概要と特徴
2003年10月より,IT・コンピュータ分野(プログラミング,ハードウェア,セキュリティ)に特化したコンテンツ約2,000冊を収録しているSafari Tech Books Onlineを全塾で導入した。この電子ブックサービスは,IT関連書籍の出版社として定評のあるO'ReillyおよびPearson Technology Groupを中心にAddison-Wesley,Sams Publishing等の図書を提供している。このSafari Tech Books Onlineの特徴は,IT分野の資料に顕著である内容(情報)の更新や改訂に合わせ,契約の1カ月後からタイトルの入れ替えが可能であること,多くのタイトルが印刷物よりも先に追加される点である。
導入に際して
導入した理由として,印刷体の図書では得られない新しい機能(全文検索,複数資料の同時参照,目次や索引からの該当項目へのリンク,読みたい図書が貸出中で利用できない不便を解消するなど)を備えている点,Safari Tech Onlineの主題や新しい情報に対する反応が高い点がSFCのニーズとマッチしていたことが挙げられる。その他専用の閲覧ソフトを必要としない点や,IPでの管理が可能であった点など,運用上比較的管理しやすいものであった事も理由の1つである。
導入当初(2003年度)は前述の主要4出版社の全タイトルを対象に,契約スロット数(収録タイトルごとに割り当てられた点数)の範囲内ならばタイトルの入れ替えが任意に変更可能という契約形態を取っていたが,毎月50を超える新規タイトルと削除するタイトルの選定を行う煩雑さがあった。しかし,今年度より出版社別パッケージ契約に切り替えることによって,該当する出版社の新規タイトルが自動的に追加登録され,利用できる形態となった。
利用統計から
正式導入後の利用統計を見てみると,まだ印刷物として刊行されていない新着タイトル,出版されているが塾内(国内)で所蔵していないタイトル,日本語の翻訳版が出版されていないタイトル等の順でアクセス回数が多い。
表の月ごとの統計結果を見てみても,Section(節)ごとのアクセス回数,ログイン数とも増加している傾向は見られるが,人気のある出版社のコンテンツの割にはそれ程頻繁に利用されているとは言いがたい。収録タイトルが全て欧文という点は考慮に入れなければならないが,Safari等の電子ブックのサービスにおいて問題なのは,わざわざSafari(特定の入口)に入り直さなければならない点ではないだろうか。利用者はOPACとは別に,Safariを選び直して検索するという手間が必要である。またEJ-OPAC等のリンク連携システムが無いことも挙げられる。メディアセンターのホームページ上での広報も,一定以上の効果をあげるのは難しいのではないかと思われる。
その他の電子ブックサービス
最近の電子ブックサービスには,複数の出版社の電子ブックを集めたアグリゲーションサービスと,学術出版社が提供するものとがある。
アグリゲーションサービスでは,「Books24×7」(ITやビジネス情報の技術書や参考図書などの電子ブックを集めたもの),「goReader」(高等教育用のテキスト集),「Knovel」(Elsevierなどの科学技術分野のハンドブック),「netLibrary」(OCLCが提供する図書館向け電子ブックサービス),「xrefferplus」(人文・社会科学分野)等が挙げられる。また,学術出版社提供のものとしては,「cognet」(認知科学),「Handbook of Chemistry and Physics」,「Kluwer online」やレファレンスブックを提供する「PDR.net」(医薬品),すでに導入している「Oxford Reference Online」等が挙げられる。今後は現在導入している電子ブックの利用促進の方法を探りつつ,新たな動向を追いながら導入の可能性について検討していきたい。
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