1. メールによるニュース配信開始の経緯
当報告は,信濃町メディアセンターにおけるメールによるニュース配信サービスの開始経緯から現時点での課題までの説明を目的とする。
信濃町メディアセンターでは,従来から紙媒体による広報誌『きたさとニュース』を発行するほか,ホームページなどで新サービスや電子リソースの案内を行ってきた。加えて,個人宛メールや口頭でサービスの案内・普及を行っている。
しかしながら,利用者が来館せずネットワークを介して電子リソースを利用するようになるなど,利用者の行動に変化が生じてきたため(注1),来館しない利用者への広報手段を考える必要が生じていた。
新たな広報手段としては,ホームページのように,利用者が情報を入手するために能動的に行動を起こす必要のあるpull型広報ではなく,速報性のあるサービスを利用者にタイミングよく周知できるpush型広報として,メールによるニュース配信が提案された。
2. 準備
準備は,以前からニュース配信の必要性を強く感じていたレファレンススタッフと筆者が担当した。
(1)枠組みの取り決め
担当者ミーティングを一,二度行い,全体の流れからメール配信時の件名等細かい事項まで話し合った。
主な決定事項は,ニュース配信対象者と配信内容であった。配信対象は信濃町キャンパス在籍者および三四会(医学部同窓会)会員の中でメール配信を自ら希望した利用者を登録者とした。図書館に興味のある利用者のみを登録することで,興味のない利用者にノイズとなるようなメールを配信しないためである。配信内容は,データベースや電子ジャーナルなどの電子リソースの紹介や電子リソース活用講座の紹介を中心とした。
(2)システム整備
メディアセンター本部と相談し,表1の流れで運用を行うこととした。
まず当サービスに興味をもった利用者に,問合せ用メーリングリスト宛に配信申込のメールを送ってもらう(A)。担当スタッフは登録希望メールを送信してきた利用者の所属を確認し,ニュース配信用メーリングリストに希望者のメールアドレスを登録し,登録が完了したことをメールで報告する(B)。
配信用メーリングリストにメールが送信できるのはニュース送信用アカウントからだけである(C)。個人アカウントからではなく,ニュース送信用メールアカウントからニュースを配信している理由は,スパム攻撃等の対象から個人アカウントを保護するためと,差出人名が個人名ではなく,組織名の方が利用者に親切なためである。
また,登録者側からは配信用メーリングリストにメールを返信できないように設定している(D)。他登録者にとって無駄なメールが無用に配信されるのを防ぐためである。このような設定により,当ニュース配信は従来のメーリングリストの性質である双方向性がなく,メールマガジン形式の一方的な情報の配信手段として機能している。ニュース送信用メールアカウントに返信した場合は,共有端末での受信を常に確認するのは難しいため,問合せ用メーリングリストに転送設定を行っている(F)。
登録者からの問合せには,前途の問合せ用メーリングリスト(E)を案内している。
また,担当者変更による設定変更の手間を省くため共有端末を用意している。
(3)広報
従来の広報手段を用いてPRするほか,専任講師・看護師長以上の職位の教職員約250名に院内便にて案内状を送付した。利用者の反応は迅速であった。案内状送付1週間後の10月7日までに38名から配信希望のメールがあり,図書館リソースへの関心の高さに改めて驚かされた。それと同時に,従来の広報方法に何らかの形で不便を感じていた利用者が存在していたことが明らかになった。
3. メール配信の現状
2003年10月4日に第1号のニュースを配信し,配信回数は2004年6月15日現在32回を数えている。企画段階から約1ヶ月という短期間にサービスが実現し,現在も維持できている理由には,利用者のニーズが限られた専門図書館であることが挙げられるだろう。医・薬・看護学の図書館リソースに対するニーズは比較的特定しやすく,利用者が必要とする情報に分散が少ないので,登録者全員に同内容のニュースを配信しても問題がなく,少ない労力でサービス提供が可能となっている。現段階では,ニュース提供者と原稿作成・配信者の2名がそれぞれの日常業務に支障のない範囲で当サービスを担当している。
ニュース内容はサービス開始時に広報したものとほぼ同内容であるが,中でも電子リソース関係の案内が18回と過半数以上を占めている(表2参照)。
メール配信の登録者は現時点までに79名にのぼっている。登録者数の内訳は,所属教室別に中央臨床検査部の8名,解剖学教室・放射線診断科,薬剤部,神経内科の4名の順となっており,他教室については3名以下と分散している。三四会員も登録可能であるが,電子リソースなどキャンパス限定サービスの情報が多いため,結果としてキャンパス在籍者が登録者の中心層となっている。
4. 課題
今後の課題は,利用者のニーズの把握と今後の新たな登録者に向けた効果的な広報の2点である。
退会の申込はなく,ニュースは登録者全員の手元に届いている。しかし,登録者の意見を聞く機会がないため,利用者が必要と感じている情報や潜在的なニュース希望者層が具体的に把握できていない。この解決方法として,他大学からの情報収集と登録者に対するアンケートを考えている。各大学の広報方法を訊ねることで当センターの今後の広報方法の参考としたい。またニュース配信登録者に現在のニュースの満足度を聞き,登録者の傾向の把握を行うことで,ニュースの充実や登録者と同様の行動パターンをもつ未登録者に向けてニュース配信の重点的な広報ができるのではないかと考えている。
注
1)看護医療学部生受け入れなどの来館者数の増加要因があるにもかかわらず,2001年から2003年の間に216,871名から180,645名に減少している。この一因として信濃町メディアセンターでは電子リソースの充実があると考えている。電子ジャーナルの契約タイトル数(ライフサイエンスのみ)は,同年比較で2,008誌から3,900誌へ増加している。
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