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ナンバー13、2006年 目次へリンク 2006年10月1日発行
巻頭言
メディアセンターの中期計画について
平尾 行藏(ひらお こうぞう)
メディアセンター本部事務長
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 図書館はいま大きな変動期にあります。予算が十分に手当てされ安穏に資料収集を行うことができた時代は過ぎ去りました。電子ジャーナルや雑誌記事索引データベース等の電子媒体資料は毎年値上がりし,図書予算を圧迫し続けています。これらの電子媒体資料の図書館資料としての位置付けは重みを増し,図書館に出向かなくても必要な情報や資料が入手できる範囲が拡大しています。一方仕事のあり方の面では,図書館も世間の例外でなく,派遣や業務委託への依存比率が高まっています。そして,書庫スペースとの闘いは,資料電子化の波の高まりとともに緊急の度合いを減じる可能性があるとはいえ,図書館の永遠の課題です。また,図書館は,少子化により厳しさを増している大学生き残り戦線の一端を担って,高等教育機関における人材育成の面で果たすべき役割が増しているといわれています。
 メディアセンターでは,昨年の11月から約半年をかけて,近未来の図書館の進む道について論議をたたかわせ,6月27日付けで『慶應義塾大学メディアセンター中期計画2006-2010(案)』(以下,『計画』)を作成するに至りました。
 『計画』は,「使命」と「将来像」と「中期計画2006-2010」の3つから構成されています。
 「使命」は建学の精神に遡ります。慶應義塾は2008年に創立150年を迎えますが,創設者福澤諭吉は建学の精神を次のように記しています。「慶應義塾は単に一所の学塾として自ら甘んずるを得ず。其目的は我日本国中に於ける気品の泉源,智徳の模範たらんことを期し,之を実際にしては居家,処世,立国の本旨を明にして,之を口に言ふのみにあらず,躬行実践以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり」と。21世紀の入り口に立ち,これを現代に活かした,6つの先導から成る基本方針「慶應義塾21世紀グランドデザイン」が5年前に公にされました。メディアセンターは,6つの先導のうち教育先導と学術先導に特化して,教育・研究・医療の諸活動と学習活動を支援します。
 次に,私たちは実現すべき「将来像」をはっきり意識して仕事をしているでしょうか。学術情報の世界が記録媒体の変化と通信手段の発展とともに変貌を遂げつつある時代に生きているという認識を持ち,利用者の声に耳を傾け,未来に向けて仕事をしなければなりません。私たちが掲げた将来像の一つに「図書館サービスを案内するウェブ上の窓口から,メディアセンターが提供するサービスを効率よく利用することができる」とあります。
 この将来像に対応して「中期計画2006-2010」では,「環境変化に対応した図書館サービスの実現」という目標を設定し,その一つとして「来館型と非来館型双方の図書館利用要求に応えることができる複合型のサービス基盤を,情報技術を活用して構築する」という課題を掲げました。従来,図書館サービスは出向いて受けるのが基本でしたが,それが変わりつつあります。資料収集のため出向く場合にも,予めウェブで必要な情報を得てからの方が効率的ですし,出向かなくてもウェブでの情報収集により全文データの入手等の目的が達せられる場合が増えています。紙と電子の媒体が共存することによりサービスのあり方が複雑化していますが,利用者が求めるものに簡単に行き着くよう誘導するサービス基盤をウェブ上に作りたいと考えています。
 この一つの例からもわかるように各々の目標は,相当の奥行きがあり難易度も高いことが伺われます。実現するには,具体性と行程表を伴った行動計画が必要です。それを立案するため次世代サービス検討委員会と経営改革・施設改善検討委員会を立ち上げました。そして奇しくも150年の記念の年は図書館システムがリプレースされる年に当っており,具体化された次世代サービスを盛り込む器としての次期システムを検討する委員会を別に組織して国の内外を問わず調査を行い,私たちにとって最適のシステムを導入したいと考えています。何を考えているかが外部から窺い知ることのできる図書館を目指して組織的努力を傾注してゆきます。

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