従来の図書館のホームページは,どちらかといえば組織の縦割りからの内容が多く,そのため利用者には必要な情報を探す際に,ややもすると当該情報を見つけるためにどこをクリックすればいいのかがわかりにくい場合がある。これに対して最近では,ウェブ技術を駆使して利用者がワンストップで電子ブック,電子ジャーナル,データベース,OPACなど求める電子情報資源をアクセスでき,また的確な情報提供サービスや,ナビゲーションができるポータルサイトが出現してきた。これは,利用者への非来館型サービスに対しても十分な対応ができるようにという試みである。このウェブサイトを称する言葉として「情報ポータル」という表現が使われている。ポータルとは玄関とか入口という意味のため,情報ポータルとは文字どおりに言えば,情報を探すための入口であり,機能的には最初にアクセスしてもらい,そこからネットワークで利用可能な情報資源に誘導するためのメニューである。図書館の情報ポータルの場合,前述したように利用者の立場で学習,研究などを行うために必要なサービスへのアクセスを提供するサイトのことを指している。 本特集では,この「情報ポータル」に焦点を充て企画をした。その骨格は,次のとおりである。 1)各種サービスをまとめた枠組みそのものを指す情報ポータル 2)情報ポータルを構成するその中身にあたるサービス群 3)情報ポータルのサービス群を支える基盤 最初に,1)に該当する総論的な位置づけとして,図書館ポータルについてポータル構築のためのシナリオ,ポータル構築に必要な要素などを解説する。是非,最初にここを読んでいただき,情報ポータルのイメージをつかんでもらいたい。 次に,2)に該当する情報ポータルのサービス群である。ここでは日吉メディアセンターが中心となって開発した情報リテラシーのチュートリアルであるKITIEに次ぐアウトプットの作製経過報告を,海外のチュートリアルの事例を含めて紹介する。なお,チュートリアルとは,指示に従って基本的な利用方法などをウェブ上で学べるように作られているソフトのことを指している。 最後に,3)に該当する情報ポータルの基盤である。基盤の中身については,次のような項目を取り挙げた。 ・機関リポジトリ ・認証システム ・電子ジャーナル管理 機関リポジトリについては,最初に総論的位置づけとして,海外における定義,起源,学術コミュニケーションシステムの変革としての機関リポジトリ,電子アーカイブとしての機関リポジトリ,機関リポジトリの展開と今後の大学図書館について解説する。次に,日本における機関リポジトリの経過,リポジトリ担当者からの考え方など,具体的な報告をする。 図書館サービスにおける認証システムについて,必要とされる認証機能,国内外の認証システムの現状と展望を報告する。コンテンツには契約をしている電子ジャーナル,電子ブック,データベースなどがあり,それらを利用するためには認証システムは必須である。 基盤の最後は,電子ジャーナル管理について,2005年から06年の動きを報告する。電子ジャーナル検索,ナビゲーションリンクなどのサービス基盤と契約管理基盤について,さらには電子ジャーナル以外の電子ブック,データベースを含めた電子資源管理システムへの期待についてである。 本特集によって,現時点での慶應義塾大学メディアセンターの情報ポータルに対する取り組み方,考え方を少しでも広めたいと考えている。
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