研究会報告


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開会・挨拶

[入江]これから第5回の研究会を始めたいと思います。前回、関西での開催から時間が経ってないこともあり、準備不足のところもありますが、すみません、よろしくお願いいたします。ただ今回森山さんに講演をお願いしておりまして、森山さんのご都合もあり今日になりました。どうしてもお願いをしたかったので今日にさせていただきました。それでは始めに今回会場をご提供していただきました、明治大学図書館の庶務課長の大野様よりご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

[大野]ご紹介いただきました明治大学図書館の大野でございます。本日は遠くからの方もいらっしゃるようで、おいでいただきましてありがとうございます。心より歓迎申し上げたいと思います。既に図書館の見学をされた方もいるということですが、ちょっと宣伝させていただきますと、現場でも聞いたかと思いますが、2001年の3月に明治大学の中央図書館が開館いたしまして、今年の日本図書館協会の建築賞というものを受賞しました。この建築賞は、建物の良さということに加えて、サービスの良さというものが評価されたというような言葉がありまして、大変私どもも喜んでおります。建築設計に関わった者としましては、ああすればよかった、こうすればよかったというところが山のようにありまして、忸怩たる思いはしているんですけれども、受賞を機に原点にかえって、またもう一度システムの構築とか、図書館内の組織をうまくやって、サービスの向上に務めたいと思っているところであります。 いろいろご批判、ご意見もあるでしょうが、どんどん寄せていただいて、また参考にさせていただきたいと思っております。本日はライブラリーシステム研究会ということで、各界各層の方々がお集まりですけれども、ライブラリーシステムというのは、標準化・規則化そういうことを研究なさっているんだというふうに聞いております。こういう時代ですから、我々もグローバルな状況に身を置いているわけですけれども、そういう意味では、標準化とか規則というものは、非常に重要であると思っております。みなさんの活動に期待が大きいわけです。けれども、図書館は、みなさんのところもそうかもしれませんが、私どももリストラ、人を減らしてサービスをよくしろとか、そういう二律背反的な要求を突きつけられておるわけですけれども、そういう時こそ標準化が生きてくるのではないかと思っております。皆様の研究成果に対する期待は、ますます大きいのじゃないかと思っているところであります。皆様方のますますの研究の成果を発揮していただいて、我々の業務にいかしていただくような成果を提示していただければと思っております。みなさまの活躍を期待しております。簡単ですが、以上でご挨拶とさせていただきます。

[入江]どうもありがとうございます。それでは今日のメインの講演であります森山さんにダブリンコアとZ39.50によるネットワーク基盤の標準化ということで、ご講演をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

講演 『Dublin CoreとZ39.50によるネットワーク基盤の標準化』

[森山]本日は、発表の機会を与えていただきましてどうもありがとうございました。最初に、先日11月15日から17日まで、岡山で開催された全国マルチメディア祭に、電子図書館の試みとして出展したデジタル岡山大百科のデモ版を紹介します。公共図書館の伝統的役割に、郷土資料の収集、保存、提供があります。今日では、資料の範囲にデジタルコンテンツが位置付けられるようになってきています。そうした要請に応えるべく、デジタル岡山大百科のデジタルコンテンツは、郷土岡山をテーマとしています。まず、静止画コンテンツから紹介します。岡山にカバヤ食品というお菓子の会社があり、戦後間もなく、キャラメルに入っている当たり券を集めたら児童書に引き換える企画を行いました。一連の児童書はカバヤ文庫と呼ばれ、岡山から全国に広まりました。50歳以上の方なら見覚えがあるかもしれません。具体的にデジタル化された「しらゆきひめ」を、ページめくりができる高精細画像閲覧ソフトDjVuで見ると、最後に当たり券の種類が書いてあります。大当たりが10点、カバが8点等、50点になったら引き替えができます。静止画ではほかに、超高精細画像閲覧ソフトのGigaViewを活用しています。岡山藩主池田家に伝えられた池田家文庫絵図をデジタル化しており、ギガ単位の大容量画像でも拡大縮小が自由にできます。岡山大学附属図書館が所蔵していますが、岡山大学附属図書館、岡山県総合文化センター、岡山市で、デジタルコンテンツの作成、配信を共同で行おうとしております。動画コンテンツでは、県民の方からお寄せいただいた県民提供情報の中に、Macromedia Flash Playerを利用した民話のページがあります。以上の蓄積データについて、地図から選択することができます。たとえば、県内の地図から、東粟倉村を選択し、観光イベント情報をReal Playerで再生することができます。同様に、年表から選択することもできます。こうした多様なデータ形式、内容のデータが、キーワード、年表、地図等から検索できるのは、それぞれのデジタルコンテンツに対応したメタデータを作成しているからです。メタデータは、Dublin Coreの形式に準拠して作成しております。以上簡単にご説明したデジタル岡山大百科については、メタデータでの多様な検索機能を除いて、岡山県総合文化センターのサイト(http://www.libnet.pref.okayama.jp/)で公開しています。メタデータでの多様な検索機能については、来年度以降のシステム開発後、公開します。

本日お話する内容としては、第1に、デジタル岡山大百科構想の概要、第2に、従来の電子図書館システムの問題、第3に、今何が必要であるかということ、第4に、従来の電子図書館システムの問題の克服方法、第5に、標準化の意義、第6に、技術的課題についてお話します。最後に、図書館ベンダー12社からご回答をいただいたアンケート集計結果についてお話します。

最初に、デジタル岡山大百科構想の概要についてお話します。2004年中に新館開館する新県立図書館では、先ほどご紹介したように、内部に蓄積されたメタデータ、目録、さらに他館,他機関のデータベースを取捨選択しながら横断検索し、郷土岡山のことを百科事典的に知ることができる仕組み、ネットワーク基盤の構築を構想しています。この構想をデジタル岡山大百科構想と呼んでおります。内容としては、第1に、資料の所在を知るための目録の横断検索システム、第2に、資料の本文やコンテンツの内容まで閲覧できる郷土情報ネットワーク、第3に、レファレンス事例集としてのレファレンスデータベースを構想しています。メタデータと目録ということでちょっと紛らわしいですが、究極的には以上の3つの柱を取捨選択しながら統合横断検索する機能も必要となります。構想の背景には、平成8年以降岡山県が全国に先駆けて推進してきた情報通信基盤の岡山情報ハイウェイの有効利用があります。横断検索の考え方は、岡山情報ハイウェイという分散環境を最大限生かすところから来ております。岡山県は県内図書館の目録の横断検索に逸早く取り組みましたが、2002年11月現在、12府県において、公共図書館を主な対象とした目録の横断検索の試みが県域レベルで行われています。

以上の構想は、従来の電子図書館システムの問題を踏まえたものです。ここに挙げたのは当館のWebページですが、従来の電子図書館システムは、一覧表から選ぶと本文・内容がでてくるものでした。つまり、検索機能なしにデジタルコンテンツを展開するというもので、電子化点数が少ないうちはこれでも良いのですが、点数が多くなると有効性が減少するという問題があります。従来こうした対応しかできなかった背景には、デジタルコンテンツの整理基準、つまり目録規則に相当するものが未確立であったということが挙げられます。問題点の2番目としては、システムに検索機能が備わっていたとしても、自己完結・縦割り構造であること、つまり自館のデータベースしか検索対象にならず、横断検索が困難で、エンドユーザとしては各システムを個別訪問しなくてはならず、情報共有度が低いという点が挙げられます。これは汎用的な横断検索方式が未確立だったという背景があると思います。これは、システム間連携の困難という、古くて新しい問題ともつながります。異なるシステム同士の連携毎に解析、翻訳、変換といった作業が必要であると、SEさんにその都度依頼しなければなりません。今の公共図書館の横断検索システムというのは基本的にはこのようにそれぞれのOPACを解析、翻訳、変換しながら、横断検索システムのプログラムを作っていくというのが大多数です。しかし、センターとなる館、多くは県立図書館では、参加館が増える都度、各OPACの仕様が変わる都度、お金を払ってプログラム改造を依頼しなければならないという問題があります。では、こうした横断検索というものをYahooやGoogle等のWeb検索エンジンに任せて大丈夫かということになると、第1に、タイトル、主題、発信者等の項目別の検索が不可能で、検索基準が大雑把であるという問題があります。第2に、データベース内の個別データを検索対象としないという点が挙げられます。第3に、公共図書館で公開する情報というのは家庭や学校で見ていただくことが多いのにもかかわらず、Web検索エンジンでは家庭や学校での閲覧にふさわしくない内容、品質のページも検索対象になっているため、学校の授業等では使いにくいということも挙げられます。さて、従来の電子図書館システムの問題点の3番目としては、デジタルコンテンツの継続蓄積が困難であるという点が挙げられます。電子図書館の試みはいろいろな図書館で目玉として打ち上げられていますが、ごく一部の職員しか携わらないとか、人手が足りないということで、やり始めたはいいが、継続しにくいという実状があります。夢物語のように打ち上げられるのはいいけれども、人手、予算等の裏付けがないので継続がきかないという現実です。費用にしても助成金頼みで、公共図書館の充実した電子図書館システムのほとんどすべてには助成金が絡んでいます。ただし、助成金の切れ目が仕事の切れ目になりやすいという現実があります。また、従来の業務に電子図書館といった業務を上乗せできるかというとなかなか困難で、小さい館ではなおさらです。すなわち、片手間、助成金頼みで、単館での自前主義を貫くことには限界があります。

それでは、今、何が必要かということになりますが、第1に、品質の高いデジタルコンテンツに関する情報を効率的に蓄積する仕組み、第2に、膨大な蓄積情報を横断的に取捨選択する仕組みが必要だと考えられます。それにはデータベース化や、データベース間の円滑な連携が必要になってくると思います。まず、データベースを標準化するため、整理基準の確立が必要です。デジタルコンテンツの中身までたどり着く検索システムを作っていくためにはメタデータを作ることが必要です。整理基準すなわちメタデータ作成ルールの確立が求められます。メタデータについては、今最も標準に近いというDublin Core形式で作るということが考えられます。15項目程度の限定された項目で単純化されたDublin Coreの本来の考え方というのは、専門家としての司書だけでなく、素人でも取り組めるようにという参加型の発想があります。そこで、一般県民、あるいは行政職員に入力方法を説明して、自分で作成したコンテンツについての情報を入力してもらうことを考えております。実際、全国マルチメディア祭の前に、先ほどのリアルプレイヤーの動画情報について、35件程度、本庁の職員に登録してもらいました。Webページからコピーアンドペーストしながら、1件について5、6分くらいで入力できたということです。全体で2、3時間かけて登録してもらいました。こうした試みを、全庁的な取り組み、住民との連携、県全体の取り組みとして取り組んでいく、その結果蓄積された情報をみんなで共有するということを構想しております。考え方としては、一次情報にあたるデジタルコンテンツを各自がWeb公開し、二次情報のメタデータについて庁内データベースや図書館のデータベースにWeb登録してもらう、そして全県体制で郷土情報を蓄積していくといった考え方です。つまり、図書館を核としながらも、図書館に止まらない試みです。図書館以外の外部の力を借りる意義としては、電子図書館といっても図書館のデジタルコンテンツは著作権の制約で過去の古文書等が多いのに対し、行政情報等には現在の実用情報が多いことが挙げられます。反面、セキュリティや品質の保持の問題があります。ただし、デジタルコンテンツを直接アップロードするのではなく、リンクするためのURLの記述だけならある程度セキュリティを保持しやすいと考えられます。品質の保持についても問題となり、評価委員会的なものを間に置くことが考えられます。内部の職員のみで厳密に書誌コントロールを行うのでなく、部外者が加わると品質は当然落ちます。それについては、不特定多数に登録してもらうというよりは、研修等を施して特派員委嘱するという形態である程度防げると考えられます。今必要なものの2番目に、膨大な蓄積情報を横断的に取捨選択する仕組みを挙げました。具体的には国際標準規格のZ39.50です。Z39.50はもともとOPACの横断検索から始まりました。目録の横断検索方式にはいくつかの方式がありますが、これまで石川県と岡山県の2県では、NECさんの考えられた検索プロトコルを各館OPACに実装することをお願いし、運営してきました。その結果大きな成果を挙げてきました。ただし、次に挙げるような横断検索方式を巡る問題が浮上してきており、横断検索の技術基盤として、Z39.50への移行を考えております。第1に、公共図書館は、そうした検索プロトコルを実装してくれるが、公共図書館の枠組みから外れる大学図書館では対応してくれず、Z39.50への対応が進むこと。第2に、図書館パッケージをカスタマイズしない理念のベンダーには、対応してもらえないこと。ただし、最後のアンケート集計結果で挙げますが、そうしたベンダーについてもZ39.50実装OPACの図書館パッケージへのバンドルが進んでいること。第3に、現行横断検索の枠組みでは、新規参加館がOPAC立ち上げの際、対応したクライアント側での設定をSEに依頼して、その都度プログラム作成に、費用、手間、時間を要しているという実態があります。以上を踏まえ、OPACの横断検索については、Z39.50に準拠したものへの移行を考えております。ただし、各館のシステムリース期間の多くは5年間というように決まっていますので、一斉に全館に対応していただくことは無理なことから、システム更新期に対応していただくということになります。したがって、検索プロトコルの移行には、数年間の過渡期の時期が続きます。つまり、従来のプロトコルとZ39.50プロトコルがしばらく並立し、完全な移行には数年かかります。Z39.50は、メタデータのDublin Coreにも対応しており、両者の統合検索が可能です。Z39.50で標準化している欧米では、クライアント側の設定をユーザが行っています。さらに特筆すべきは,エンドユーザが設定できる無料クライアントソフトまで配布されていることです。欧米では,主導権はあくまでユーザ側にあります。日本の横断検索も、ユーザが設定していけるようなレベルに引き上げる必要があります。

従来の電子図書館システムの問題の克服方法についてまとめます。第1に、デジタルコンテンツの整理基準の確立という点では、Dublin Coreに準拠したメタデータの作成基準を確立していきます。マクロ的には、国内的な標準化を推進する必要があります。第2に、デジタルコンテンツの継続蓄積の実現という点では、単館での自前主義の限界を克服するため、参加型の仕組みを確立していきます。第3に、汎用的な横断検索方法の確立という点では、現状では国際標準規格のZ39.50が考えられます。

Dublin CoreとZ39.50による標準化の意義について述べます。第1に、公開されるデジタルコンテンツあるいはWebページについて、さまざまな観点(タイトル、主題、公開者、時代区分、地理区分)からの緻密な検索ができます。たとえば、今回のデモページでは、地図から、年表から検索ということを試みましたが、これができるのも、Dublin Coreに準拠したメタデータ入力あってのものです。ただし、地図、年表からの検索については、該当要素の時間的・空間的範囲の活用について標準化を進めることが必要です。第2に、Dublin Coreに準拠した標準化されたデータベースを、各県、各市町村が構築することによって、一括横断検索が容易になり、組織間、組織内の情報共有が進みます。逆に、異なる構造、異なる規則のデータベースシステム同士を連携するとすれば、その都度、各システムの解析、翻訳、変換等の作業が必要となり、膨大な手間、費用がかかります。第3に、今後、一般県民にも、インターネット上での情報提供、登録を呼びかける参加型システムの促進を考えると、Dublin Coreのような単純な15項目の要素構成は望ましいものです。なお、データベースの標準化については、あくまでも汎用的な横断検索等の検索項目として、各データベースシステムの最大公約数的な15項目を共通項目として持つということであって、組織固有のローカル項目をシステム内に追加して持つことを否定するものではありません。図書館員でない行政職員に、Dublin Coreについて説明するのですが、たとえとして、備品を備品台帳で管理するのと同様に、WebページをDublin Coreで管理すると言うと考え方は、受け入れやすいようです。第4に、県や市町村がデータベースシステムを管理運営することによって、家庭や学校での閲覧に相応しい内容、品質のWebページ、デジタルコンテンツを検索対象とすることができます。第5に、日本情報の海外への提供不足が指摘されて久しい中で、標準化されたデータベース構造のDublin Coreや標準検索プロトコルのZ39.50に準拠したサイトを立ち上げる意義は大きいです。昨年、NIIさんがZ39.50準拠のOPACを立ち上げました。主要先進国の国立図書館OPACで、Z39.50に準拠してないのは唯一NDLさんだけだと思われます。横断検索対象にNDLを加えたいというニーズは今後ますます高まりますので、ぜひNDLさんもZ39.50に準拠したOPACを立ち上げ、さらに国内の標準化をリードしていただきたいと思います。

技術的課題の解決が残っていますが、最終的にはエンドユーザの利益の向上、あるいは顧客満足度の最大化という観点から考える必要があります。具体的には次のことを考えなければいけないと思います。第1に、国内基準の標準化推進です。国内に標準化推進機関がないということが最大の問題です。昨日、NDLで、Dublin Coreをテーマとした書誌調整連絡会議があり、標準化推進機関がないということが大きな問題として挙がりました。第2に、図書館パッケージの標準技術の包含です。標準規格ができても、各図書館が導入していくためには、図書館パッケージへバンドルされないと定着しないと思います。オプションで価格上乗せという選択肢もあるかと思いますが、欧米のように黙っていても買ったらついてくるという状況になっていく必要があると思います。特にOPACに対応するZ39.50についてはそうしたことが言えると思います。この件については、アンケートの回答結果の分析でお話します。第3に、システム間連携の整備が挙げられます。電子図書館システムの構築では、業務システムのデータを電子図書館システムへはき出す、抽出して受け渡すという処理が必要になります。たとえば古文書のデータにしても、所蔵されているデータについては、業務システムからネット上の電子図書館システムへデータを受け渡すということが必要になってきます。双方のシステムが同一ベンダーであれば問題ないのですが、異なると面倒です。システム間連携というのは、先に申しましたように古くて新しい課題で、システムが職員の意のままになりません。異なるベンダー同士の連携には、法外な費用をふっかけられることがままあり、ユーザとして改善してもらいたい問題です。ベンダー同士の争いにユーザを巻き込み、ユーザに付けを回すことは許されません。その点でも標準化は必要です。その他、メタデータや目録の横断検索やハーベスティングについて、唯一の国際標準規格であるZ39.50を今回取り上げましたが、OAIのHarvesting Protocol や、Open URLについても比較検討が必要であると思います。最適なものにしていくことが必要だと思います。Dublin Coreについては、メタデータの中で最大公約数的なものですが、異種メタデータとの項目間のマッピング問題は残っていると思います。

最後にアンケートの集計結果についてお話ししたいと思います。回答については、12社の方々にご協力いただきました。この研究会が大学図書館中心ということで、大学図書館部隊の方々が中心でした。個人的には公共図書館の部隊の方にも聞きたかったので、それについては追跡調査を行いました。第1にZ39.50に関するシステム開発ということでお聞きしました。開発済みが75%、開発中が17%、開発予定が1社で、開発予定なしはゼロでした。Z39.50はすでに特別なものではなく、ベンダーが盛り込まなければならない必須機能として定着しているという印象を持ちました。図書館パッケージへのバンドルについて質問したのですが、大学,公共等,それぞれのパッケージを提供しているのに対応して,軒並みバンドル対応していることが読み取れます。対応していない場合について質問すると、取引ユーザのニーズが掘り起こせておらず、ニーズさえあればバンドルすることに依存はないという回答が返ってきました。第3に、Z39.50に基づくシステム開発上の課題としては、大学図書館ベンダーからNIIのMARCからの変換ということが挙がっています。また、外字問題等、日本語問題が課題として挙がっています。第4に、Z39.50の課題解決のための標準化推進機関として相応しいと考えられる機関をお聞きしたのですが、大学図書館部隊が多いこともあって、NIIさんという回答が多かったです。ライブラリーシステム研究会やNDLさんという回答もありました。これが公共図書館部隊の回答になるとまた違うと思います。第5に、Dublin Coreの規格に基づくシステム開発についてお聞きしましたが、開発済みが4社、開発予定が4社ということで、Z39.50よりも、開発は進んでいませんでした。第6に、各種図書館パッケージへのDublin Coreに基づくシステムのバンドルについては、主に電子図書館パッケージにバンドルされていることが多かったです。第7に、Dublin Coreに基づくシステム開発上の課題では、標準化のほか、具体的な商品イメージが未構築等のベンダー固有の課題が挙がっていました。最後に、Dublin Coreの課題解決のための標準化推進機関として相応しいと考えられる機関をお聞きしたのですが、大学図書館部隊が多いこともあって、NIIさんという回答が多かったです。昨日の書誌調整連絡会議で標準化推進機関には、どこが相応しいという話題がでましたが、コンソーシアム的な形式での検討が必要なのではないか、それにはNIIやNDLも含んでというような意見がありました。アメリカの議会図書館がZ39.50等の標準化にかなり関与しているということからNDLもかなり挙がっていました。以上がアンケートの回答結果でした。これで今回の発表とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

[入江]ありがとうございました。森山さんには何度か講演のお願いをしていて今回やっと実現しました。森山さんのOPAC画面を解析しての横断検索の問題点やZ39.50の意味についてすっきりした論文を書いていらして、僕にとって随分参考にになりました。あとはコミュニティの問題がありまして、僕ら図書館というと大学図書館しか頭になかったりするんですが、今地域、県では県立図書館と県立・国立大学の乗り入れみたいなことが具体的にすすんでいます。そういう中でコミュニティがどうなっていくかということも横断検索にとっては重要なことだと思ってお願いしました。メーカ間の調整とか標準化とかも問題だと思います。松井さん、何かありますか。

[松井]国立国会図書館の松井と申します。今日は参加させていただいてありがとうございます。今森山さんのお話を伺っておりまして、非常にいろいろと耳の痛いことが多かったのですが、私どもは今書誌部書誌調整課というところで書誌調整連絡会議という会議を設けておりまして昨日もあったのですが、今年三回目になるんですが、そこでメタデータをテーマとしてとりあげました。国会図書館では昨年国立国会図書館のメタデータの基準となる記述要素というものを公開しているのですが、それはまだいろいろ不備の多いものでしてこれから改訂していかなければならないと考えております。その改訂にあたっては先ほど森山さんのアンケートにあったんですけれども、標準化を進めるにはどんな機関がよいかというところで国会図書館というご意見をいただいたことは非常にありがたいことなんですが、私としましてはNIIさんですとか国内の主要な機関の方々と一緒に考えていきたいなと思っておりますので皆さんのご意見をよろしくお願いいたします。

[入江]どうもありがとうございます。NIIさんどうですか。

[杉田]国立情報学研究所の杉田です。私も昨日おこなわれました国会図書館の書誌調整連絡会議に参加させていただきまして、今お話のあったデータの標準化ということにつきまして、今、松井さんの方からお話があったように関連するいくつかの機関で寄り集まって標準化に向けてなにがしか進めていきたいなという感触を受けております。今後とも協力等よろしくお願いいたします。

[入江]富士通さんいかがですか。

[松永]富士通の松永です。公共図書館でZ39.50がまだというのは富士通の回答でもあります。公共図書館側の意識も変えていかなければならないと思っております。ライブラリーシステム研究会で標準化が進むのではないかと回答に書いたのも私なので、ぜひ成果をあげられればと思っております。

[入江]ありがとうございます。実は大学よりも県立図書館の方が横断検索のニーズがあるのではないかなと思っておりますので、新しいビジネスモデルを作っていただければと思います。

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