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ナンバー12、2005年 目次へリンク 2005年10月1日発行
 
南館図書室の運用開始
梁瀬 三千代(やなせ みちよ)
三田メディアセンター課長代理
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1.はじめに
 2005年4月1日に南館図書室(各名称については当時のままとする)がオープンして,早3ヶ月が過ぎた。利用者の数は日増しに増え,主たる利用者である専門職大学院生(法務研究科)をはじめ,教員,その他の大学院生,学部生に対するサービス向上を目指し,日々奮闘している。今回は準備段階から開室に至るまでの経緯と現状,これからの課題について報告したい。

2.新校舎図書室の位置づけ
 「慶應義塾21世紀グランドデザイン」の基本方針(注1)にある「知識・スキル先導」は,「総合改革プラン2002〜2006」の中で,法科専門大学院(仮称)の創設,戦略構想大学院(仮称)の創設,ビジネススクール改編などの新大学院構想の具体的な方向性を示している(注2)。法務研究科開設を機に,今後の大学院構想の新たな研究・教育の場として,三田キャンパスの国際センターと言語文化研究所があった萬來舎跡地に新校舎を建設することになった。
 三田メディアセンターは,この建物の中に図書室の設置を希望し,2002年6月24日に「リサーチライブラリ建設要望書」を各研究科委員長連名で担当理事へ提出した。要望した図書室の規模は法科大学院・戦略構想大学院を含む7研究科大学院の共同書庫となる3,927m2,90万冊収蔵のものであったが,30万冊弱収蔵可能な図書室を1階,地下3階,地下4階の一部分(合計1,687.1m2,うち書庫スペースは1,265.3m2)に設置することになった。
 三田キャンパスには既に,新館・旧館の2つの図書館があり,併せて約175万冊の収蔵能力を擁している。新校舎内に第3番目の図書室を設置できることには大きな意味があり,どのような資料を配架し,どのようなサービスを提供するかが課題となった。
 2003年2月1日,既存資料について資料再配置検討委員会が発足した。委員は三田メディアセンター所長(委員長)をはじめ,ほとんどが教員で旧蔵書構築検討委員会メンバー(文学部1名,経済学部1名,法学部1名,商学部1名)と社会学研究科1名,三田メディアセンター事務長,同利用者サービス担当課長,その他若干名の合計11名で構成され,任期は2003年2月1日〜2005年1月31日とした。
 2003年3月25日から2004年6月28日までに6回の委員会が開催され,三田メディアセンターが提案する資料の移動について,新大学院構想を見据えながら,新校舎の用途に見合った資料の配置,新館・旧館の利用状況や法務研究科資料の収蔵状況を把握した上での配置構成,移動後の新館・旧館書架の再配置などについて検討した。
 その結果,新大学院構想に照らし,新校舎(仮称)には法務研究科,法学部(法律学科・政治学科),商学部,旧分類法学関係の図書,法務研究科雑誌,記念論文集などの研究用資料を配架することとした。
 利用者に関しては,大学院学生・教員に特化せず,学部学生も利用できることを提案した。
 新校舎(仮称)の建設工事は2003年6月に始まった。設計会社はコンペで選ばれ,地下5階,地上11階,塔屋1階建てで,2005年3月竣工を目指した(注3)。図書室の他には,教室,模擬法廷教室,自習室,教員用個室,喫茶室などが併設され,屋上庭園には旧萬來舎の野口ルームを含む部分が移築された。事務部門では,国際センター,教職課程センター,学事センター専門職大学院担当(法務研究科)が入ることになった。各階図書室の平面図(縮尺率は自由に変えている)は以下のとおりである。
 1階(図1)にはカウンター,ITスペース(PC設置),閲覧席,AV編集コーナー,法務研究科購入雑誌・法務研究科用リザーブブック・参考図書を配架している。
 地下3階(図2)にはカウンター,開架書庫には法務研究科図書,法学部法律学科図書を配架,閲覧席を設置している。
 地下4階(図3)には電動の集密書庫に法学部政治学科,商学部,旧分類法学関係図書,法律関係の記念論文集を配架している。

3.新校舎図書室ワーキンググループの活動状況

3.1 新校舎図書室ワーキンググループの設置
 新校舎図書室ワーキンググループ(以下,WG)が発足するまでに新校舎図書室準備委員会が設置され,2004年10月4日,10月6日,10月14日の3回にわたって委員会が開催された。
 2004年11月1日付け内部異動発令に伴い,専任職員・嘱託職員併せて6名のスタッフが2005年4月1日以降,新校舎図書室(仮称)に勤務することが決定した。
 2004年11月17日に第1回WGミーティングを開催し,WGの名称,組織としての位置づけ,メンバー,役割分担,図書室の名称,サービス体制,予算(備品・資料の購入),建設の進捗状況,ネットワーク環境,スケジュールなどについて順次確認した。以後,2005年2月4日までの間に8回WGミーティングを行い,その間に法務研究科からの要望なども受け,開室に向けて準備を進めた。

3.2 他部署・業者との打合せ
 WGミーティングを開催すると同時に,管財部工務課,建設業者,図書室担当業者とは,2004年11月26日の建設業者の説明会を皮切りに,合同打合せを入れ10回程度打合せを行った。図書室内の広さ,配管,電源,空調,色調,材質,照明,家具・備品の選定,書架の設置,棚段数やそれらの納品時期,資料移動のタイムスケジュールなどについて,メディアセンター側の要望を伝え,実現可能性の確認を行った。ネットワーク環境,業務用・利用者用PCの設置,搭載するソフトウェアなどについてはインフォメーションテクノロジーセンター(以下,ITC)に協力を依頼した。

3.3 工事の進捗状況
 WGでは2004年12月6日と2005年3月9日,11日に関係部署も含めた見学会を行った。竣工式翌日の3月29日には一般見学会が催され583名が訪れた。次ページの写真1写真2写真3写真4(撮影:本田均)は全て1階図書室の様子である。
 2004年12月6日,第1回目の見学会は真冬の好天に恵まれ,ヘルメット着用で1階,地下3階,地下4階の順に回った。写真1は窓際の閲覧席方面である。全館ともまだ基礎工事の段階であり,柱はむき出し,工事用の配線ケーブルなどが置かれていた。
 3回目の見学会が実施された2005年3月11日には,窓際の閲覧席方面の壁紙も貼られ,カーペットが敷かれ,配線工事も終わって,照明が灯っていた。
 2005年3月15日の建物と鍵の引渡しの後,ほぼ2週間で書架,カウンター,机,椅子,ノートパソコンなどの備品が揃い,ネットワーク環境なども整った。3月29日の一般見学会当日には書架と窓際閲覧席はほぼ完成に近い状態となっていた。

3.4 建物引渡し後のタイムスケジュール
 3月16日から資料の搬送作業が始まった。既存の書庫から南館図書室1階,地下3階,地下4階へ24万冊以上の資料を移動させるというものである(注4)。
 元の書架に行き先の配置場所を示す「差し札」を入れる作業は閲覧スタッフを中心に行い,搬送作業は業者に一任した。

4.開室後の動き
 2005年2月15日,建物の名称が「南館」と決定した。図書室の名称を「南館図書室」,各フロアの名称を「1階図書室」,「地下3階図書室」,「地下4階図書室」とし,「ITスペース」や「AV編集コーナー」,「データベースエリア」などエリアの名称を確定した。サービス開始に際しては,サービス内容,業務分担,カウンターローテーションなどを考え,案内用のリーフレットを作成,準備に不備がないかを確認しながら,4月1日,開室の時を迎えた。

4.1 蔵書構成
 1階図書室は法務研究科用リザーブブックを中心に,和雑誌,洋雑誌,参考図書(法律事典・辞典類,語学辞書類)を揃えている。貸出対象の資料はない。雑誌については,三田キャンパス内での重複状況により,保存期間を決めている(原則は永久保存。新館との重複雑誌は,『判例時報』を除き3年保存)。
 地下3階図書室には,法学部予算で購入している法律の専門書(配置記号:JR)と法務研究科予算で購入している専門書(配置記号:LSA,LSB)の和書・洋書が配架されている。
 地下4階図書室には,法学部予算で購入している政治学の専門書(配置記号:PL),商学部予算で購入している経営・経済関係の専門書(配置記号:BC),図書館予算で購入している法律関係の旧分類図書(配置記号:J),法律関係の記念論文集(配置記号:JA-Fest,JB-Fest)の和書・洋書が配架されている(注5)。

4.2 サービス
 南館図書室には2つのカウンターがある。1階図書室のカウンターではレファレンスサービスとAV編集コーナーの機材使用やデータベースエリアでのトラブル対応などを行っている。ITスペースはITCが管理・運用に携わり,ホットラインも設置されている。レファレンスサービスでは1日15〜20件ほどの質問を受けるが,その多くは法務研究科院生からの質問で,毎回出される課題の一次資料の探し方,資料の所在に関わるものである。
 地下3階カウンターでは図書の貸出・返却など閲覧サービス全般を提供している。

4.3 利用状況
 初日の入室者数は462名と,まずまずの滑り出しだった。当初は法務研究科院生だけの利用が多く,4月13日までの平均は1日624名で,そのうちの約9割を占めていた。4月14日に図書室隣りにP-Net Cafeがオープンした。利用者の数も1,000名に達し,同時に学部学生の利用が多くなってきた。5月以降は学部学生にもITスペースでPCが使えることが広まり,現在6割弱が法務研究科院生,4割強が学部学生・その他の研究科院生たちとなっている。利用者数は5月の平日平均が1,028名,6月は1,150名ほどとなり,6月下旬には1,200名を越えた。また,土曜日は平均して500〜600名,日曜日は150〜160名ほどの利用者がいる。

4.4 その他
 新館と旧館という2つの既存の図書館にある資料群とは,利用の仕方や資料の選定などでいくつか異なる点があるので触れておく。
 ・自習室用配架資料
 法務研究科の予算で購入した予備校本など司法試験に必要な資料が,地下2階自習室に配架されている。資料の購入については大学院生からの推薦も可能,選定は法務研究科図書委員が行い,運用・管理は法務研究科院生図書委員に一任されている。
 ・データベース・EJの利用
 三田メディアセンターで提供しているデータベース・EJについては,南館図書室でも全て同じ環境で利用ができるようになっている。ただし,学事センターで契約しているLL(Law Library)は三田メディアセンター提供のLEX/DBの検索が可能であり,自宅からも接続可能なので,そちらを使うよう指導している。個別に発行されるUser IDとパスワードを使っての検索となる。『最高裁判所判例解説』など主要法律雑誌や大審院の判例などを収録しているLLI(Law Library Information)システムも同様の扱いとなる。
 ・資料の選定
 法務研究科の予算で購入する図書は,南館図書室のスタッフも選定して購入することができる。
 ・利用者の要求
 法務研究科の毎日,毎時限出される課題の多さは既存の学部・研究科の比ではなく,その都度,利用者から一次資料の入手方法について問合せがある。時間に追われている利用者を前に,瞬時に資料の特定と的確な回答が求められる。

5.改善点と今後の課題
 開室後3ヶ月が過ぎ,これから様々なサービス展開を行おうと考えているが,三田メディアセンター内外との調整の難しさを痛感している。
 ・施設関係
 入館ゲートや集密書庫の調整,空調の整備,環境測定,資料の配架後の再整理などは今も続いている。図書室ならびに南館全体の安全性や利便性について利用者からの要望があがっており,関係部署と協力して,改善できるものから順に対応している状況である。
 ・サービス
 一次資料の提供が必須であるため,リザーブブック申し込みの簡便化,教材作成への誘導など,学事センター,教員との連携を充実させる必要がある。
 また,データベースの提供については,学事センターが契約しているデータベースと三田メディアセンターが契約しているデータベースがあるため,今後,データベース管理者(担当教員),法務研究科図書委員会などとの調整の場を設けることが必須となっている。
 ・今後の課題
 南館図書室のように独立した施設とレファレンスサービス機能を有する新たな図書室が抱える問題点は,要員を長期的かつ安定的に確保すること,そして主たるサービス対象者である専門職大学院学生・教員への適切なサービス展開とそのような特性の周知である。新大学院構想の第一弾としてスタートした法務研究科がその通過点にあるならば,彼らが何を必要としているのかを身近に感じる今こそ,真に直結した利用者サービスが生まれると思う。


1)『塾内ニュース』付録。no.107, p.1.(2001. 9. 25).
2)Ibd. no.109, p.3.(2002. 7. 26).
3)(オンライン),入手先<https://www1.adst.keio.ac.jp/section/mita/kanzai/l
owsc/lowsc-gaiyo.htm>,(参照2005-09-01).
4)旧館と新館間の移動作業も並行して行われた。
5)資料の配置図については以下のフロアマップを参照のこと。
(オンライン),入手先<http://www.mita.lib.keio.ac.jp/service/floor/floor
.html>,(参照2005-09-01).

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