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ナンバー14、2007年 目次へリンク 2007年10月1日発行
スタッフルーム
池田文庫と宝塚
角谷 佳未(すみや よしみ)
湘南藤沢メディアセンター
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 光り輝くミラーボールが暗い客席を照らし,舞台いっぱいの大階段からはまばゆい衣装の波,波,波。そして一際大きな羽根飾りを背負ったスターが最後に階段を下りてくる,それは至福の瞬間。宝塚をご覧になったことのある方は,好き嫌いに関わらず,あのフィナーレの豪華絢爛さに息をのんだのではないだろうか。今回は1頁丸々宝塚歌劇のご紹介…をしたいのはこらえ,図書館つながりで池田文庫という施設をご紹介したい。
 名称からは華やかな宝塚の舞台と対照的な印象をうけるが,池田文庫は国内有数の演劇図書館だ。宝塚関連の図書館なら公演プログラムやポスター,せいぜい演劇雑誌があるくらいだろうと想像するなかれ。池田文庫では宝塚関連の資料はもちろん,歌舞伎の原資料や阪急電鉄関連の資料を所蔵しており,特に歌舞伎の役者絵コレクションは世界的にも評判が高い。
 宝塚歌劇団が阪急電鉄株式会社に所属するように,池田文庫は同じ阪急グループ傘下にある阪急学園が運営しており,その発祥は明治44(1911)年までさかのぼる。阪急グループ創始者であり慶應義塾卒業生でもある小林一三氏はこの年,阪急電鉄の乗客誘致のため,宝塚線終点の宝塚駅付近に宝塚新温泉(これが今はなき宝塚ファミリーランドとなる)という温泉娯楽施設を開き,その中に雑誌や新聞を自由に閲覧できる図書室を設けた。その後,温泉の呼び物として宝塚少女歌劇がプールを改装した舞台で始まると,歌劇上演のための資料もこの図書館で収集するようになる。さらに昭和7(1932)年,「宝塚文芸図書館」として演劇の専門図書館を目指してからは,宝塚だけでなく歌舞伎や演劇に関する資料を精力的に収集するようになった。これが今の池田文庫のルーツであり,現在では書籍雑誌約20万冊を所蔵し,「東の早大演博(演劇博物館),西の池田文庫」といわれるほど演劇分野の代表的な図書館となった。
 池田文庫が誇る歌舞伎資料の一つ「役者絵」とは,歌舞伎俳優を浮世絵で描いた,今でいうブロマイドのようなものだ。中でも,関西で描かれた上方絵は多くが海外に流出しているため,国内では数少ないコレクションだという。江戸時代の女性たちも新作の役者絵を買っては部屋に飾っていたのかどうか…。他にも,歌舞伎や浄瑠璃の公演内容を宣伝する,今でいうポスター・パンフレットにあたる「芝居番付」や,脚本,せりふの書き抜き帳,さらには芝居小屋の正面入り口に掲げられる「絵看板」も所蔵している。外気にさらされた看板の保存管理は非常に難しいだろうが,当時のショービジネスの広報を知ることができる貴重なコレクションだろう。
 宝塚歌劇ではいわゆる外国風のレビューやショーだけでなく,「和もの」と呼ばれる日本を舞台にしたショーや芝居も年に数本演じられている。例えば着物姿に扇子をもってオーケストラナイズされた「さくらさくら」で群舞を踊ることもあれば,歌舞伎役者が主人公の芝居では劇中劇の松の廊下で見得を切ることもある。近年,上演回数は減ってきているものの,年に1度は和ものの芝居やショーで日本の伝統文化を取り入れた演目を上演しようという歌劇団の姿勢は池田文庫のコレクションに通じるような気がする。
 しかし宝塚ファンが嬉しいのは,なんといっても宝塚関係資料の充実だ。現在,館内では歴代公演ポスターの検索ができるようになっており,おばあさんになった自分が数十年前に初めてファンになったタカラジェンヌのポスターなぞを検索して顔を緩める姿をありありと想像できてしまう。
 池田文庫は阪急宝塚駅またはJR大阪駅から20分ほどの池田駅にある。宝塚大劇場とは離れているため幕開きまでのちょっとした時間に,とはいかないが,大阪・兵庫方面へお出かけの際には,宝塚観劇ともども,訪ねてみてはいかがだろう。私も次回の遠征では出待ち・入待ちを1回おあずけして訪ねてみようか。いや,1時間待ったとて手紙を渡せる瞬間は替えがたい。私が池田文庫に行けるのはいつになるだろう。

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