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MediaNet≫No.10 2003≫情報のリンク付け
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ナンバー10、2003年 目次へリンク 2003年10月31日発行
特集 電子化情報への取り組み
情報のリンク付け
千村 文彦(ちむら ふみひこ)
メディアセンター本部
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全文PDFへリンク 36K
1. はじめに
 本稿は,ある情報から関連情報へ導くリンク付けの技術について解説する。利用者を一つの情報から幅広い関連情報へ導くことは,図書館の重要な役割の一つである。メディアセンター(以下,MC)において,有用なリンク付けを実現するために本部データベース(以下,DB)担当で行っている活動について述べ,課題とともに今後を展望する。

2. 情報と情報をつなぐ結線―リンク―
 リンクは,ある情報から出発して関連情報へと導く。 仕組みは,縁日のくじ引きを思い起こせば良い。ひもをひっぱるとおもちゃが先につながっている。新しい概念では全くない。索引はリンクであり,参考文献リストはリンクであり,問い合わせ先の住所や電話番号はリンクである。言語の機能のひとつが「指し示す」ことなので,言葉として表されるものはすべてリンクであるといっても良いかもしれない。より正確に言うとあらゆるものがリンクとなり得る。
 リンクの概念をことさら取り上げたのが情報技術と特にWWW(World Wide Web)のホームページの仕組みである。ホームページではリンクが明快に下線つきで示される。リンクをマウスでクリックすれば関連情報が瞬時に元情報と同じ画面に表示される。情報を簡潔に結びつける情報技術によって,リンクの概念の重要性が再認識された。
 ここでは,情報技術の世界でのリンクの話に限定する。リンクは,次の要素によって成立する。
1)リンクの起点
 通常はリンク先の情報を表す単語あるいはまとめの一文。もしくは,リンク先の情報を暗示しヒントとなるような絵(ボタンと呼ばれる)。元情報の一部に「埋め込まれて」いる。
2)リンクの終点
 元情報に対する関連情報。 情報技術の進歩によって,文字情報だけではなく,音声や画像,映像などあらゆるメディアの情報をリンクできる。
3)関連情報の所在(アドレス)
 リンクの利便性は,関連情報を探索することなく瞬時に表示できるところにある。そのためには,関連情報の所在が前もって分かっていなければならない。
4)アドレスを解釈する仕組み
 起点から出発して簡潔に関連情報にたどり着くための仕掛け。アドレスで問い合わせると,関連情報を返答する。電話交換台と同じ仕組みである。
 WWWが成功したもっとも大きな理由は,情報のアドレスを簡潔に定義し標準化できたことにある。標準にしたがったアドレスを付与された情報は,世界中どこにあっても瞬時に入手できる。逆に,発信したい情報に標準にしたがったアドレスを与えれば,世界中に向けて公開される。このことは,世界中の図書館が同じ請求記号の体系を使っていることと同じなので,いかに大変なことか,ご理解いただけると思う。

3. 学術情報のリンク技術
 先行研究に言及しない論文はあり得ないし,判例なしに法律は成り立たない。症例を知らなければ治療ができない。およそ学問と呼ばれるためには,関連研究の調査や自分の研究の位置付けはなくてはならない。加えて,ネットワークが世界中の情報をリアルタイムに結びつけている現在,情報へのアクセスに規模とスピードが求められている。すなわち,学術研究ではリンク付けが成果を決定的に左右する。
 現在,もっとも一般的に見られるのは,書誌索引DBから全文DBへのリンクである。たとえば,ProQuestはキーワード等によって参考資料を探した後で,フルテキストを表示する機能を持つ。書庫へ行く手間もなく,「ワンクリック(one-click)」で全文が入手できるスピード感がリンクの最大の特徴である。
 ProQuestの場合,多くの出版者と契約して,全文DBを自社内に構築している。このようなサービス形態をアグリゲータ(aggregator)という(図1)。アグリゲータでは一般に,契約のない出版者の持つ全文情報に対してリンクがない。また,著作権などの問題から,出版者が全文の提供を一部に制限することもある。利用者にとっては,完全な形で網羅された全文が望ましく,その情報は出版者だけが持っている。実際,MCでは個々の出版者の全文DBと契約することが多い。いわゆる電子ジャーナル(以下,EJ)や電子ブックの形態である。
 それぞれ独立した製品である書誌索引DBと全文DBの間でリンク付けを行うサービスが盛んである(図2)。たとえば,ISI社のWeb of Scienceでは,書誌索引を検索の後,フルテキストへのリンクが表示されることがあるが,これはISI社以外の出版者が提供するEJへの「外部」リンクとなっている。各種DBには,それぞれの強みや専門性がある。それらを生かしつつ,外部リンクによって更に参考情報の範囲が広がる。しかし一方で,DB間で一対一のリンク付け作業が必要になるので,非常に手間がかかる。

4. リンクリゾルバ
 リンクの命は情報に付与するアドレスである。リンク付けを行う時には,相手先のアドレスが事前にすべて分かっていなければならない。アドレスの付け方は,標準に従うかぎり情報提供者に自由に任されるので千差万別であり,リンクの維持管理は非常に手間がかかる。そこで,リンク付けだけを専門に行うDBが登場している。リンクリゾルバ(“link resolver”,リンク解決器)と呼ばれている。
 リンクリゾルバは,資料の所在を示すアドレスが最新の状態に保たれたDBを内蔵している(図3)。そして,書誌索引DBなどから資料に関する書誌情報を与えられると,アドレスDBを使ってこれを解釈し,資料に対するアドレスを導出する。すなわちリンクを生成する。書誌情報はOpenURLという標準化された形式で受け取る決まりになっているので,書誌索引DBが違っても特殊な設定を必要としない。また,生成する資料アドレスも標準に対応しているので(DOI, Digital Object Identifier),全文DB提供者が同じ標準に従っていれば直ちにリンク付け可能となる。各種標準を採用することで,リンクリゾルバは広範囲の情報源を結びつける。
 MCは様々なDBと契約している。それらがリンク関係で最大限に結びつけられれば,相乗効果がある。リンクリゾルバは,MCが実際に契約しているDBの中でのみリンク付けを行うように設定できる。すなわち,リンクリゾルバの生成するリンク先は,契約によって実際に利用可能な情報のみとなる。
 リンクリゾルバは,ひとつの資料に対して関連する複数のリンク先を列挙して,利用者に選択させる機能を持つ。たとえば,フルテキストが電子体として入手できないと分かったならば,OPACを調べたい。さらに必要ならばILLを実行したい。フルテキストではなく,著者の略歴をしらべたい場合もある。このようにして,利用者の様々な要求に答えることができる。

5. メディアセンターの役割
 電子媒体の資料に対してはこれまで,「所蔵」対象という意識が低かった。単純に実体がない,というのが第一の理由だろう。出版者が全文DBを手もとに置いて維持管理している場合が多いので,利用者は維持する手間もかからず,持ち物としての意識はさらに減る。契約上も,買っているのは年間使用権であり,実物が残らないので「所蔵」という言葉は当てはまらないのかもしれない。
 リンクの概念とリンクリゾルバの登場は電子媒体資料における所蔵情報維持の重要性を再認識させる。所蔵情報なしには,的確なリンク付けを行うことができない。せっかく導入した全文DBでも,リンク付けができていないと,利用者がアクセスしない,宝の持ち腐れの状態になってしまう。所蔵情報は当然,資料の導入戦略においても最重要の役割を果たす。
 電子媒体の資料は,所蔵の概念が明確ではない故に,平気で所在のアドレスを変えられたり,突然アーカイブが増えたり減ったりする。OPACのように,実体のあるものを基本に考えられているシステムには馴染まない点がある。印刷体は一度受け入れたものが基本的には無くならないので,OPACで情報の修正頻度が少なく,その機能が弱い。MCの組織も,印刷体向きになっていて,大勢は「受入→整理→配架」という一方通行の形に作られている。電子媒体の資料は,移ろいやすいので,常に情報を更新する必要があり,フィードバックのある組織を必要とする。
 MC本部のDB担当では,MCで導入している電子媒体資料に対して,以下の二つのDBを作成している。EJリストについては,雑誌単位のフルテキストリンクと対応印刷体の所蔵を調べるリンクが付けられている。

・「電子ジャーナルリスト」
 (http://ejopac.lib.keio.ac.jp:8888/
・「三田・日吉・湘南藤沢キャンパスデータベースリスト」
 (http://www.lib.keio.ac.jp/

 これらのDBは,OPACを補完するものとして作成し始められた事業であるが,維持管理の難しさから,今後は所蔵DBとしての機能の強化を求められていると思う。電子媒体資料における所蔵概念の明確化と所蔵情報の維持管理によって初めて,リンクリゾルバが最大限の機能を発揮する。移り変わりの激しい電子媒体資料の情報を速やかに収集するには,人手による調査に頼らざるを得ない面がある。DBの機能強化に先んじて,効率的な情報収集の体制を構築していきたい。

6. まとめ
 情報を関連情報へ結びつけるリンク付けの技術について説明した。MC本部DB担当での活動を述べた。
 リンク付けの技術は,アーカイブを最大限に活用するという,図書館にとっての根源的な課題を浮き彫りにしているとも考えられる。電子媒体に限らず,印刷体においても情報源の間に重要な関係が存在する。前誌・後誌や参考文献は単純な例である。情報技術を使って,印刷体の間にもリンクを構築することが今後考えられるであろう。

参考URL
SFX/ExLibris
http://www.sfxit.com/
LinkSource/EBSCO Publishing
http://www.linkresolver.com/
LinkFinderPlus/Endeavor Information Systems, Inc.
http://www.endinfosys.com/prods/linkfinderplus.htm
1cate/Openly Informatics, Inc.
http://www.openly.com/1cate/
OpenURL
http://library.caltech.edu/openurl/
DOI(Digital Object Identifier)
http://www.doi.org

図表
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図1 アグリゲータ型DBの場合
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図2 書誌索引DBのリンクサービス
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図3 リンクリゾルバを中継する場合
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