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MediaNet≫No.11 2004≫三田メディアセンターデジタル工房設置について
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ナンバー11、2004年 目次へリンク 2004年10月1日発行
特集 大学図書館からの情報発信―電子化情報と情報電子化への取り組み
三田メディアセンターデジタル工房設置について
加藤 好郎(かとう よしろう)
三田メディアセンター事務長
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 米国の大学図書館においては,学術情報基盤整備が着々と進んでいる。メディアセンターと図書館員の交換協定を結んでいるトロント大学をはじめ,筆者がここ一年で訪問した,コロンビア大学,コーネル大学も例外ではなかった。図書は勿論のこと,各種資料の保存のためのデジタル化,遠隔授業のためのテキストのデジタル化,電子ジャーナル,電子ブックの購入等,基本的にはタスクフォースであるが,図書館組織の再構築(拡充)をはかりながら,事業展開をしている。つまり,米国の大学においては,学術情報基盤整備の役割は大学図書館が担っているといえる。
 日本社会において,18歳人口が急増していた1980〜1990年代の大学に対する考え方が最近異なってきている。現在,産業界は,国際社会での競争力,経済社会の発展のために「知の創造拠点」として大学に大いなる期待をしている。
 慶應義塾大学においては,「卓越した研究拠点(COE)」「特色ある大学教育支援(GP)」の補助金の獲得や,企業とのコンソーシアムによる基金により,学術情報基盤整備の一環としてHUMI(HUmanities Media Interface)プロジェクト,デジタル・コンテンツ研究運用DRM(Digital Research Museum)機構あるいは各研究所等でデジタル化を行い,国内外に情報発信をしてきている。また,今年度科学振興調整費いわゆるスーパーCOEによる文部科学省の業務委託により,DRM機構が発展的に解消され新たに「デジタルメディア・コンテンツ統合研究(DMC)機構」が立ち上がった。この機構の研究体制は,統合研究部門(コンテンツデザイン応用研究ユニット等)と運用部門(研究部門の支援体制等),評価委員会,倫理委員会で構成されており,学術情報の発信,収集の基点としてのポータル機能を持つことを目的にしている。
 これら慶應義塾の情報の発信と収集の仕組みが考えられる中で,三田メディアセンターは独自に,資料保存のためのデジタル化あるいは慶應義塾図書館の特色ある所蔵物を国内外に発信するためにデジタル化を行っている。
 慶應義塾図書館(新館)地下1階に,印刷室を改修することで「三田メディアセンターデジタル工房」を設置した。この当面の目的は,「第1回普通選挙ポスター」のデジタル化と「インキュナビュラ」のデジタル化である。普通選挙ポスターは既に,業務委託により完了しており,インキュナビュラについては2名のスタッフが,HUMIプロジェクト等のノウハウを学びながらデジタル化を進めている。今後の事業として,次のものがデジタル化の候補として挙がっている。
 1. 重要文化財相良家文書
 2. 高橋誠一郎浮世絵コレクション
 3. 井筒俊彦文庫所蔵石版本
 4. 戦争文庫
 5. 小山内薫演劇絵葉書
 6. 慶應義塾図書館所蔵科学史コレクション
 これらの成果は,いずれは研究図書館連合Research Libraries Group(RLG)の文化財画像データベースRCM(RLG Cultural Materials)に搭載することで海外の図書館にも発信することを考えている。この事業の中で,同時に館員の育成も実践している。
 筆者は,専門職としての機能として7機能を挙げてきたが,今,それは9機能に増えている。米国の大学図書館を訪問する度にElectronic Librarian, Digital Librarianの必要性を痛感する。前者は,電子媒体の収集に対する,知識,技能そして感性(バランス・幅)を持ち,後者はデジタル化に対する,それらを持っている人である。
 今後は,「デジタルメディア・コンテンツ統合機構」との協力も視野に入れて,「小さな工房」から世界に対して「大きな成果」を出すことを目指している。“Think Global, Act Local.”世界(将来)を見据えて,足元を固めて。
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