MediaNet メディアネット
ホームへリンク
最新号へリンク
バックナンバーへリンク
執筆要項へリンク
編集員へリンク
用語集へリンク
慶應義塾大学メディアセンター
メディアセンター本部へリンク
三田メディアセンターへリンク
日吉メディアセンターへリンク
理工学メディアセンターへリンク
信濃町メディアセンターへリンク
湘南藤沢メディアセンターへリンク
薬学メディアセンターへリンク
ナンバー10、2003年 目次へリンク 2003年10月31日発行
 
看護短期大学図書室を閉鎖して
川崎 直子(かわさき なおこ)
医学メディアセンター
全文PDF
全文PDFへリンク 16K
1. 看護短大図書室
 平成15年3月に慶應義塾看護短期大学が閉学となった。それと同時に看護短期大学図書室(以下,短大図書室)も閉室された。同短期大学が設立されたのは昭和63年であった。開学と同時に図書室も設置され,以来15年間看護教育をサポートするべく活動を続けてきた。
 短大図書室の運営には,医学メディアセンター(以下,医学MC)の職員が数年おきに交代で当たっていた。筆者は最後の担当者で,2000年4月から2003年3月の閉室まで在籍した。メディアセンターに勤務していると,通常は特定の業務の担当として配属される。ところが短大図書室は専任職員が1人しかいない小さな所帯で,閲覧業務やレファレンス業務は勿論のこと,予算の管理や選書,資料の購入,書庫の管理など,その業務は多岐に渡った。小規模とはいえ,1人でひとつの組織を切り盛りするのである。僅か3年ではあったが,貴重な経験であった。
 短大図書室は,看護学に特化した図書室であった。当然のことながら利用者の殆どが看護短期大学の教員および学生,そして同じ敷地内にある慶應義塾大学病院に勤務する看護師であった。外部の利用者も殆どが医療従事者や看護学生であった。規模こそ小さいが,看護学関連の資料がひとかたまりになっており,看護に携わる利用者にしてみれば至極便利であった。ピンクを基調にした柔らかな雰囲気の空間で,施設としても快適であり,図書室閉鎖のニュースを耳にして残念がる利用者も多かったように記憶する。
 現在,看護短期大学の校舎は「孝養舎」と命名され,1階エントランス付近には学事課および学生総合センターの信濃町支部が設置されている。2階より上にある教室は主に看護医療学部の授業に利用され,図書室があった場所は自習室に改装されている。

2. 図書室閉鎖と問題点
 看護医療学部が発足する以前から,看護短期大学が平成14年度いっぱいで閉学されることは決定していた。当然のことながら,図書室内の資料の扱いをどうするか決める必要があった。医学MCで専用のワーキンググループを立ち上げ,この問題に取り組むことになった。
 いざ問題点を洗い出してみると,一筋縄ではいかないことが改めて浮き彫りになった。蔵書の移管ひとつとっても,問題は多岐に渡った。単純に医学MCないし看護医療学メディアセンター(以下,NMC)で引き取れば済む問題ではない。いくら短大図書室が小規模で蔵書が25,000冊程度しかないといっても,丸ごと他MCに移管するには量が多過ぎた。もとより重複資料も多かったため,リソースシェアリングの観点から見ても無条件に移管することは好ましくなかった。移管対象を適宜選択する必要が出てくるが,どのような基準で資料を選ぶべきか,その基準から考えなくてはならなかった。しかも医学MCやNMCのキャパシティでは,引き取れる資料の数にも限りがあった。選書からもれることになる大多数の蔵書を,どこに保管するかも懸案事項であった。
 蔵書の問題だけではなく,サービスの継承についてもプランを立てる必要があった。医学MCでも今まで看護短大生や看護師にサービスを供していたが,短大図書室が近くにあることを理由に,医学部生や医師へのサービスを優先させていた。短大図書室閉鎖後は,今まで以上に看護学系資料の収集に積極的にならざるを得ない。また見過ごすことができない大きな問題として,今年度から看護医療学部生を信濃町キャンパスに迎えることが挙げられた。藤沢に設置された看護医療学部は,第3学年は臨床実習が中心となるため,学生は信濃町を拠点にするのである。(第4学年の一部も信濃町に残留予定。)実習だけでなく授業も行われる上,信濃町に研究室を持つ教員も少なからず在籍するため,医学部所属の利用者と同様のサービスが求められる。

3. 実際の移管作業
 ワーキンググループはまず,移管対象資料の選定に着手した。最初に取りかかったのが,図書の選択であった。比較的新しいもので,医学MCに重複がないものを中心に選択することにした。ところが意外な落とし穴もあった。看護学関連の図書の中には既に絶版になっているとはいえ,基本書として今も需要が高いものが少なくない。看護短大の教員の助けも借り,そのような図書を選び出すことにした。最終的には300冊程度を選び出し,医学MCへ移管した。少しずつ手作業で除籍し,その都度医学MCへ資料を運び,受入れ処理や装備を進めた。
 残った図書から更に,NMCに移管するものを選び出した。図書の選定にはNMCのスタッフが当たった。NMCの書架の空き状況から,1,000冊程度の移管が適当と思われた。またNMCではビデオ教材の需要が高いため,短大図書室のビデオの殆どがNMCに移されることになった。
 最後に残ったのが雑誌であった。NMCは主に学生対象,医学MCは主に看護師が対象ということで,雑誌の内容によって移管先を決めることになった。おおまかな基準を設け,あとは電子ジャーナルの有無や教員の意見を参考に適宜調整することにした。雑誌の場合,ただ単に現物を動かすだけでは作業は完了しない。購読手続きや国立情報学研究所(NII)への登録,雑誌受入システム(KOHEI)などシステム上の処理など,細々した作業が多かったように思う。我々としては可能な限り教員の希望は尊重したいところであり,場合によって移管作業を調整する必要もあった。もともとNMCで引き取ることになっていた雑誌が医学MCに移管されたケースもあった。当時はまだ看護医療学部の教員が全員藤沢に在籍していたため,そう度々会合を開くこともできず,調整に思いのほか時間がかかった。
 苦労の末に移管先を決定し,いざ荷造りという段階になったのが2月。もうひとつ問題が起きた。
 移管対象外の資料は全て信濃町キャンパス内の看護師寮(白梅寮)に搬入することになっていた。空き部屋に書架を展開し,請求記号順に並べる予定であった。我々の選書からもれたものの中に,信濃町での看護医療学教育に必要なものがまだ残っている可能性もあるため,最終チェックを看護医療学部の教員に依頼した。
 ところが教員が「是非とも医学MCに置いて欲しい」と選んだ資料が,我々の予想を上回る3,000冊余りと判り,我々を大いに慌てさせた。結局それらの図書はそのまま寮に運び入れることになり,処理は新年度の課題となった。(注:その後重複調査を行い,医学MC未所蔵分約2700冊を抜き出した。それらの図書は医学MCの蔵書に追加され,既に貸出サービスを開始している。)

4. 看護医療学部生を迎えて
 新学期を迎え,看護医療学部の3年生が信濃町に移ってきた。医学部生とも看護短大生とも違うタイプの学生であり,独特のカラーがある。非常に勉強熱心であり,いい意味で遠慮がないように思う。医学MCに対しても,積極的に要望を出してくる。
 こぢんまりしたNMCに慣れた利用者にして見れば,ある程度規模の大きな医学MCはやはり利用しづらいようである。我々も看護医療学部の教員・学生を迎えるのは初めてのことで,彼らのニーズをまだまだ的確に把握しているとは言い難い。少しでも医学MCへの理解を深めてもらうべく,今秋から看護医療学部生向けのガイダンスを本格的に開始する。データベースの実演も交えて,資料検索方法の講義を行う。また,看護医療学部の教員との話し合いの場も可能な限り設ける予定である。
 なんとか無事に終了した移管作業だが,様々な課題を残していった。まだまだ手探り状態だが,少しずつ前進したいと思う。

 PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です このページのトップへ戻る
メインナビゲーションへ戻る
Copyright © 2004 慶應義塾大学メディアセンター All rights reserved.