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MediaNet≫No.11 2004≫信濃町メディアセンターにおける情報リテラシー教育―電子リソース活用講座―
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ナンバー11、2004年 目次へリンク 2004年10月1日発行
 
信濃町メディアセンターにおける情報リテラシー教育―電子リソース活用講座―
酒井 由紀子(さかい ゆきこ)
信濃町メディアセンター係主任
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1. はじめに
 信濃町メディアセンター(北里記念医学図書館,以下,本センター)では,情報リテラシー教育の一環として,図書館外の会場で講義やデモ,演習を行う新しいプログラム「電子リソース活用講座」を開始した。2003年10月から2004年7月までの10か月間で,5種類,計12セッションを実施し,のべ117名の参加者があった。
 本稿では,新プログラム導入の背景と動機,実績と評価を記録として報告する。また,積み重ねたノウハウを再利用するため,実施までの流れと手順について参加者のフィードバックを盛り込んでまとめた。それに,私見を含め今後の展開をつけ加えたい。

2. 新プログラム導入の背景と動機
 本センターでは,医学および関連領域の専門図書館として,利用者自らが,より迅速にキャンパス内のPCからフルテキストの取得や文献検索ができるよう,電子ジャーナルや各種データベースの充実に力を入れてきた。その結果,それまで論文のコピーをとりにくるためと,CD-ROMのデータベース利用のために図書館に足を運んでいた利用者の最大カテゴリーである医師や研究者の数は激減した。2003年度の学内入館者は175,332人であったが,ピーク時の2001年度と比較すると17%減である。
 電子リソース活用講座(以下,同講座)を企画したのは,1)来館しなくなった医師や研究者との接点を持ちたい,2)エンドユーザによる電子リソースの利用のしかたを図書館員が直接確認し,不足している知識やスキルを伝達したい,という2点が大きな動機であった。また,同時期に他大学でも,部局への出張講習会,図書館外でのセミナー開催など積極的な教育プログラム(参考文献1参考文献2)を始めたことも刺激となった。

3. 実績と評価
 これまでに実施した3期,5種類の講座の実績と評価は表1のとおりである。
 参加者数は講座によってばらつきはあるが,平均1セッション9.8名の参加がある。参加者の所属の割合は,講座によって異なる。たとえば2004年講座1「文献データベースサーベイコース」は,データベースの初歩とうたったことから,看護師も含む技術系職員(40%)の割合が多く,またいわゆる医局の秘書を含む事務系職員(13%)の参加が初めて目立つなど最も多様な参加者を迎えた。
 評価は参加者から毎回とっているアンケートの結果である。会場,時間,講師については「適当だったか―はい,いいえ」の二者択一で,内容評価は「理解」,「有用性」,「興味」の3つの視点から5点満点で採点してもらった指標の平均値である。

4. 実施までの流れと手順
4. 1. 年間計画
 2003年度は途中からのスタートであったが,2004年度は情報リテラシー教育の他メニューとあわせて大まかな年間スケジュールを年度初めに立てた。実績から,年度末の冬の閑散期より春や秋の研究活動が活発な時期が望ましそうであることから,この2つの時期を中心に計画している。しかし,柔軟に対応できる体制も必要だ。たとえば,2004年度は4月になってから,打ち切りになるかもしれないと言われていた医学部第3学年の選択科目,「医学文献情報概説」(参考文献3)が復活し,従来の秋学期から春学期へ変更となって実施されることになった。この春は複数講座を予定していたが,担当のレファレンススタッフが3名(2.5FTE)と限られているため,講座の方を縮小して1種類だけに絞ることとした。
4. 2. 企画
 各講座の具体的な企画を始める時期は,広報に最低3週間をかけるためと,希望の会場を確保するため,遅くとも1ヵ月半前までに始めることが望ましい。
 年間計画をもとに,最初に対象者と目標を確認する。たとえば,2003講座1の「PubMed,ScienceDirectを用いた文献検索からフルテキスト入手まで」は,すでに電子ジャーナルを利用している人を対象として,プラットフォーム内の検索やアラートなど高度な機能の使い方を伝えることを目標とした。
 次に適当な講師を決める。内部講師の場合は,レファレンスの3名が分担している。それぞれの経験や知識にあった内容がだいたい決まっている。利用者をよく理解している点では内部講師が望ましい。しかし,データベースのヴァージョンアップなども度々あり,すべてのリソースをカバーするのは難しい。また,他業務との兼ね合いでスタッフの負担を軽減したい場合など,専門の外部講師に依頼することもある。その場合は,日程も含めて具体的な交渉が企画の初期に必要である。ただし,外部講師は「リソースに関する知識が豊富すぎて初心者にはわかりにくかった」と評価された例もあるので,必ず成功するとは限らない。
 広報に備えて,内容をアピールするためのキャッチワードを用意する。わかりやすさも重要で,これまでの例では,リソースの機能や内容がわかりやすいようにデータベースやツールの名称に「引用のわかる」「文献管理の」などのことばを解説として冠している。
 日程は,参加者の便利なように,複数回で異なる曜日に同じ講座を最低2回繰り返す。なお,学内の大きな行事との調整をする。しかし,春秋を中心に各種開催されている関連学会など学外行事との調整は,実質不可能である。時間帯は,試行錯誤の結果,「17時30分開始」が参加者と時間外勤務となる担当スタッフの妥協点として落ち着いている。時間の長さは飽きない60分が望ましいが,データベースの手順を説明したり,演習を加えたりするには90分が必要である。2004年度講座1の「文献データベースサーベイコース」は60分で様々なデータベースを一気に紹介するコースだった。理解の評価が低いのは,初心者を対象としたにも関わらず詰め込みすぎたためだったようだ。
 会場は利用者に近い所として当初は病棟のカンファレンスルームなどを考えたが,施設・設備や予約状況などから,キャンパスで最も新しい建物の総合医科学研究棟会議室の利用が多い。第一会議室は,来館しない利用者には遠いはずの図書館棟の中にあるが,意外と参加者は多かった。メディアセンター=図書館のイメージがあってわかりやすかったためかもしれない。いずれも20〜30人規模の部屋で,講師と参加者が近いところでコミュニケーションを取りやすい大きさである。会議室予約はイントラシステムで可能であるが,コンピュータネットワークの手配や,液晶プロジェクタの貸し出しなどは,それぞれの担当部署の窓口で別途必要である。なお,会場は必ず下見をして情報コンセントの位置や机の配置を確認するようにしている。なお,演習つき講座は,今のところ学生向けのPCが備え付けられた自習室しか選択肢がない。
4. 3. 広報
 少なくとも3週間前には,広報を始める。広報が2週間前にずれ込んでしまった2003年度講座4の初回は,たった1名の参加で,マンツーマン指導となってしまった。広報の種類は表2のとおり,デジタルとマニュアル,pull型とpush型の様々なチャネルを利用する。講座を知った広報手段を複数回答で選ぶアンケート結果によると,興味深いことにチラシで講座開催を知った参加者の割合が30〜40%と多い。push型で手軽であるためらしい。ポスターは講座の浸透に応じて,過去3期の広報でそれぞれ9%→25%→40%と見ている参加者が増えているようである。同僚や上司から聞いたという割合も13〜29%と多く,意外と伝統的な方法の広報が受けているのがわかる。
 参加者向け広報に加えて,スタッフ向けイントラ広報も忘れてはならない。利用者がどのような教育を受けてメディアセンターを利用しているかは,全スタッフの関心事でなければならないし,利用者からの開催会場の問合せなどには,他のパブリックサービススタッフも対応できる方が望ましい。
 なお,参加のための事前予約はとっていない。気軽に参加してもらうためと,スタッフ側の予約の仕組みを維持する煩雑さを避けるため,すべて当日直接会場へ来てもらう方式である。会場がいっぱいになり次第締め切ることになっているが,参加人数が最大だった2003年講座2の初回が,ちょうど会場満席の21名だったほかは,24名程度が入れる会場に平均10名弱の参加なので問題になったことはない。
4. 4. 講義内容検討
 内部講師の場合,講義の詳細や配布資料の作成を担当スタッフが進める。説明のためのパワーポイントや配布資料は,医学部の「医学文献情報概説」(参考文献3)で作成したものや,フライヤとしてメディアセンターに備え付けてあるものを流用したり,そのまま使ったりすることもある。
4. 5. 会場設営
 当日は特に初回や初めての会場では,45分前には会場に出向き,設営を始める。図書館外での実施が多いので,持参品チェックリストを作って荷物にモレがないように準備する。
 会場では,PCや液晶プロジェクタ,スクリーンなどの機器の設置,机やいすの配置換え,会場近くへのポスター掲示,受付にサインアップシート,配布資料や参考資料などを置く設営をする。遅れての参加者や,逆に病棟からのポケベルに呼ばれて途中で退室する医師などもいるので,途中の出入りがしやすいように設営している。
4. 6. 開場から終了まで
 講師のほかに,参加者の誘導や,照明,エアコンの操作をする補助スタッフが少なくとも1名は必要である。ドアのすぐ外で躊躇する参加者も少なくないので,招じいれる役割のスタッフも必要である。タイムキーピングは講師の役割であるが,時計のない会場も多く,時間の超過に気付かない場合など,補助スタッフからの合図も有効である。
4. 7. 講義方法
 パワーポイントでの説明と,データベースなどを実演してプロジェクタで投影して見せるスタイルが一般的である。演習つきは,文献管理ソフトの使い方で1セッション(2003年度講座4)だけ試行した。演習はしてもしなくてもよいことにしておいたので,実際に演習をしていた参加者は約半数であった。
 ほかに,メディアセンターのサービスを宣伝する貴重な機会でもあるので,冒頭に紹介しても良い。2003年度の第I期のときはメールによるニュース配信が始まったところだったので,大いに広報した。
 また,事後アンケートは,評価とともに次回以降の参考になるので積極的に記入してもらっている。自分の意志で参加している受講者ばかりなので,正直で建設的な意見が書かれるため興味深く,これがたいへん役立っている。

5. 今後の展開
 これからの電子リソース活用講座であるが,まず新しいメニューに挑戦する予定である。表3は,参加者アンケートでこれからとりあげてほしいとして複数回答で挙げられ内容を多い順にリストしたものである。これまで,どちらかというとPubMedや電子ジャーナルは「すでに使っているのであたりまえ」として,正面から取り上げていなかった。しかし,アンケート結果はこれらが上位にランクされている。EBMリソースに関心が集まるのは現在の潮流だからであるが,意外と文献データベース検索全般を基礎から教えてほしいとする参加者も多いことが,アンケートの自由回答欄への記述からもわかった。ポピュラーなデータベースを,正しく学びたいという希望である。これらは次回に企画したい。また,すでに決定している新企画として,インパクトファクターをめぐる講演会も準備している。こちらはリソースやツールの使い方を越えて,研究倫理や学術コミュニケーション全体に関わる正しい知識を伝える機会である。
 次にトライアルリソースとの連携を深めることを考えている。2003年度講座4でもトライアル中のソフトと既存のソフトをあわせて紹介する企画を実施した。今度は近々の導入を検討しているデータベースの宣伝と評価のために,同種のデータベースと一緒に紹介するつもりである。
 演習つきのセッションでは前述のとおり,演習をしない参加者もいるなど成功かどうか判断ができない。しかし,希望の多い文献検索の基本を教えるには演習つきの方が,学習効果が高いので好ましいだろう。これも次回企画に取り入れたい。
 また,現在,ホームページは広報で利用するだけで,教材掲載や別のチュートリアルへのリンクなど,自己学習を支援するチャネルとなっていない。講座の教材掲載など,情報リテラシー教育の効果的な一チャネルとして連動してさらに活用していきたい。また,医学および関連領域のデータベースの使い方などの,Webサイトを作成,維持している医学図書館も少なくない。残念ながら重複した努力も見られる。将来は共有のホームページに,医学関連の電子リソース活用の手引きなどが掲載されるとシェアができてよいのではないだろうか。

6.おわりに
 2003年度秋に開始した新しい情報リテラシー教育プログラム「電子リソース活用講座」について報告した。まだ試行錯誤も多いが,柔軟で多様なニーズにこたえられるプログラムとして展開が期待される。開催のノウハウは蓄積してきたので,さらに内容の充実をはかり,プログラムを発展させたい。

参考文献
1)石井保志.“大学構内におけるアウトリーチ説明会の開催:医学図書館の情報リテラシー教育の可能性”医学図書館.Vol.50, No.2, 2003, p176-180.
2)茂出木理子.“東京大学における新しい情報サービスの戦略と展開―利用者が電子図書館に求めるもの”.情報の科学と技術.Vol.52, No.1, 2002, p47-52.
3)酒井由紀子.“基礎医学特論「医学文献情報概説」終了”.きたさとニュース.No.267, 2004, p6-8.

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