今から9年前の平成7年4月，会員数36名（男性4名，女性32名）からスタートした演劇鑑賞同好会は，平成16年4月時点では会員数47名（男性8名，女性39名）となっています。設立当初の会の目的は，主として小劇場の演劇を中心に年間10本ほどの演劇を取り上げて会員に案内し，希望者にチケットの斡旋をし，年2回程度は演劇鑑賞後，俳優・演出家・劇作家・製作者の中から適宜1〜2名を招いて懇親会の場を持ち，芝居作りの苦心談を聞きながら質疑応答を行なうこととしました。そして，会員は全塾を対象に地区や所属を超えて会員間の親睦をはかることを念頭に置きました。
この会の発端は，元三田メディアセンター事務長の小澤恒二氏，現メディアセンター本部事務長の天野善雄氏らが中心となって，春風ひとみさん（元宝塚スターで文化庁芸術祭賞受賞，紀伊國屋演劇賞・個人賞受賞，文化庁芸術祭賞大賞受賞）を応援することがきっかけでした。いつの間にか芝居好きが集まり，何かやろうということになり，小澤恒二氏の人脈で全塾から会員が集まり，会が発足致しました。同好会発足前に観たのは，先に紹介しました春風ひとみさんの「壁の中の妖精」をはじめ，堤春恵作「仮名手本ハムレット」，ミュージカル「ザ・クラブ」，別役実作「はるなつあきふゆ」，ミュージカル「二人でお茶を」（当時一世を風靡した光ゲンジの内海光司さん主演。これを見てミュージカルが嫌いになった会員もいましたが…）などがあります。
慶應義塾に就職して間もない私は，学生時代に能楽部に所属していたこと，一期一会の世界が好きで，舞台と観客との緊張した場や空間を共有できる瞬間を楽しみたいこと，今活躍している好きな役者さんたちのお芝居を生で見られること，この会をきっかけに他部署の方と知り合いになりたいという思いで，創設のメンバーに加わりました。何よりも会員のみなさんがお芝居を見ることが大好きで，中には学生時代に演劇をやっていたり，脚本を手がけたりしていた人もいて，お芝居に対して非常に造詣が深いことがわかってきました。今までこの会が続いている要因の一つだと思います。また，鑑賞後の飲み会がたまらく好きな人が多いこともこの会を盛り立てているのかもしれません。他部署の方との交流は慶應義塾を知る上でも非常に大きく，意見交換の場として，他部署の動きが見え共感を覚えたり，時に触発されたりしています。
毎年10本以上紹介するお芝居は，新劇を中心に，古典，ミュージカルと幅を広げてもきました。中小劇場でチケットの価格が5,000円くらいのものを中心に，平成15年度までに124本のお芝居を紹介し，1,450名の参加者を得ています。参加者が最も多かったお芝居は，平成8年3月2日に鑑賞した中村哮夫演出，大地真央主演の「スカーレット」で，31名の会員が参加しました。同年，「市川猿之助七月大歌舞伎」では立教大学の方々と合同で観劇を行なうこともありました。また，宇野重吉さんの「御柱」などビデオ上映を試みたこともあります。
この9年間に培ったものは，劇団や劇場とのコンタクトがうまくとれるようになり，木山事務所，加藤健一事務所，地人会，劇団円，劇団NLT，紀伊国屋ホール，紀伊国屋サザンシアター関係については，割引と座席の確保ができるようになったことです。最近では小林薫さんの事務所と直接コンタクトがとれ，入手困難だった席を確保することができました。
この会の特徴は現役とOB，OGがいることですが，最近では現役職員がだんだん忙しいポストにつき，参加が少なくなった傾向も見え，一度会の見直しを計ろうと今年4月にアンケートを実施しました。昨年は何回参加されましたか，毎月の紹介は如何でしょうか，ご覧になりたい劇団，俳優さんはいますか，今後どのような演劇鑑賞同好会を望みますか，というような質問に対して，繁忙期には紹介を控えてはという意見や，松たか子さん，日下武史さん，上川隆也さん，こまつ座，宝塚歌劇団などを観たいという会員のみなさんの声を受けて，これからも素敵なお芝居を紹介して，一緒に観てゆきたいと思います。 |
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