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ナンバー15、2008年 目次へリンク 2008年10月1日発行
スタッフルーム
新宿御苑
佐村 昭子(さむら あきこ)
信濃町メディアセンター
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 信濃町メディアセンターの裏,外苑西通りを挟んで新宿御苑の緑は広がっています。一番近い門はいつも閉まっているので,お昼休みにちょっと散歩という訳にいかないのが残念です。広さ18万坪の国民公園で,一回りすると約7,000歩です。四季を通じて楽しめる公園です。桜は10月から十月桜,冬桜。早春の桜として種々の寒桜。続いて盛春の桜として染井吉野の咲く頃は大勢の人でにぎわいます。
 花の下ならぬ所に陣とりて
 過去未来万朶の花の中に在り
 晩春の桜の種類も豊富で,とりどりの八重桜がぼってりと妖艶に苑内をかざります。緑色のウコン,御衣黄もあります。
 蜘蛛の巣のあまたの落花留めたり
 濃く淡き花の中なる浅緑
 地を染めて落花の色となり了す
 4月下旬かすみ桜が咲く頃は葉桜が美しい。
 行きて見ん苑一番の遅桜
 葉桜や漆の褪せし万年筆
 梅林が満開の頃お茶室でお抹茶とお菓子はいかが? 寒桜の終わる頃には,樹齢130年の白木蓮が咲きます。
 白木蓮の吹きもまれたる千の花
 白木蓮に上中下段ありにけり
 咲き満ちて早や錆滲む白木蓮
 5月下旬ともなると薔薇園に香,色,形さまざまな薔薇が咲き乱れる。
 薔薇咲いて高層ビルを近づくる
 園芸講座では,薔薇の栽培方法の講座があります。紅葉山の新緑とかぐわしい風,松葉の散り敷いた道。ラクウショウの大樹の若葉とにょきにょき生えた気根も珍しい。母と子の森の雑木林の小径も緑のシャワーを浴びるよう。私の樹と決めた鈴懸の大樹にも,いつも挨拶をする。
 尺取を帽子の縁に連れてきし
 そして梅雨。
 池の面の変幻自在男梅雨
 ひとときを父の墓前に沖縄忌
 梅雨が明ければ夏本番。日本庭園は緑一色。緑という色がこんなに豊富で美しいことに驚きます。
 濃く淡く緑重ねて夏たつ日
 万華鏡ふと慾し夏の木漏れ日に
 やがて秋。
 菊花展の準備は早々と始まる。青竹を組んだ上置も面白い。
 肥後菊の寸分の乱れなかりけり
 大菊の巻き込む渦の緩みなし
 白菊や父に抱かれし記憶なく
 菊の講座では,菊花壇の説明と菊の栽培場の見学もあります。
 赤とんぼの群れの中にいるのも楽しい。
 きらきらと鋼の羽根の赤とんぼ
 桜の季節,苑内は桜色一色になるが,秋もまた,銀杏の黄色と紅葉の赤で美しい。
 銀杏黄葉隙間隙間の青き空
 母の手にどんぐり二つ三つのせ
 木の実落つ小さな帽子にもひとつ
 晩秋の乾きし音の中に在り
 冬は空も水も美しい。日溜りの枯れ芝に寝っころがって青い空だけを見ているのは至福の時間です。
 冬晴れや空てふ文字のうかんむり
 冬晴れや鋼の空と鋼の水
 漣を追ふ煌きや春の水
 煌きはいつも鋭角春の水
 せんかたなく残る鴨とはなりにけり
 寒風に白骨さらすプラタナス
 雪が降ればいつもと違う顔がある。写真を撮っている人が多い。
 彷徨はん雪は鵞毛となりたれば
 温室は現在建て替え中。第2・第4土曜日はボランティアによる園内の案内,写真講座,野鳥観察会,樹木観察会,緑フェスタ,薪能等々もあります。
 休日の気分転換に新宿御苑のご利用をお勧めします。

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