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MediaNet≫No.11 2004≫美術館と図書館のつながる関係
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ナンバー11、2004年 目次へリンク 2004年10月1日発行
スタッフルーム
美術館と図書館のつながる関係
赤松 千佳(あかまつ ちか)
東京国立近代美術館 アートライブラリ
(2004年3月まで理工学メディアセンター所属)
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 近頃私が美術館に行く楽しみにしているのは,ギャラリーガイドである。ガイドといっても美術館によっていろいろな種類があり,専門的な知識をレクチャーしてくれる解説型のガイドや,子ども向けの美術館入門的なガイドもある。自分の心の赴くまま,自由に作品を楽しむことは美術館に行く醍醐味だが,ガイドに参加することによって,自分が知らなかった知識を得たり,新しい作品に興味を抱くきっかけができたり,楽しみがさらに広がることは嬉しい。
 私が美術館に行き,いろいろなガイドを積極的に楽しむようになったのは,自分自身が美術館ガイドをするようになったことがきっかけだ。私は慶應義塾大学理工学メディアセンターに嘱託職員として在職中に,東京国立近代美術館でガイドスタッフとしてボランティア活動をはじめた。ガイドスタッフによる所蔵品ガイドは,常設展示の中から数点を選び,テーマに沿って約1時間お客様を案内する。このガイドは,毎日午後2時から,20名のガイドスタッフによって交替で行われている。ガイドのテーマはスタッフ自身が決めるので,毎日違うテーマ,違う作品のガイドが聞け,何回参加しても楽しめるようになっている。ある日のガイドのテーマは,「人体と表現」,「イメージの力」,「描かれた動物たち」,「見上げてごらん」,「あたたかなまなざし」,「わたしが ここに いる」。
 東京国立近代美術館の所蔵品ガイドの特徴は,対話型という点である。ガイドがお客様に一方通行で作品について解説をするのではなく,お客様と一緒に作品について語り合い,理解を深めていこうという姿勢である。そのときにもよるが,一つの作品について10〜20分程かけ,一つ一つの要素をじっくりと見,さらにそれについて語り合い,お互いの意見を共有するというのは,個人的な鑑賞ではなかなかできない貴重な体験である。自分以外の人の作品の見方や感じ方を知ることは,お客様にとって興味深い体験であると同様,ガイドをしている私にとっても毎回新しい発見をもたらしてくれる。何の予備知識も持たずに,作品と対話し,直接感じ取ることは素晴らしい体験だが,さらに作家の言葉や,作品が描かれた社会的背景を手がかりに,作品のもっている多様性や広がりを感じることができたときは,また新たな魅力を見つけられ,その作品がさらに身近に感じられる。ガイドを通して,年齢も生活環境も異なる人々が出会い,美術について語り合い,日常生活では体験することがない,自由で新しい人との「つながり」は,無限の広がりと同時に,大きな可能性を感じる。
 ガイドとしてお世話になっていた東京国立近代美術館で,2004年4月から司書として働いている。美術館の一角に併設されているアートライブラリは,主に美術分野の図書,雑誌をはじめ,展覧会カタログや,美術館・博物館の館報や紀要などを収集し,一般に公開している。それまで,ガイドする作品についての文献を調べたり,ガイドに参加してくださったお客様の疑問点を解決するために一緒に訪れたりしていたライブラリを,今度は司書の立場から見るのはとても興味深い。
 ガイドを通して,お客様と「つながり」,お客様と作品を「つなげ」,お客様と美術館を「つなげる」お手伝いをすることに喜びを感じていたが,今はさらにライブラリという新しい輪が加わり,司書としても「つながっている」。今後は,ガイドとしての経験と,司書としての観点を融合し,「つなげる」輪をさらに「広げる」ことができれば嬉しく思う。
 ガイドスタッフによる所蔵品ガイドからはじまった東京国立近代美術館のガイドは,今ではさらに2種類増え,毎月第1日曜の無料観覧日に行われる「研究員によるハイライトツアー」と,月に1回金曜の夜間開館時に行われる「研究員によるフライデートーク」があり,さらに幅広いガイドを楽しめるように進化している。またライブラリでは,2004年3月から美術図書館横断検索が開始され,東京国立近代美術館本館・工芸館・フィルムセンター,および東京都現代美術館,横浜美術館の3館5室の蔵書を横断検索することができるようになった。ここでもネットワークが広がっている。
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