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ナンバー10、2003年 目次へリンク 2003年10月31日発行
特集 電子化情報への取り組み
自然科学系電子リソース契約の現状と運用上の課題
舘 田鶴子(たち たづこ)
医学メディアセンター課長代理
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1. 電子リソースと図書館
 ネットワーク上の電子リソースをWWW(Web)とリンクの技術によってオンラインで利用することは,館種を問わず新しいサービスとして定着している。学術情報が電子ジャーナル(以下,EJ),電子ブックを始めとする電子リソースの形で提供されることによる利点は大きいが,図書館ではそのハンドリングに試行錯誤の感がある。技術革新や出版者のマーケティングにより,商品構成も契約方法も変化が大きい。利用サービスからみても,たとえばデータベース(以下,DB)の機能やインターフェイスの変化に応じて迅速に対応するためには,我々は相当な努力を求められている。
 メディアセンター(以下,MC)においても,EJの導入は2000年以降,加速度的に増えている。医学MCの場合,海外の購読雑誌(冊子)のうち80%近くはオンラインでも入手可能である。また,パッケージ化されたオンライン商品の導入や,オープンアーカイブの存在により,冊子購読はないがオンラインのみでフルテキストが入手可能な雑誌は数をカウントできないほど多い。今,何が使えるのか,図書館員自身が実体を掴みきれていないほどである。ライフサイエンス分野のオンライン出版サイトとして有名なHighWire Pressでは,約150万件の論文をアーカイブとして所蔵し,その40%に当たる約60万件強の論文がフリーアクセス(誰でも自由にフルテキストが読める)環境にある。

2. EJのコンソーシアム契約
 雑誌論文の利用が多い自然科学系図書館においては,EJの利用は最新の情報入手に欠かせない。医学MCの資料購入経費の20%強を電子リソースに割いているが,今後,購入(購読)するコンテンツを増やすためには様々な努力が必要である。その一つとして,共同購入による価格の値引き交渉がある。
 医学図書館界では,レファレンスブック(Index Medicus)の共同購入を行ってきた歴史を持ち,その延長線上にEJのコンソーシアム契約(純粋なコンソーシアムではなく,共同購入に近いもの)がある。2000年契約(1999年秋)のProQuestがその第一号であったが,順次契約対象を増やす一方,2002年契約以降は,関連の深い薬学図書館とも共同でコンソーシアム価格の交渉を行ってきた。2003年契約(2002年秋)の契約対象出版者と参加館数は次のとおりである。

(出典:第74回日本医学図書館協会総会(2003)総会資料)(括弧内は内数で薬学系の参加館)
ACS(米国化学会) 32 (20)
Annual Review 12 6 (2)
Annual Review 5 5 (2)
Blackwell Synergy STM collections 33 (6)
BMJ 5 (1)
CJO(Cambridge) 1  
Dekker 5 (3,企業1)
EBSCO 6 (2)
Elsevier ScienceDirect 21  
Karger 3  
J@Ovid LWW collection 15 (3)
Nature 26 (5,企業11)
ProQuest 41  
Rockefeller Univ Press 4 (企業1)
Science Online 20 (企業6)
SpringerLINK 19 (4)
Thieme 3 (2)
Wiley InterScience 8 (3)

 このうち,Wiley InterScienceは,参加図書館間で相互利用が可能な契約であり,本来のコンソーシアムに近い。ただし,支払いは大学単位となっている。

3. コンソーシアム契約の実際
 医学・薬学図書館で行っているコンソーシアム契約は,版元がライフサイエンス系の図書館向けに用意したパッケージ商品や特別な購読条件を指している。2のコンソーシアム契約対象のうち,慶應義塾大学で契約中のものには下線を引いた。下線がないEJの多くは別の方法で利用している。
 条件はケースバイケースなのでここでひとつずつ説明することはできないが,多くの場合,購読料は前年までの冊子購読規模に応じて按分するため,小規模図書館ほど有利なことが多い。FTE(教員・学生ほか)数に応じて価格を段階的に設定するものもあるが,その場合も小規模館のほうが単価を安く購入することができる。EJの適正な価格モデルは模索中であり,現時点でいかに有利に契約するかは,個々の交渉次第である。将来的には利用統計上の数字もかなり意味をもつようになると思われる。出版者では,利用統計の標準化を進めている。
 慶應義塾大学の場合は,総合大学であるため,医学・薬学図書館向け提案であっても,医学部だけの契約に止めず,希望地区を取り込んで契約するようにしている。ACSのように理工学部が中心となって契約しているものもある。
 利用する側からみればキャンパスごとにオンラインで利用可能な雑誌が異なるのはあまり好ましいことではない。よって,契約地区がまたがる場合は,キャンパス間で相互利用ができるように契約の条件を設定することが多い。しかし,電子リソース全般に言えることであるが,地区ごとに最善のコレクションを考えて導入を決定しているため,必ずしも全地区で購入できるわけではない。その調整は全塾DB委員会の委員を中心に行っている。
 コンソーシアムでは,より多くの図書館を集める必要があり,参加予定の図書館の購入決定時期が遅いと契約成立が遅れるという危うさがある。ボランティアで行っているとりまとめ事務局は大変な手間をかけており,今後,こういった事務処理をいかに効率よく行うかも課題のひとつである。また,アカデミック価格の提示が中心であるため,企業の図書室を抱えている薬学系図書館では,別の交渉が必要となっている。

4. 契約から利用までのワークフロー
 コンソーシアム及び個々の雑誌契約を最適な条件で購読契約し管理記録を維持すること,リニューアル時期にもシームレスな利用を保障すること,利用者向けに検索手段を提供すること,オンライン利用上のトラブルに迅速に対応することが一連の流れであるが,これらの業務をスタッフが協力しあってワークフローとして築くこと,これは現在のMCの直面している課題といえよう。
 EJの利用が多い医学部では,利用トラブルへの対応にかなりの時間を割いている。まず不具合が起こった原因の切り分けが必要である。その結果,版元とのやりとりが生じた場合,代理店を通すか,こちらから直接連絡したほうがよいかは,不具合の原因,緊急性,対象となった版元によって対応を変えている。何度かコンタクトしているうちに,版元のどこへ(誰へ)連絡すれば最善の対応が得られるかが経験的にわかってくる。契約及び運用に関する情報は,関係スタッフ間で共有できるようにグループメールを利用している。対外的にもコンタクト先にグループメールを使う利点は大きい。
 従来,図書館では版元への連絡は全面的に書店へ依存してきたが,オンライン契約に関しては過渡的な状況である。

5. 運用面からの問題提起
 コレクションは用意しただけでは意味がなく,それをいかに使いやすく提供するかが重要である。しかし,冒頭に書いたように電子リソースは絶えず内容・構成・機能に変化があり,医学MCの利用案内は追いついていない。WWW上での展開も含めて,見直すべき時がきている。ネットワーク上の情報が充実するほど図書館へ出向く機会の減った利用者へいかにサービスを浸透させるかについても,より積極的な利用者サービスの展開が求められている。
 自然科学分野では,電子ジャーナルに次いで電子ブックが重要なコンテンツとなりつつある。最新の情報を教科書から得るためには,冊子では間に合わないことも一因である。EJ,電子ブック,DBといった電子リソースを統合して利用する仕組みを構築することが,今後のサービスの質を向上させる基盤となるだろう。

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