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ナンバー14、2007年 目次へリンク 2007年10月1日発行
 
理工学メディアセンターの企画展示
新保 佳子(しんぼ かこ)
理工学メディアセンター
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1 はじめに
 理工学メディアセンター(以下,当センター)では,理工学関連の様々なテーマで年に数回,企画展示を行なっている。1988, 89, 98年頃に貴重書展示などの展示会が開催されていたが,その後2003年に再開され,現在に至っている。本稿では,2003年から2007年7月末の時点で第10回を数えるこれまでの展示を振り返りつつ,その概要を報告する。

2 目的と運営
 この企画展示の目的は,他キャンパスと交流の少ない矢上キャンパスの理工学部専門課程の学生に,理工学関連の話題を普段の研究とは少々異なる視点で提供し,幅広い教養を身につける機会を提供することである。
 テーマは理工学または矢上キャンパスに関係するものを選び,そのテーマに沿った当館所蔵資料や塾内他館所蔵資料を展示する。所蔵資料の紹介により資料の利用促進を図ること,また,貴重書などの古い資料に接することで,学生各々が現在取り組んでいる最先端の研究が先人の努力と知恵の積み重ねから成っているという歴史の重みを実感してもらうことを期待している。
 企画および作業は,当センターの図書担当を中心にその都度テーマに興味を持つスタッフが加わり,2〜4名で行っている。

3 これまでの企画展示
(1)2003年度
 a 第1回:「中学・高等学校用教科書の世界〜理工学教育は今!〜」2003年5月20日〜6月19日
 中学・高校教科書は当センターのユニークなコレクションである。2002年4月より新学習指導要領が施行されたことを機に,教科書から見た中学・高等学校教育課程の変化,および大学で利用される書籍への影響という視点で展示を行った。
 b 第2回:「有人宇宙飛行〜宇宙工学への招待〜」2003年8月19日〜9月30日
 前年度に理工学部で開催された宇宙と科学技術をテーマとしたシンポジウムに,理工学部出身の星出彰彦氏ほか日本人宇宙飛行士が参加した。これにちなみ,塾員の宇宙飛行士向井千秋氏の搭乗記念で慶應義塾に寄贈された品々や関連書籍等を展示した。夏休みに開催される日吉・矢上地区のオープンキャンパスにあわせて企画された。
 c 第3回:「数学の世界〜ガウスとブール〜」2004年1月15日〜1月28日
 18〜19世紀の数学者ガウスとブールの著書を取り上げ,19世紀前半の数学および近代理工学への影響をテーマに企画を行った。三田メディアセンターの貴重書を借用するにあたり,申込や資料の受け渡しなどについて取り決め,調湿剤や展示用具の購入など展示環境の整備も行った。
(2)2004年度
 a 第4回:「アイザック・ニュートン―ニュートンを今に伝えるもの―」2005年1月13日〜1月26日
 有名なニュートンのリンゴの木の子孫が矢上キャンパスに植樹されていることを話題とするとともに,当初はニュートンの著作を展示することを企画したが,他の展示会で使用中であったため,彼の著作に解説をつけて出版した2人の科学者の著書を紹介し,ニュートンの思想がどのように社会に広まっていったかという視点で企画した。
 b 第5回:「アインシュタイン奇跡の年から100周年―世界物理年―」2005年3月18日〜6月30日
 2005年は,アインシュタインが3大論文を発表した「奇跡の年」から100年を経て「世界物理年」とされていた。これを機に,彼の雑誌初出論文のコピー,関連書籍,1922年に彼が来塾して行った講演の記事や写真などを収集し紹介した。
(3)2005年度
 a 第6回:「ドイツが生んだ科学者たち:慶應義塾とドイツ」2005年11月29日〜12月12日
 2005年は「日本におけるドイツ年」とされ,慶應義塾全体においても「ドイツ年@慶應義塾」と称して大小様々な催しが行われていた。これにちなみ,ドイツ人科学者2人(ライプニッツとヘルムホルツ)について,その著作を展示し,科学史における業績を概観した。また,慶應義塾創設当初および現在のドイツとの交流についても簡単に紹介を行った。
 b 第7回:「写真で辿る理工学部の歴史」2006年3月23日〜6月17日
 明治以来長い間,慶應義塾の工学部設置は財政等の理由から実現できずにいた。1939年藤原工業大学の創立を経て念願の義塾工学部が設置され,戦争後の度々の移転から現在の矢上キャンパスに至る理工学部の歴史を,写真を中心に辿った企画である。
 2008年の慶應義塾創立150年および2010年理工学部創立70周年を睨み,2003年頃からこの企画の構想が始まった。前準備として各種刊行物に掲載されている理工学部もしくは当センター関連記事を抜き出しリストを作成した。
 写真を多用した視覚に訴える展示を行なうため,卒業アルバムおよび理工学部総務課所蔵の大量の写真から,なるべく年代ごとの特徴を持った写真を34枚選び,編年順にまとめた。また,キャンパスの移転の軌跡を書き込んだ地図を作成した。
(4)2006年度
 a オープンキャンパス2006:「教科書に見る近代の科学者」2006年8月18日〜8月23日
 オープンキャンパスにあわせて,高校での学習内容に関連する科学者としてオームとブールを取り上げ,小展示を行った。
 b 第8回:「福澤諭吉著『訓蒙 窮理図解』:日本初の科学入門書を見る」2006年11月27日〜12月20日
 「教育の方針は数理と独立」と述べ,理工学教育の重要性を認識していた福澤が刊行した,日本で最初の科学入門書『訓蒙 窮理図解』を中心に,福澤の科学に対する考えや当時の義塾での科学教育を概観した。著書はどこかユーモラスな挿絵・図版と福澤自身の説明文から構成されており,この魅力を伝えるために11枚の図版と説明文を選び出しパネルに貼りつけた。その他,自然科学に対する福澤の考えが述べられている著作や,科学科目が豊富に見られる初期の慶應義塾時間割などを紹介した。
 c 第9回:「写真で辿る理工学部の歴史」2007年3月14日〜4月27日
 前年に行い好評だったものを,年度始めに新3年生を意識して再度展示した。
(5)2007年度
 a 第10回:「オイラーとSUDOKU(数独)」2007年6月23日〜7月21日
 世界中に広まっているパズルSUDOKU(数独)のルーツは,18世紀のスイスの数学者レオンハルト・オイラーが研究していた方陣研究(1782年論文発表)にあるとされている。地元スイスでは2007年にオイラー生誕300年の記念イベントを開催しており,これを機に企画を行った。オイラーの3大著作のうち2点を展示し,数独のもととなったオイラーの論文や,化学式で構成される風変わりなSUDOKUなども紹介した。

4 おわりに
 主題範囲が比較的限られた中で企画を行っているが,こうして過去10回を振り返ると,身近な話題,社会情勢,歴史など,様々なテーマを扱っていることがわかる。
 利用者の反応という点では,第7, 9回「写真で辿る理工学部の歴史」の際には,特に教員から永久展示の希望や同窓会で紹介したいなど好意的感想を多くいただいた。他の企画の際にもスタッフが声をかけられる場面が幾度かあり,企画展示の実施は利用者と図書館とを結びつける一つの手段となっている。
 なお,各展示の詳細は次のURLを参照いただきたい。http://www.scitech.lib.keio.ac.jp/kikaku/index.html
 最後に,所蔵資料の借用にあたってご協力いただいた三田メディアセンターにはこの場を借りてお礼を申し上げる。

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