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ナンバー13、2006年 目次へリンク 2006年10月1日発行
スタッフルーム
絵本を通して
神谷 優子(かみや ゆうこ)
信濃町メディアセンター
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 息子が生まれて2年半。私の人生の中で,この間に初めて知ったことは,決して少なくありません。NHKの子供向け番組がこんなにも面白かったのかということ,300円程で市販されるミニカーの精巧さ,そして世の中に溢れる絵本の多さ…。特に絵本に関しては,「本」に携わる仕事をしてきたはずなのに,とちょっと自信をなくしてしまう程の驚きの連続でした。これまで特別な興味を持ったことがなく,また自分自身が小さい頃にそれほど絵本と親しんだ記憶もなかったため知らないことが多すぎたのかもしれません。さらに最近の,子供に対して「読み聞かせ“せねばならぬ”」という風潮には,正直,辟易したところがありました。本だろうがなんだろうが,すべて口に入れてしまうような0歳児に,一生懸命読んで聞かせたところで何か意味があるのかなあ?とちょっと斜めに構えていたのです。だからといって,世の流れにまったく背を向けるほどの勇気もなく,自治体でブックスタートなるものがあると知れば喜んで参加し,また仕事復帰以降は,毎月1,2冊の絵本を買うことを習慣としていたのですが…。
 当の息子は「じっくりお話を聞く」ことをなかなかしてくれず,勝手にページをめくっては喜び,ストーリーとは関係ない小さな車の絵を見つけては大興奮!という感じでした。そんなものかなと思いつつも,さすがに2歳近くになるにつれ「このままでいいのかしら?」と気になるようになっていました。保育園では,先生が読んでくれるのをじっと聞いていられるらしいのに,何故なのかなあと…。
 それが2歳になってすぐの頃,息子がニコニコしながら絵本を持ってきて「これ,いっしょに“みよう”〜」と言うのを聞き,ハッとさせられたことがありました。そうか,彼は彼なりに,絵本を楽しんでいたのだなと初めて気づかされたのです。もしかしたら,絵本を通じて,親と一緒に過ごす時間そのものを楽しんでくれているのかもしれない。それならそれでいいのかなと改めて思わされた一瞬でした。
 その後,息子と絵本の関係は,どんどん変化してきています。そらで覚えている文章は,まるで文字を読めるかのようにブツブツ唱えながらページをめくっているし,絵本を開くことなく呟いていることもあります。だんだんと,私が読むお話そのものも「聞いて楽しむ」ことができるようになってきた様子。もちろん,大好きな乗り物を見つければ興奮して「ママ,ほら見て!ミキサー車だよ!」と必死に教えてくれてしまうあたりは変わらないのだけれど…。でも彼が楽しいのなら,私だって楽しい。だから絵本を読む時間は,短いけれど,親子にとって大事な時間となってきています。正直なところ,何度も何度も同じ絵本を読まされることは,非常に労力を伴う作業なのですが!
 絵本を読むことで,何かを教えようとか学んで欲しいとか,そういう思いは今でもほとんどありません。私自身が,山ほどの絵本を読んでもらってはいないけれど,気づけば本が大好きになっていたし,「読書」は趣味の1つであれば十分だという思いがあるからです。それは今の息子にとっても同じことで,ミニカーだったりブロックだったりお絵描きだったり…のたくさんの「楽しいこと」の1つ,として絵本を感じていてくれればそれで十分。彼が将来,特別の本好きにならなくてもいいし,本よりサッカーの方が好き!ならそれでもいいかなと思うのです。ただ,「本」という世界の存在,「図書館という存在」の入り口だけは,親として,司書の端くれとして,ちゃんと伝えておいてあげたいなと思っています。私が楽しんできた世界の,入り口までは教えてあげたい。そこから先のことは,きっと彼の自由です。強要されたらつまらないですから!
 まだまだ「静かに読書」が難しいお年頃なので,図書館に足を向けるためには(親の側に)かなりの覚悟が必要。よって,まだあまりその機会を与えてあげられていないのがちょっと残念です。図書館という空間の魅力を一緒に感じられるようになるのはもうちょっと先かな。それもまた今後の楽しみの一つです。

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