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MediaNet≫No.10 2003≫新ILLシステム―開発の経緯とその特徴
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ナンバー10、2003年 目次へリンク 2003年10月31日発行
 
新ILLシステム―開発の経緯とその特徴
関口 素子(せきぐち もとこ)
理工学メディアセンター係主任
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 2002年夏以来,本部データベース担当(以下,本部)を中心に新しいILLシステムの開発を進め,理工学メディアセンター(以下,理工学)と湘南藤沢メディアセンター(以下,藤沢)が基本的部分の検証実験を続けてきた。これを,全塾展開するため2003年2月に新ILLワーキンググループ(以下,WG)を発足させた。このWGは新ILLシステムへの早期移行と安定運用を第一目的としたアドホックなもので,全塾パブリックサービス事務連絡会の下に置かれ,本部からシステム担当2名,塾内6地区からILL担当各1名に,システム補佐1名の計9名で構成された。本稿執筆段階では2003年9月末の解散を目処に活動中ではあるが,新システムの概要をまとめて報告する。

1. 開発の背景
 本学メディアセンターでは,かねてよりILL(Interlibrary Loan=図書館相互貸借)を更に一歩進め電子的な情報の提供までを視野に入れたドキュメントデリバリーサービス(DDS)に関心を広げ,導入を検討する小委員会を立ち上げたり(1999年)日米DDS試行実験に参加したり(1999〜2001年)してきた。しかしながら,国内では著作権法が複写物の電子的伝送を許さない現状や,日米間では需要と供給のアンバランスが問題として立ちはだかり,前進は容易でなかった。一方,塾内各センターのILL担当者は,日々利用者から寄せられる文献複写申込を他館に依頼するいわゆる「借」と,他館から依頼されるいわゆる「貸」の業務に追われ続けている現実がある。
 ここで紹介する新ILLシステムは「借」の部分に焦点をあて,業務密着型でILLの現場で「これは便利」と言えるものを目指している。本学でかねてより利用しているILLシステムである富士通iLiswaveをベースに,本部システム担当が慶應仕様にカスタマイズする形で開発を行った。主な柱は次の2点である。
・全塾が同じシステムにのることで共通業務の効率化を図ること
・利用者からの申込をオンラインで受けその電子的情報をそのまま活用すること

2. 新システム以前(〜2003.3)
 iLiswaveは「NACSIS」「学内」「Local」の3システム(便宜上サブシステムと呼ぶ)を持つ。NII(国立情報学研究所)のILLシステムを利用する依頼は「NACSIS」を,塾内の他センターへの依頼は「学内」を,それ以外で一般的依頼書式を作成しFAX等で申込む場合は「Local」を,それぞれ使い分けている。利用者から寄せられた複写申込書を見て必要な書誌事項・利用者情報等をサブシステムに入力し「依頼」ボタンを押す。そして数日後に依頼先から複写物が間違いなく届いたら「確認」ボタンを押して完了となる。しかしこれら3つのサブシステムは独立して動いており,それらを束ねて全貌を概観することはできない。またこれらサブシステムでは複写物が届けばそれで完了となり,その後本当に利用者の手に渡ったかどうかは関知しない。そういった欠点を補うために,各地区ではそれぞれ台帳を維持しトータルな流れの把握と統計データの切り出しはそれを頼りにしている現状があった。

3. 新システム紹介
 図1は新ILLシステムの流れを示している。二重点線の右側がiLiswaveの既存部分で,左側が今回開発された部分になる。
3. 1 iLiswaveの一括転送画面(2003.4〜)
 新システムでは3つのサブシステムをまとめて全貌を通覧する「一括転送画面」を持たせた。サブシステムでアクションが起こる都度,最新情報が一括転送画面に反映されるため個々の申込みの進捗状況が一目瞭然となった。またサブシステムではカバーできなかった利用者への文献引渡日や入金日もこの画面上で入力可能にした。
 図2は「一括転送画面」のイメージである。これ1枚で全塾共通の台帳として機能するように各地区が必要とする情報を全て項目に盛り込んだため,非常に横長なものとなった。毎日の業務で必要度の高い情報を極力左寄りにするよう順番を工夫した。項目として保有しているのは以下の情報である。
・ID ・ILL-ID(サブシステムでのID)
・状態 ・受付館 ・申込日 ・依頼番号
・申込者氏名 ・申込者所属 ・研究室名等
・E-mailアドレス ・支払の公(校)費/私費別
・支払科目 ・書誌事項 ・標準番号 ・巻号
・ページ ・年次 ・論文関係事項 ・書誌典拠
・所蔵典拠 ・担当者 ・受取希望館
・依頼範囲 ・コメント ・依頼日 ・到着日
・文献引渡日 ・入金日 ・基本料 ・枚数
・単価 ・小計 ・送料 ・合計 ・統計身分
 またこの画面中のデータを自在に切り出しエクセルに落とし込めるCSV保存機能を付加したことで,料金集計や各種統計の元データが抽出可能となった。
3. 2 Webオンラインリクエスト連携機能
 (理工学,藤沢 2003.7.7〜,日吉,医学,KBS 2003.9〜予定)
 インターネットや電子メールが普及した今日,図書館に対する各種のリクエストもWebを介することが利用者サービスの向上につながる。既に日吉メディアセンター,理工学,藤沢,経営管理研究科図書館(KBS)では,それぞれのホームページに用意したオンラインリクエストの文献複写申込ページが順調に機能している。しかしこれまでは,折角電子的に入ってきた申込もメールとして受信した後,再び「NACSIS」等のサブシステムに担当者がリタイプしており何とも無駄が多かった。また利用者自身が文献データベースやインターネットを検索し,見つけた結果をcopy & pasteしてオンラインリクエストに投げてくるケースも多く,その情報をそのままサブシステムに流し込めたら大いなる効率アップである。
 新システムでは,iLiswaveに外付けのシステムをつなげることでWebオンラインリクエスト連携機能を実現させた。利用者側には何の差異も感じさせないが,送信されたリクエストはそのまま「一括転送画面」に〈未受付〉という状態で入ってくる。作業用帳票をプリントアウトし所蔵調査等の作業を経て,どのサブサブシステムにオーダーすべきかが決まったら「○○へ転送」ボタンを押すことで,データがそのまま指定のサブシステムに流し込まれる。また到着や謝絶等の利用者への連絡も,利用者本人が入力したメールアドレス情報を用いることで,ボタンひとつで予め地区ごとに用意した適切な文面をピックアップして送信することが可能となり,大幅な効率改善につながった。
 現在は理工学,藤沢の2地区が先行して実稼動させているが,他の地区も段階的に参入予定である。
3. 3 料金集計ツール(2003.9〜予定)
 複写にかかる料金については,これまではサブシステム中にその金額が入力されているにも関わらず,各地区の総務担当者は別途それぞれの方法で料金集計をする,という重複した作業を行っていた。今回iLiswaveの外付けとして作り上げた料金集計ツールでは,サブシステムに入力され一括転送画面に反映された料金をCSV保存機能でエクセルに落とし,総務担当者にも使ってもらえるようにした。塾内の料金相殺も本部総務がこのツールを利用することで容易になる見込みである。
3. 4 統計ツール(2003.9末完成予定)
 年度が新しくなる都度,担当者を悩ますのが前年度標準統計提出である。新システムの稼動により全塾が同じ基盤で業務を行うようになったので,標準統計に必要なデータも容易に抽出できるようにするのがこのツールであり,iLiswave外付けとして9月末までに開発予定である。

4. 今後の課題
 システムは常により良いものに発展していく必要があり,このシステムも例外ではない。このWGは短期決戦型で臨んだため,もっと高い目標があるのは承知していても切り捨てざるを得ない面があった。例えばWebオンラインリクエスト連携をさらに進めた「OPAC-Webリクエスト連携」である。OPAC検索結果から,他センターにしか所蔵がない資料に対して利用者自身が即座にILLリクエストをかけられるシステムが望まれる。また「文献データベース-Webリクエスト連携」即ち,データベースの検索結果で得られた論文が自館で手に入らない場合に,直接ILLリクエストにつなげられるシステムも考えられる。さらには利用者本人が自分のリクエストの進捗状況をWeb上で確認できるシステムも視野に入れていくべきであろう。
 現在までに開発された機能についても,より使いやすくするための改善点が次々と現れるはずである。このWGは9月末で解散するが,今後も継続的にシステムが成長していくことを期待する。

参考文献
1)田邊 稔.“ドキュメントデリバリーサービスの実際と応用(概説)”.現代の図書館.Vol.39,No.3,2001,p.159-166.
2)加藤好郎. “グローバル・リソース・シェアリング時代の到来:日米ドキュメント・デリバリー・サービスの現状と将来”.私立大学図書館協会会報.No.118, 2002,p.110-112.

図表
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図1 新ILLシステム処理フロー概念図
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図2 一括転送画面
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