最近,好奇心からくる勢いに任せて風水鑑定師の資格を取ってしまった。それからは,近所や通勤途中にある建物の土地の形・構造にもついチェックが入り,週末は新聞に山ほど折り込まれてくるマンションやら一軒家の販売チラシを見ては「ふむ。この間取りだと・・・」などと,つい風水調整の実習を始めてしまうこともしばしばである。
風水は中国約7,000年の歴史を下敷きにした環境統計科学というべきもので,自然界のエネルギー(木・火・土・金・水(もっかどごんすい))のバランスを整え,心地よい環境をつくるための方法論である。日本の歴史に登場するのは約1,300年前の奈良時代に遡るが,一般社会に広がったのはここ最近のことだ。しかし,今では書店に行けばDr.コ○氏などの風水関連書籍が平積みされている状態である。本来,鑑定は住人の本命掛(方位)と土地・家の宅向(運気)から吉凶方位を算出する,その人ごとのカスタマイズ(調整)が必要となるが,基本的な方位をみるだけでも「家」の性格を見ることが出来る。
そんな時に,ふと図書館の方位はどうだろうか?という興味が沸いてきた。さっそく八掛(はっけ)と呼ばれる8つに分類された方位から各キャンパスの敷地内における図書館の位置と意味をみてみたところ,なかなか面白い結果が出た。
まず,歴史と伝統の三田キャンパス。
三田の場合旧図書館と図書館があるが,風水では「もともとあった場所」を重視するため,まず旧図書館の方位でみる。
旧図書館はキャンパスの中で,艮(ごん)=北東のエリアにおさまっている。北東エリアのテーマ色は紫で,「学業,自己啓発,知的向上心」を意味する。まさに「その通り」の方位である。ここからは真面目知的探究心が強い雰囲気も読み取れる。では,図書館(新館)はというと,震(しん)=東のエリアで「情報,発展性,通信」を意味する方位となる。組織名が図書館から情報センター,メディアセンターと変遷していくのと,方角が表す意味と合致するところが面白い。
では日吉キャンパスはどうか。
日吉メディアセンターはキャンパスに入ってすぐの兌(だ)=西の位置にある。ここは「子供心,創造心」を意味する。色は黄色で「黄色い声」という表現もある通り,賑やかで皆が談笑したりするような集う場所という印象だ。1・2年生が中心の日吉ならではの未来への期待や可能性,旺盛な好奇心を表しているように見える。
矢上キャンパスと信濃町キャンパスについては,実は難しい。この2館は,建物の名称からも北里柴三郎,松下幸之助という「特定の個人」との関わりが深いことを示しているからである。方位からみた特徴も,「個人」を表す要素も多分に含まれているようにに思う。矢上の松下記念図書館はキャンパスの巽(そん)=南東でテーマ色はグリーン。この方位は「変化,循環,豊かさ,産出力」を表す。信濃町の北里記念図書館はというと,天(てん)=北西方向でテーマ色は白。「協力者,高徳心・感謝」を意味する。白はまさしく白衣の色だろうか。
最後のSFCメディアセンターはいうと,キャンパスの太極(たいきょく)=中心に位置する。キャンパスの設計段階で,意識的にメディアセンターを心臓部である中心に据えられた。「中心」という方位には特定のキーワードや色はないが,周囲の方位に対してコントロールする役割や基地局といった意味合いがある。また混沌という意味もあるかも知れない。基地局メディアセンターで,ワークステーションやラップトップPCでせっせとレポートを作成しているSFC生の姿が思い浮かぶ。
各キャンパスと図書館を,方位からざっと眺めてみると思いがけなく図書館それぞれの「色」が特徴として表れているという結果が出た。そして更に図書館の方位で割り出した意味が,そのキャンパスの特徴をも象徴しているようにみることが出来ないだろうか。それは図書館がキャンパスの「意図」や「記憶」=歴史と深く結びついているからなのかも知れない。大学キャンパスにある福澤先生の銅像3体(三田・日吉・湘南藤沢)ともが,図書館の傍で鎮座していることからも,過去から引き継いだ「象徴」であることを強調しているように思えるのである。 |