務を標準化しておけば効果が上がりますということですけれども、実際にはなかなか標準化がしにくい。発注業務につきましては今申しましたように予算管理ですとか重複調査の問題ですね。マニュアルだけで処理ができればありがたいのですけれども、なかなか微妙な問題がありますので具体的には控えさせていただきます。整理業務についても先ほど申しました分類体系、請求番号の付与、装備の仕様などの問題で、きちんと標準化できるものとできないものがあると思います。現在は分類番号の変換と請求番号の採番については、館内整理とアウトソーシングを並行して行っているということもあるのですが、私たち図書館の中と委託先の紀伊國屋書店がインターネット経由で分類番号の変換と請求番号の付与などを同時に行えるシステムを作って、運用しています。それから継続管理も地味なんですけど大きな問題があるだろうと考えています。発注管理の話になりますが、継続発注をして書店が継続管理をしてきちんと納入してくれていれば問題はないのですが、書店とか出版社では継続の受注ができないからその都度発注してくださいといった図書の場合、それでも分類番号とか請求番号とかは図書館の方では揃えないといけない、それをどこがどうやって管理をしましょうか、というのが課題です。今のところ図書館の専任職員が個別に調整をしていて、アウトソーシング先にお願いしていますけれどもなかなか難しくて個別の調整が多くなっている、こういった問題が残ってます。
4番目はシステム運用と書店の連携ということで、図書システムと発注管理システムの連携です。私たちの場合は「PLATON」と「iLiswave」の2つを並行して運用することは本当は不便なんですけれども、実際には書店が運用しているシステムを使った方が利点がある場合がある。一つは発注の部分については目録規則に基づいて作られるMARCと流通で使われているデータが違う場合が非常に多い、MARCで言う出版社と流通で言う発売元が違ったりしますし、書名の取り方が違ったりする。その場合、発注するときはMARCじゃなくて流通のデータを使った方が望ましいし、出版される前の図書を発注する場合にはMARCがありませんから流通のデータを使わないと発注ができないということがあります。整理業務についても図書館と委託先が同じシステムを使っている方が都合がいいことが多い。そういったことで考え方によっては、発注管理システムというのがシステムの運用のアウトソーシングという言い方もできるのかなと思っています。 以上関西学院のアウトソーシングにつきましてざっとお話いたしました。ありがとうございました。