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ナンバー10、2003年 目次へリンク 2003年10月31日発行
 
eKAMO(Keio Archives in Multimedia Online)Systemについて
石原 智子(いしはら ともこ)
三田メディアセンター係主任
(2003.5まで湘南藤沢メディアセンター係主任)
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1. eKAMO Systemとその目的
 eKAMO System(以下,eKAMO)って何でしょうか,とよく尋ねられるが,簡潔に言えば湘南藤沢キャンパス(以下,SFC)におけるマルチメディアWebデータベース(以下,DB)システムである。
 SFCが創設されてから13年あまり経っているが,eKAMOでは過去にSFCで発生した情報を集約することを目的としている。対象となる情報は今まで蓄積されたSFCに関するあらゆる資料を想定しており,メディアを問わない。例えばキャンパスの写真,AVガイド,CNSガイド,プロジェクト報告書などの公式な刊行物,キャンパスで行われた講演会や行事等の映像や音声,パンフレット,メモ,記録などの非刊行物等である。湘南藤沢メディアセンター(以下,SFCMC)で独自に蓄積した情報のアーカイビングや,SFCに関する書誌情報も対象としている。これらのデータを創設期から遡って蓄積し,必要に応じてWebブラウザで検索し閲覧できるシステムである。DBは学生・教職員が利用するだけでなく世間一般へ広く公開することを想定している。なお授業に関する情報は,学生の自学自習を目的とした学術情報DBであるWeb Learning System(注1)に収録されているためeKAMOでは対象としていない。
 eKAMOの利用に際しては,特別なアプリケーションは必要とせず,インターネットに接続され Web ブラウザが搭載されたコンピュータがあればよい。ブラウザでURLを指定すれば検索画面が現れ,カテゴリー(主題)から,又はキーワードから,あるいはこの両方の条件を組み合わせて検索し,検索結果を利用することができる。必要な場合はデータをダウンロードして閲覧,視聴することもできる。
 キャンパス内のガリバー池(通称鴨池)には,秋から冬にかけて多くの鴨が集まってくる。eKAMOのネーミングやロゴ(注5)についてはSFCの風物であるこの鴨たちがモチーフになっている。

2. 開発の経緯
 eKAMOの開発は,2002年度SFCMCの事業計画で掲げられた「SFCのマルチメディアアーカイバルDBの構築」に基づいている。これは“散在する12年来のSFCの足跡を記録したマルチメディア資料を再統合し,利用に供する”ことを目的とした。この事業に伴い平成14年度文部科学省私立大学等経常費補助金「私立大学教育研究高度化推進特別補助」の「デジタルドキュメント・マネジメントDB」に300万円の申請を出し,翌年2003年2月26日に全額補助が決定したため,システム開発費の一部に充当している。
 開発会社の選定に際しては数社から相見積を取り検討を行った。結果,SFC仕様にカスタマイズ可能で,かつ廉価であることから鹿島メディアバインド(株)に決定し,2002年6月から仕様の検討等を開始した。鹿島メディアバインド(株)とパートナー企業である三機工業(株)も間接的に開発に携わっている。
 正式発注は2003年1月にずれ込んだが基本開発は年度内に完了させるという非常にタイトなスケジュールで進められた。最近はデータストレージセンターなどに委託するサービスも整っているが,DB及びシステム搭載サーバはSFCのサーバとしてCNSリプレースで新たに導入し,湘南藤沢ITCの協力を得てシステム運用を行うことに決定した。なお,筆者が開発を担当したのは三田MCへ異動前の2003年5月までであり,主に仕様の決定とプロトタイプの検証,及び業者への修正依頼に携わった。本稿執筆時の2003年9月時点ではまだサービスインに至っていないことを補記しておく。

3. 主な仕様
 システムのカテゴリー用検索エンジンに高速XML DBエンジンとして Yggdrasill(イグドラシル)1.5 for Linux版(注2)を使用した。昨今OracleやMS.SQL ServerなどのRDBMS(Relational Database Management System)でもXML対応が進んでいるが,YggdrasillではXMLデータがデータ構造や意味,属性を保持したままDBへ格納されるためXMLの利点であるデータやシステムの拡張性互換性,柔軟性を生かすことができるというメリットがある。システム自体の改修やeKAMO内のデータを他システムへ乗せかえるなど,将来へ柔軟に変更・対応できる検索エンジンであると考えられる。また検索速度が非常に速く,2バイト文字や動画等にも対応し,他社製品と比較してコストパフォーマンスに優れるというメリットもあげられる。
 データの書誌部分にあたる各記述はXMLでタグを作成し,約10箇所のタグを条件検索のキーとした。検索はタグ及びキーワードのand, or, not検索を基本仕様とした。データのファイル形式は現在主流の形式,例えばPDF, JPEGなどを採用し,各データの仕様(解像度など)を決めたが,将来のファイル形式の変更を想定し,対応できるよう拡張子を固定しない仕様とした。全文検索については,業者が提案した機能面及び価格面から今回は搭載を見送った。
 システム環境としては,SFCのインフラ環境などを考慮し,OSのディストリビューションをRed Hat Linux(ver.8.0J)で作動するシステムを構築することとした。WebサーバはApache2.0.43及びTomcat4.1.18を使用した。またストリーミングサーバとしてHerix Universal Serverを使用し,Real Player及びWindows Media Playerの両形式で同時に数名程度が視聴できるような環境を構築し,サイトとしてはW3Cの標準規格に準拠していることを基本要求仕様とした。

4. 今後の展望
4-1. ズームイメージサーバの搭載
 筆者の設計段階では,写真の一部を拡大して見ることができる機能を搭載予定であった。画面上で静止画の一部を拡大する機能を持たせ,ダウンロードせずに用が済んでしまう場合も多かろうと考えている。著者の許諾があっても何でもコピーやダウンロードして見るということは利用に際して不便である上,サーバの負荷が増え,著作権の観点からもあまり望ましくないと考えられる。実現のためにはズームイメージサーバを立てることが必要である。(注3
4-2. 政策・メディア研究科学位論文DB注4との統合
 現在,SFCの学位論文はPDFファイルでDB化されており,著者の許諾が得られた論文は全文を公開している。近年,論文自体のマルチメディア化が進んでおり,付録あるいは本体が映像や音声,データ等の形式を取ることも多い。現在の学位論文DBはこれらを統合的に閲覧・視聴できるシステムではないため,媒体に関係なくDB化されているeKAMOへの統合を今後検討することが考えられよう。
4-3. コンテンツの拡充と著作権処理
 搭載されるデータ(コンテンツ)は著作権を処理済であることが必須条件となる。プロトタイプでは,SFCMCの写真及びビデオを搭載したが,今後はコンテンツを拡充してゆくことが望まれる。しかし,過去に製作された作品の著作権処理は一筋縄ではいかないことも多い。例えば映像の場合は肖像権やネットワーク上の送信権の問題などを処理することが必要となるが,登場している人物を特定し,厳密にはそれぞれから許諾を得る必要がある。テレビ局など製作機関が撮影したSFCの映像の場合,製作元の許可なく編集したり,デジタルデータとして複製したりすることはできない。また映像をインターネットで配信する場合はJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)等のような著作権を管理・コントロールする団体も現在は未整備の状態である。
 今後は戦略的なコンテンツ作成を視野に入れDBを構築してゆくことが必要だと思われる。例えば,製作する前に,著作権に関する契約書を交わしてから撮影するなどの方法がその一つとして考えられるであろう。

注1)https://edit.sfc.keio.ac.jp/
注2)http://www.mediafusion.co.jp/yggdrasill/aboutygg.html
注3)http://www.tryzoom.com/view/index.htm
注4)http://thesis.sfc.keio.ac.jp/
注5)

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