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ナンバー12、2005年 目次へリンク 2005年10月1日発行
 
全塾メディアセンターにおけるリソースシェアリングの進展
吉川 智江(よしかわ ちえ)
理工学メディアセンター事務長
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 全塾メディアセンターは,図書予算の伸び悩み,洋雑誌をはじめとする資料価格の高騰,書庫の狭隘化といった課題に直面する中で,予算・スペースなどの限られた資源を有効かつ効率的に活用していくため“リソースシェアリング”を推進し,分担収集,分担保存の実現に取り組んでいる。こうした活動の核となっているのが各地区職員より構成されるリソースシェアリング委員会(以下,委員会)である。前回の報告(注1)で,委員会発足の経緯,および初期の活動として,リニューアル(年間前払い)契約を行う洋雑誌の重複整理を目指し,重複タイトル毎に購読契約の継続と保存について責任をもつ「保存担当館」(以下,担当館)を指定したことが紹介された。本稿では,その後のリソースシェアリングの進展について委員会の活動を中心に報告をさせていただく。

1.雑誌保存担当館の拡充(第2期後半)
 委員会は次の目標に和雑誌の重複調整を掲げ,購入・寄贈を問わず,本学出版物を含む全ての受入れ雑誌(但し一般紀要は除く)の重複調査を行うことを決めた。和雑誌の場合,価格が総じて安価で,寄贈・交換が比較的多いこと,よく利用され安易な重複整理ができない反面,タイトル数が多く,重複率も高いため,担当館以外の地区が利用実態に則して保存年限を調整することが実際的だと判断したからである。調査の結果,和雑誌の重複は1,293タイトル,所蔵数にして3,656件と判明した。
 担当館の選定は,洋雑誌に習い予め地区に割当てた主題に依拠し,継続の可能性や,主題が複数分野に跨る場合は所蔵状況も考慮した。これで,洋雑誌827と合わせて2,120タイトル(所蔵数にして5,511件)の重複雑誌に担当館が指定されたことになる。地区別保存タイトル数は三田1,501,理工学226,信濃町169,日吉138,湘南藤沢86で,地区間の重複は,和・洋雑誌共に,三田―湘南藤沢―日吉,理工―湘南藤沢間に多く存する。これらの調査結果は2003年3月,第2期報告書としてまとめられた。
 分担保存が進めば,スペースのみならず,製本費,維持費,人件費等の間接経費を中長期にわたり削減することになる。また,担当館の指定により,それ以外の地区では保存方法・年限の見直し,さらには雑誌の購読中止や電子ジャーナルへの切り替えが容易になる。言うなれば,分担保存により,分担収集の可能性が生み出されたことになる。
 和雑誌の保存担当館データは,洋雑誌と同様に,KOHEI(雑誌管理システム)とKOSMOS II(業務全般管理システム)に登録された。こうして雑誌分担収集・保存システム(仮称)として運用体制が整い,これ以降は業務ベースで継続するため,担当は委員会から全塾雑誌担当者会議へと引き継がれた。

2.保存書庫の有効利用(第3期)
 メディアセンターの蔵書は,過去20年間,年平均10万冊ずつ増加し,2004年度末で407万冊を数えるまでになった。増加数,蔵書数共に7割前後を図書が占めている。この間,キャンパス外には自然科学系資料を主に収蔵する山中資料センター(以下,山中),人文・社会学系資料を主に収蔵する白楽サテライトライブラリー(以下,白楽)の2つの保存書庫が設置され,各地区から利用が低下した資料や溢れた資料が移管されたが,今や山中は満杯となり,全塾レベルで書庫の狭隘化は深刻な状況を迎えつつある。
 こうした背景の下,保存書庫の合理的運用を図るため,資料重複の実態を明らかにし,その解消策について検討するよう諮問を受け,2003年7月,委員会は第3期の活動を開始した。調査対象は重複が多数見込まれる「図書」(個人文庫,学位論文は除く)に定めた。まずKOSMOS IIより重複所蔵が存在する図書を抽出し,書誌ID,版表示,巻号表示データを基に重複データのグループ化を行い,重複数を個々のデータにもたせる。次に請求記号による重複の検証と平行して,これを確認するという根気のいる作業が続いた。不明な点は現物で確認した。
 その結果,重複図書は,白楽で60,909冊,山中で3,845冊,山中/白楽間で5,784冊(相互の重複はここに含む),計70,538冊,32,750タイトルに及ぶことが判明した。重複図書は白楽の調査対象約37万冊の17%,山中約6万5千冊の10%で,和書が洋書の約4倍となった。8割が2冊の重複で,最高は10冊で3タイトル見つかった。計算上では,各タイトル1冊保存にすると4万冊弱が除籍対象候補となり,2冊にすると約5千冊に減じる。
 委員会は,調査結果を検討し,重複図書についてはリソースシェアリングの観点から,各地区の主題性や役割を考慮しながら何らかの対応策を講じる必要があるとの見解に達し,保存書庫内の重複図書を解消するための方針(案)として次のような提言をまとめた。

  1. 保存書庫内の図書は各タイトル1冊を原則とする。資料的価値が高いなどの理由が明らかな場合は2冊以上の保存を認める。
  2. 図書の重複が複数のメディアセンター間で生じている場合は,原則として三田メディアセンター(以下,三田)の図書を保存する。三田を除く重複は,各地区が有する主題性を考慮して保存する図書を決定する。
  3. 除籍処理を行う場合は,書誌・所蔵データと現物をもって確認した上,資料の状態などにも留意する。
 加えて,保存書庫内の利用・運用規則の平準化や保存書庫に移管する資料は重複をできるだけ回避するため予め選別・調整するなど制度面からも整備し,最終的にはメディアセンターとして資料保存の基本方針や方向性を明確化する必要性を提起した。
 第3期の報告と提言を受けたメディアセンターは,これを単なる調査に終わらせず,可能なところから重複調整に取り組むとの判断で一致し,作業の調整と地区とのパイプ役を委員会が担うことになった。上記3方針に,三田の図書は原則除籍しないことを条件として,現在,白楽での作業を準備中である。現物確認,チェック機能を作業工程に含め,白楽内の除籍予測冊数を1万冊程度と予測している。量はともかくも,保存書庫内の重複図書調整に全塾メディアセンターで取り組むことに意義があると考えている。

3.地区メディアセンターの動きと今後の課題
 以上のように,全塾メディアセンターのリソースシェアリングは徐々に進展し成果を上げてきている。従来,各メディアセンターの蔵書は,地区の教育,研究,特性を反映する形で,緩やかな分担収集・分担保存を形成してきた。委員会が,改めてその延長上に,大まかではあるが主題を割当てて,それを基盤に全塾メディアセンターによる重複調整の取り組みが始まった。
 各地区が担当する主題や役割が明らかになり,日吉,湘南藤沢の両メディアセンターでは,利用が低下した図書や雑誌などを対象に,重複調整が進行している。湘南藤沢メディアセンターは資料の選書方針をホームページに公開した。一方,人文・社会学系の専門図書館である三田では,2004年10月,三田リソースシェアリング委員会が発足した。図書館図書の重複実態を明らかにし,その一本化を探ることを当初の目的として活動している。
 本来,各メディアセンターは選書方針やニーズに基づき蔵書を構築しており,分担収集,分担保存による共有化をどこまで進めるのか,実際には難しい問題を孕んでいる。何より図書館のもつ本来の機能・役割を維持しつつ,利用者,学部,大学等の理解と協力を仰ぐことが不可欠である。そのためには,利用・重複状況等の多様なデータを分析し,利用者の声に耳を傾け,的確な対策案を示すことが必要である。当面の課題として,リニューアル契約以外の購読洋雑誌,2万タイトルを超える非継続雑誌,継続図書などの重複調整,および雑誌保存担当館制度の追跡調査と電子ジャーナルの影響を評価する作業が残っている。特に電子媒体資料については資源共有の観点から活用の方向を探るとともに,逼迫する予算の配分・運用の検討も視野に入れ,今後も全塾メディアセンターとして,本学の研究・教育に資するに足る蔵書の構築と資料の提供を目指していきたい。


1)武正恒.義塾図書館における分担収集(保存)計画の実現.MediaNet. no.9, 2003, p.22〜23.

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