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ナンバー12、2005年 目次へリンク 2005年10月1日発行
 
OPAC改善の動き
―OPAC改善・検討ワーキンググループ―
関 秀行(せき ひでゆき)
三田メディアセンター課長
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1.はじめに
 慶應義塾大学メディアセンターでは,全キャンパス共通の蔵書検索システムとしてKOSMOS II-OPAC(以下,OPAC)を提供している。このOPACに対しては利用者から不満の声が寄せられることが多く,また現場スタッフの間でも機能改善への関心が高かった。この状況を受け,改善計画を検討していく場として,2004年10月に「OPAC改善・検討ワーキンググループ」(以下,WG)が組織された。WGはメディアセンター本部および各キャンパスメディアセンターの代表者で構成され,各キャンパス間の意見の相違などを議論・調整しながら改善プランを策定していくこととなった(筆者は三田メディアセンターの代表の一人としてWGに参加した)。
 本稿では,WGを中心としたOPAC改善に向けた動きについて報告する。

2.OPACの歩み
 本学においてOPACが本格的に導入されたのは,図書館業務の全面的な機械化を目的にKOSMOSが開発された1991年である。この初代KOSMOS(以下,KOSMOS I)は,OPAC検索用のインデックスが充実していて,利用者が検索語を思い思いの分かちや順番で入力して検索することが可能なシステムであったが,当時大型計算機がその負荷に耐え切れず,利用者が満足するレスポンスタイムを実現できないという致命的な問題を抱えていた。
 インターネットの普及に伴い新たな図書館システムの開発に着手し,1999年にKOSMOS IIに移行した。KOSMOS Iの反省に立って,KOSMOS IIにおいてはシステムの負荷を軽減し,OPACは高いレスポンス性能を備えることとなった。その後,OPACには大きな改変が加えられることなく,現在に至っている。

3.OPACの問題点
 本章において,WGで取り上げられた問題点および改善要望のうち主なものを列挙する。問題点の整理のために,4つの種類((1)インターフェースの問題,(2)検索方法の問題,(3)目録データの不備,(4)機能の不足)に類型化した。

OPACの問題点および改善要望

 (1)インターフェースの問題

  1. トップページの「ヘルプあり」「ヘルプなし」の選択ボタンの用途がわかりにくい。
  2. OPACで検索できない未登録資料についての説明がわかりにくい。
  3. 検索結果の一覧表示は出版年の降順であるが,昇順表示も可能にしたい。
  4. 検索結果の一覧表示における「ピックアップ機能」について,名称がわかりにくい。

 (2)検索方法の問題

  1. 同一検索項目内で複数の検索語のAND検索をする際に,“*”(アスタリスク)によって語をつながないと検索できない。
  2. 著者を個人名で探す場合「姓,名」の順で検索語を入力しないと正しい検索ができない。
  3. 著者標目リンクによる検索結果表示に人名件名標目も含まれているため,著者名検索の結果と異なる。
  4. 著者責任表示が書名インデックスに含まれているため,外国人著者名がカタカナで検索できる場合がある。

 (3)目録データの不備

  1. 旧字体などでゲタ文字(〓)になっているデータがあり,検索できない。
  2. 著者標目のデータに“揺れ”がある。
  3. コレクションもののマイクロ資料が,収録されている個別のタイトルで検索できない。
  4. 特殊言語資料が(一部を除き)検索できない。
  5. 三田メディアセンターの未登録図書をOPACで検索できるようにしたい。
  6. 日常散見されるデータの誤りをなくしたい。

 (4)機能の不足

  1. 電子ジャーナルが検索できない。
  2. 著者名典拠がないため,同名異人の自動検索(see also機能)や外国人名のカタカナ検索ができない。
  3. 製本中の雑誌について,利用が可能になる予定日がわからない。
  4. 求める資料の貸出の可否がわからない。
  5. 貸出・予約状況の確認,各種オンラインリクエストへの機能連携がない。
  6. 他大学の図書館のOPACへの横断検索ができない。
  7. オンラインチュートリアルがない。

4.改善に向けて
 WGでは,問題点を整理し,問題解決にむけての里程標を示す活動報告を2005年3月にまとめた。2005年4月以降は「OPAC改善委員会」として活動を継続しており,検討をさらに進めて具体的な改善プランを徐々に実行に移していく計画である。
 本稿は前章で列挙した個々の問題点および改善要望について言及するものではないが,今後改善・検討に臨む上でのスタンスおよび考慮すべきポイントについて述べておく。

(1)インターフェースの問題
 プログラムの修正で解決できる部分が少なくない。プログラム修正を順次実施していく。

(2)検索方法の問題
 この問題は,KOSMOS IIの開発にあたって,レスポンスタイムの向上を図るために書誌レコードの構造を簡素化した(注1)ことに因るところが大きい。したがって,単にKOSMOS Iの書誌レコード構造の復活によって改善を図ることは,大量のデータ修正・インデックスの再生成が必要なだけでなく,KOSMOS Iで直面した問題に逆戻りすることになる。KOSMOS IIで実現している高いレスポンス性能が損なわれることは避けるべきであり,「使いやすさ」と「レスポンス」の両者が成り立つような方向性を導き出す必要がある。

(3)目録データの不備
 目録データの作成・修正は一点一点手作業によらねばならないため,図書館運営予算が逼迫している状況下では,時間をかけて解決していかねばならない。たとえば,三田メディアセンターのOPACへの目録データ登録は,2004年度終了時点で蔵書全体の約75%の収録にとどまっているが,紙媒体の目録しかない資料について,過去に遡っての目録データ登録を毎年一定の規模で行っている(2004年度は約2万9千冊の登録を実施した)。また,データの品質については,日常の業務を通じて品質を保つべく努力は重ねているものの,目録データベースが厖大な規模であり(150万余の書誌レコード),完璧なデータベースを維持することが難しいのが現実である。しかしながら,目録データは図書館システムが変わっても引き継がれる根幹であり,品質の維持・向上は,長期的に見れば最も重要な課題である。

(4)機能の不足
 OPAC改善においては,既存の機能に関して,特に利用上支障が大きいものを優先的に対応すべきであると考えている。新たな追加機能については優先度,難易度を考慮した上での対応になるが,電子ジャーナルの検索機能など早期実現が見込まれるものも少なくない。

5.おわりに
 WGにおいて検討している様々な課題・追加機能について,他大学のOPACと比較する限り,本学のOPACは対応が遅れているという感は否めない。今回,可能な限りのOPAC改善を行うが,KOSMOS IIという現在の枠組みの中ではハードウェア,ソフトウェアの両方の側面において限界があるのも事実である。2008年に導入が予定されている新KOSMOS(KOSMOS III)は,OPACが現在抱えている問題の抜本的な解決に加えて,大学図書館を取り巻く情報技術の変化や利用者のニーズの多様化に対する,より大局的な視点からの施策に結びつくものでなければならない。


1)KOSMOS Iの書誌レコードは,著者名典拠リンク構造,シリーズ名典拠リンク構造を備えていたが,KOSMOS IIの書誌レコードは,標目形のみのフラットな構造になっている。

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