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ナンバー14、2007年 目次へリンク 2007年10月1日発行
 
信濃町メディアセンターにおけるwalk-in user用PC導入
川崎 直子(かわさき なおこ)
信濃町メディアセンター
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1 はじめに
 慶應義塾大学信濃町メディアセンター(以下,当センター)では平成19年6月よりwalk-in user用PCを導入した。Walk-in userは広義では外来者全般を指すが,ここでは一定の条件を満たした外来者(信濃町キャンパス出身の卒業生)を指す。このサービスは,学内ネットワークのアカウントを持たない三四会員(医学部卒業生),紅梅会員(看護医療学部およびその前身校の卒業生),医学研究科修了者,そして健マネ三田会員(健康マネジメント研究科修了者)に,電子ジャーナルや電子ブック,オンラインデータベースを提供する試みである。本稿では,walk-in user用PCを導入した背景や実際の運用について報告する。

2 導入の背景
 もともと当センターは信濃町キャンパス出身の卒業生へのサービスにも力を入れており,館外貸出やレファレンスサービスなど,塾内所属者に近いレベルのサービスを提供してきた。しかし,洋雑誌を中心に資料の電子化が進んだことで,状況は大きく変化した。電子リソースの利用は契約者(慶應)に限定されるため,卒業生を含む外来者が利用できる資料が大幅に減少し,資料へのアクセシビリティが低下する結果となった。
 2004年度末時点のカレント洋雑誌(プリント版)は1,421タイトルであった。これが2005年末には1,286タイトル,2006年度末には744タイトルまで減少した。3年間で700タイトル近いプリント版洋雑誌が姿を消したことになる。2005年度以降,550タイトルが電子ジャーナルに切り替わり,塾内所属者は引き続きそれらのタイトルを利用できる環境にあるが,外来者には厳しい状況となった。
 卒業生サービスの質を維持するため,当センターは2006年の夏に,walk-in user用PCの導入を企画した。業務用ネットワークでの運用とし,実施にあたっては,メディアセンター本部システム担当と信濃町ITCの協力を得た。

3 利用契約の確認
 電子リソースの利用にあたり,まずネックになるのが利用契約である。殆どの電子リソースは,契約者にしか利用が認められておらず,誰でも自由にアクセスできるわけではない。ただし近年はwalk-in useについての利用条件を明確に示す版元が増加している。これは版元が顧客のニーズに歩み寄った結果と考えられる。まず,いくつかの大手版元の契約内容を確認した。
 生命科学分野で出版タイトル数が多いのはElsevier社である。同社はこの分野の出版業界では中心的な存在であるため,その指針は業界の動向に大きな影響を与えると考えられる。
 慶應とElsevier社が交わした最新の契約書では,ScienceDirectのauthorized user(正規ユーザー)について次のように定義している:“Full-time and part time students, faculty, staff, researchers, and independent contractors of the Subscriber affiliated with the Subscriber's locations listed on Schedule 2(the“Sites”)and individuals using computer terminals within the library facilities at the Sites permitted by the Subscriber to access the Licenced Products through the Subscriber's secure network”。前半は学生や教職員,研究員の利用についての記述だが,注目すべきは後半部分である。「契約者(慶應)の安全認証によって,館内でPCを使用してライセンス製品(ScienceDirect)へアクセスすることを認められた個人」と明記されている。また,Nature Publishing GroupやHighWire, EBSCO, Blackwell-Synergy, WileyInterscience, Springer等の主要な版元も,表現は違えど同じ趣旨の条件を提示している。また,公式ウェブサイト上でwalk-in useについて案内している版元も少なくない。

4 セキュリティ対策
 版元の契約書は,正規ユーザーの定義だけでなく,不正利用の防止に留意した内容となっている。Walk-in user用PC導入における最大の課題は,ネットワークセキュリティの保全と言える。いつ,誰が,どのようにネットワークを利用しているのか,運営側が把握できる体制が望ましい。安全なサービス提供を実現するため,当センターでは可能な限り,セキュリティ対策に努めた。
(1)利用者の身分確認
 まず,walk-in user用PCを利用できる外来者を,三四会員,紅梅会員,医学研究科修了者,健マネ三田会員に限定した。サービス利用中は,カウンターで図書利用券を預かることになっている。
 図書利用券発行の際は免許証などで本人確認を行い,住所など連絡先の届け出を義務付けている。また医学研究者は頻繁に所属が変わる傾向があるため,利用券の有効期限更新の際にも改めて所属・連絡先を確認している。「図書利用券を有する利用者=身元が確かで連絡がつく利用者」という理解のもと,サービスを提供することにした。図書館としては,なるべく多くの利用者に便宜を図りたいところではあるが,運用と実際の需要を考えると,上記グループまでの公開が現実的と考えた。
(2)PC機能の制限
 Walk-in user用PCは電子リソース専用機として導入しているため,無関係なウェブサイトの利用は極力制限することが望ましい。ウイルス感染などのリスクを避けるためにも,自由自在にウェブサイトを行き来できないよう,何らかの工夫が必要となった。そこで本部システム担当に,PCの機能制限について検討していただき,双方で相談の結果,下記のとおり機能制限を実施した。作業は本部システム担当が行った:
 a ブラウザの機能制限(ツールバー非表示など)
 b 画面表示の操作制限(プログラム非表示,右クリック操作の制限など)
 c インストールソフトの制限(Acrobat Readerのみ導入)
 d 外部ストレージの利用制限
 イメージとしてはOPAC端末に近い。リンクを辿って他のサイトに移動することは可能だが,任意のアドレスを指定することはできない。ツールバーもなく,右クリックも機能しないため,一般のPCのような操作は不可である。また,大量ダウンロードを防止するため,USBメモリなどにデータを保存できないよう設定した。
(3)サービスの運用
 ログイン・ログアウトはスタッフが代行することになっている。ログインするとまず,当センターの新しいホームページが表示される。7月にリリースされたリニューアル版のトップページをカスタマイズしたもので,Google検索窓などが削除されている。新デザインでは電子リソースメニューがトップページに配置され,電子リソースへのアクセシビリティを高めたつくりになっている。利用時間は1時間を基本とし,順番待ちの利用者がいなければ延長可としている。三四会員など卒業生は1時間\1,000(プリント代込み),塾内所属者はプリント代の実費のみの請求となる。PC直結のプリンターは用意せず,代わりにカウンター内の事務用プリンターに出力するよう設定した。利用者はプリントアウトをカウンターで受け取ることになる。間にスタッフが入ることで,違法な大量印刷を防止する狙いがある。

5 サービスを開始して
 Walk-in user用PCは機能に制限が多いが,それでもひとつの道が開けたことには変わりない。今まで電子リソースを利用できなかった層には好評で,改めてwalk-in user用PCの必要性を感じる次第である。三四会員・紅梅会員への広報を通じて,今後はますます利用が広がることを期待している。
 最後に,本サービスの導入にあたり,多大な協力をいただいたメディアセンター本部,そして貴重な助言をいただいた信濃町ITCに感謝の意を表する。

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