1. プログラムにおける課題
日吉メディアセンターが組織目標として取り組んでいる情報リテラシー教育プログラムは,塾生全員が,入学後の早い段階で,情報リテラシーを身につけることを目指している。
その活動の大きな柱である,1年生を対象に90分の講義形式で行う「情報リテラシー入門」は,1997年度の理工学部での授業カリキュラムとのタイアップを足がかりに,2003年度には,4学部,3,500人を対象とするまでに広がりをみせている(注1,注2)。
こうした授業カリキュラム内での講義を継続して行う一方で,(1)受講機会を得られない学生に対する学習機会の提供,(2)「情報リテラシー入門」受講者に対する受講後のフォローアップ,(3)2年生に対するより高度な学習内容の提供,が今後取り組むべき課題としてスタッフ間の共通認識となった。
これらの課題を解決するために,教員や学生の要望に応じて行うオンデマンド型セミナーの充実と利用促進,時間や場所の制約なしに学ぶことができるウェブベースのオンラインチュートリアルの制作が求められた。
2. プロモーションとしてのサイト制作
利用者の要望に応じて行うオンデマンド型のセミナーは,以前よりプログラムの一つのメニューとして用意されている。セミナーには,「情報リテラシー入門」とは異なり,個々の授業内容やそこで学生に与えられる課題を対象とすることが可能なため,受講生もより具体的な問題意識をもって,情報リテラシーについて学ぶことができるといった利点がある。
セミナーの利用促進を図るためには,プログラム全体への理解を得るとともに,個々のプログラムの認知度を高める努力,特に学内教員に対して積極的にプロモートしていく姿勢が必要といえる。
今回はそうした状況を踏まえ,主に学内教員を対象として,日吉メディアセンターが行う情報リテラシー教育への取り組みに関するプロモーション活動の起点づくりを目的にサイト制作を行った。
3. 設定要件とコンテンツ
サイト制作にあたって,以下の点を満たすべき要件として設定し,対応するコンテンツを作成した。
(1)プログラム全体を理解することができる:サイトを訪れることで,情報リテラシーとは何か,それに対しメディアセンターがどのような姿勢で取り組んでいるかが理解できるとともに,個々のプログラムの詳細を知ることができる。(2)セミナーの申込みがサイト上からオンラインで行える。(3)スタッフが発表した関連論文を読むことができる。(4)他キャンパスも含めメディアセンターが作成した各種ガイドを一覧できる。
セミナーの申込みについては,単にオンラインフォームを設けるだけではなく,セミナーをどのように活用したらよいか,利用することでどういった効果が期待できるかといった点について具体的にイメージできるよう,実際に利用した教員による記事を設けることとした。
4. 制作を終えて
新年度開始にあわせ,2004年4月10日にサイトを公開した。今後は,ここを起点にどのように情報を発信していくかが課題といえる。
プログラムを利用した教員の声を継続して掲載したり,実際に授業やセミナーで行った内容について紹介していくなど,学内に対しプログラムの利用促進を図るとともに,学外に対しても活動を広く理解してもらえるよう,スタッフによる発表論文については全文を掲載していく予定である。
また,今後は,情報リテラシーの学習の場としても機能するようオンラインチュートリアルや,パスファインダーなど新しいプログラムの提供が求められる。今回設けた各種ガイドへのナビゲーションは,単なる利用しやすさだけでなく,キャンパスごとにばらばらに作成されているガイドのあり方について考えるきっかけとなることを期待して設けたコンテンツでもある。個人的には,キャンパス間で担当を分担するなど,ガイドの共通化・共有化がすすめられ,パスファインダー的な機能をもった利用ガイドへと発展することを期待している。
今回は,メディアセンターが行う活動のプロモーションを目的にサイト制作を行ったが,その効果を考えた場合には,サイト上に情報を掲載するだけでは不十分であり,従来の紙媒体による広報や,電子メールによるニュースの発行など,他の手段も活用した,より効果的なプロモーション活動が行われることを期待している。
最後に,お忙しいなかメディアセンターのサービスに理解を示していただき,セミナー利用者としての声を寄稿してくださった経済学部鈴村直樹教授をはじめとして,このサイト制作にあたり支援をいただいた日吉メディアセンター職員の方々に,少し離れた湘南藤沢キャンパスの地より感謝申し上げます。ありがとうございました。
情報リテラシー教育プログラム
http://www.hc.lib.keio.ac.jp/ilp/
注 1)山田雅子.“日吉メディアセンターにおける情報リテラシー教育の取り組み”.Medianet.N0.10, 2003, p.32〜35 2)上岡真紀子.“大学1年生の情報リテラシー能力の分析:日吉メディアセンターの試み”.大学図書館研究.No.69, 2003, p.42〜52
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