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ナンバー12、2005年 目次へリンク 2005年10月1日発行
特集 メディアセンターにおけるリスクマネジメント
創想館地階閲覧室における夜間無人開室
佐久間 公子(さくま きみこ)
理工学メディアセンター
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 昼間のサービスと同じでなくても夜間なりの利用のニーズに合致した図書館サービスを行えば,活発な図書館利用が期待できるのではないか。理工学メディアセンターは,従来から要望のあった夜間開室に対して,利用者にアンケートやインタビュー,時間別利用実態調査を実施し,運用経費等を含めて総合的に検討した結果,学習の場を提供するという点に注目し,自動入退館ドアが設置された創想館地階閲覧室(以下,地階閲覧室)の夜間開室を,実施することを決め,2004年1月に約1ヶ月間の試行を経て,同年4月から運用を開始した。さらに,利用者が多い春・秋学期の試験期間に対して,翌朝7時30分までの延長開室を試行し,本年度から正式に運用している。

1.夜間開室・24時間開室の概要
 夜間開室は創想館地階のみを対象としている。座席数は,42席だが,試験期には隣接するプレゼンテーションルーム(18席)を開放し,最大60席を提供している。閲覧室机には,情報コンセントと電源があり,衝立が前と左右に置かれ,学習に集中しやすい環境となっている。
 閲覧室内には,各種辞書類のほかは殆ど資料が無いが,全館開館時から継続して夜間開室を利用する場合は,貸出手続きをしていない図書資料(学位論文を含む)を持ち込み利用できる。夜間開室時専用のブックポストを設置して,未貸出の資料や貸し出した資料を返却可能にしているためである。
 夜間無人開室時は,地階の自動入退館ドアが出入口になるため,利用希望者は夜間開室開始前までに地階出入口のICカードの利用を申請する。この際に記入されたICカード申請書は夜間利用者リストとなる。
 初めての利用者には,ICカードと共に利用説明書を配布する。また,帰宅の時間が深夜になる利用者もいるので,安全に帰宅できるように掲示で注意を促している。
 利用者は,帰宅時にICカードを閲覧室内の返却ボックスに入れることになっている。万が一忘れた場合は,深夜に入れに戻らなくてもよいよう,返却期限は翌開館日の午前10時に設定している。

2.セキュリティーシステムの導入
 夜間開室を無人で行うために,地階閲覧室には,以下のような危機管理の対策が講じられている。

・自動入退館ドア
 地階閲覧室入口は,ICカードを読ませて,正規の利用者だけが入室できる。ドアが開放されたままの状態になると,警報音を発し,警備室に通報される。夜間開室の開室時刻は年間で複雑に変化するため,自動入室用のカレンダータイマーと一般の鍵(全館開館時に施錠する)を両用している。一方,地階閲覧室から1階閲覧室に通じる階段には夜間,シャッターを下ろしている。

・図書無断帯出防止装置(BDS)
 資料の無断持ち出しを防止するために,ブックディテクションシステム(BDS)を設置した。未貸出資料を持って出口ドア近くのゲートを通過すると,ゲート上部の緊急ランプが点滅し,そのまま警備員がくるまで待つことを指示した放送が流れる。
 放送と同時に,警備室内に設置したテレビドアホンの呼び出し音が鳴る。警備員はモニターテレビで確認後,直接閲覧室に行き,利用者に注意を与え,適切な処理をする。警備員は,メディアセンターで作成したBDS対応マニュアルに添って対応する。

・防犯カメラ
 夜間開室時間内の記録と不正行為の抑止を目的に,利用者からも“カメラ”と認識できる形の,防犯カメラを出入口に増設した。映像は,創想館1階事務室内のビデオレコーダーにデジタルデータで記録し,約1ヶ月間保存できる。また閲覧室内を常時見渡せるモニターカメラが,2台設置されている。

・緊急連絡システム
 緊急時には,BDS作動時に使用するテレビドアホンのスピ―カーを使って,利用者はいち早く警備員に連絡ができる。また内線電話も設置し,関係部署の連絡先を明記し,緊急時に備えている。

・警備員の対応
 夜間開室中は警備員が,定期巡回をする。災害時の避難誘導等のバックアップもある。閉室後の消灯も警備員が行う。(閲覧室が閉室時間前で無人の場合は,消灯は利用者に依頼している)
 深夜室外に出るには,警備室横の出入り口を利用する。幸い,地階閲覧室横に警備室があるため,警備員が直ぐに対応できる環境にある。

3.夜間開室の利用状況
 2004年度の1日の平均利用者数は,14.2名で,利用者は増加傾向にある。また,試験期(1月・7月)は利用者が急増する。この時期の学部3年生の利用は46%となった。8月は大学院入試があるためか比較的に利用が多く,学部4年生の利用が6割を超えた。全体では,約8割が,理工学部・理工学研究科の学生で,各学科・専攻から満遍なく利用されている。その他の学部や研究科からも広く利用されていることが,利用者の分析から判る。
 利用の多い試験期(7月12日〜31日と1月17日〜2月3日)には,24時間開室(翌朝7時30分閉室)を試行した。一日平均利用者数は,春学期が39.1名,秋学期が46.1名であった。早朝に帰宅する利用者も多く,閉室時間まで在室する利用者も平均5名いた。期間中,満席になった日は,7月は17日中6日,1月は16日中8日あり,ICカード60枚がすべて貸出されてしまい,利用が出来なかった利用者もいた。

4.利用上の問題
 通常の夜間開室時には起こらなかった問題が,24時間開室では生じた。荷物の置き放しや弁当の空き箱等がゴミ箱にあふれ,深夜戸外で大声で話す者・閲覧室の床で寝る者・閲覧室以外の場所に行く者などが現れた。早速,マナー違反の利用者に対して,「利用上の注意」の配布や掲示で注意を喚起し,利用者の自覚を促した。飲食とそれに伴うゴミに対しては,閲覧室外にベンチを設置し,ゴミ箱を増設した。また,飲食等の場所を指示した。
 これらの未然防止対策として,マナー教育の実施・利用者への啓発並びに注意の喚起・定期巡回の強化等が考えられる。予め想定されたものも予測できなかったものも,それぞれに対応基準を定め,個々の問題に迅速に対応していく必要がある。

5.おわりに
 当センターでは,全館の開館時間についても利用実態や夜間開室の現状,また諸条件を検討し,2005年4月から1年間の予定で,土曜日2時間,平日の授業期間30分,休業期間1時間ずつ,開館時間延長の試行をしている。
 夜間開室時も利用者が,様々な情報を収集できるように,インターネットや電子ジャーナル等が利用できるパソコンの設置を予定している。
 夜間無人開室・24時間開室は,各関係部署のバックアップがあってこそ,運用できている。今後もこの夜間におけるサービスを維持・充実するには,矢上キャンパスを初めとして,他関係部署との協力や連携が必要となっていくであろう。

参考文献
1)知之新谷.東海大学伊勢原図書館の24時間開館.現代の図書館.vol.37, no.4, 1999, p.234-240.
2)浩之山本.国際基督教大学の延長開館.現代の図書館.vol.37, no.4, 1999, p.241-246.

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