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ナンバー16、2009年 目次へリンク 2009年9月30日発行
 
より使いやすく,より判りやすく!
―湘南藤沢メディアセンターの快適な空間づくりを目指して―
詫摩 典子(たくま のりこ)
基金室係主任 2009年6月まで湘南藤沢メディアセンター係主任
保坂 睦(ほさか むつみ)
湘南藤沢メディアセンター係主任
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1 はじめに
 湘南藤沢メディアセンターは,地上3階,地下1階,各フロアの造りもいたってシンプルな建物なのだが,場所を尋ねられることが絶えない。何が判り難いのだろう?そもそもこの建物が,利用者の動線に沿っているかどうかと問われると少々怪しい。資料貸し借りと,資料探しの相談を受け付けるデスクが1階,2階に分かれてしまっているし,映像機材のサービスを行うAVカウンター,PCやネットワークの相談窓口CNS(Campus Network System)カウンターは1階の一番奥に隠れていて,利用者が右往左往している。思えば,館内の案内版もかなり地味だ。色味も控え目,文字も銀板に埋もれて見にくいし,各部屋入口の案内表示も,紙で作成したものにブッカーを貼ったり,上からテプラで貼ったりと,見目麗しくない。
 施設そのものに目を向ければ,2005年度に1階オープンエリアの全面改修が行われて以来,他エリアの改修には未着手である。2階のレファレンスエリアでは,大型閲覧席が図書館らしさを醸し出しているが,ノートPCを多用するSFCの学生に適応できていないし,創設時に設置された椅子も座面の板が割れ始めた。データベース検索用のスペースは冗長で,セミナーを開催するのに不便だ。加えて2階カウンターは,スタッフ数に比べて大き過ぎる。続きの改修に着手する条件は揃っていた。

2 館内サイン計画(2007〜2009年度)
 1階オープンエリアでは,改修後になぜか迷子が続出した。ナビゲーションが悪いことは明白である。総合案内板のようなものを目立つところに設置できないだろうか?早速ミーティングで相談,提案の趣旨には賛同を得たが,問題は予算。2007年度予算確保に向けて具体案を練る。同時にフロアマップと室名表示も連動して作り直して統一したら,全体としてより判りやすいものを提供できないか?こうして「サイン計画」が始まった。メンバーはパブリックサービススタッフ5人。カタログや各大学,施設の資料を持ち寄り,喧々諤々と話し合う。そして以下の目的・コンセプトでこの計画を進めることにした。
 【目的】初来館者用のナビゲーションを整備/メディアセンターの機能・サービスとエリアの明確化
 【コンセプト】一目で判る,迷わない為のサイン
 【手法】機能とエリアを直感的・瞬間的に判るテーマカラーに分類/太い動線上へサインを配置
 具体的には,総合案内板/各カウンター案内/フロアマップ/室名表示板の作成を目指し,見積り検討を経た結果,予算に無理のない範囲で3ヶ年計画として進めることにした。
 1年目に着手したのが総合案内板とCNS/AVカウンターの案内サイン。総合案内板には「一目で判りやすく」のコンセプトに沿い,色やロゴ(アイコン),サービス内容や施設名を簡潔明瞭に表現,日英併記等々を一枚に盛り込んで作成した(写真1)。利用案内(紙版)を入れるパンフレットケースも設置した。2年目にはフロアマップの作成。総合案内板で作ったものをベースに,配置される場所に応じた方向でみられるよう,何種類か作成した(写真2)。フロアマップにはそれぞれフロアイメージのカラー(1階は青=動的サービス,2階はオレンジ=コミュニケーション,3階は紫=読書,学習をイメージ)があしらわれた。そして3年目には室名表示と2階の案内サインを作成した。これをもって3ヶ年に及ぶサイン計画が終了した。

3 2階改修計画(2007年度)
 2階レファレンスエリアをもっと使い勝手の良い空間にすることはできないだろうか?幸い,改修の方向性が確認され,2007年度予算を確保することができた。2008年春学期オープンを目指し,レファレンススタッフでミーティングを重ねた結果,以下のように改装計画を行うこととした。
 【目的】古い学習環境を一新し,利用しやすい環境を提供/2階提供サービスの明確化とゾーン分け
 【コンセプト】調べる・相談する
 【手法】検索用PCとセミナースペースを分離/PC用個別席を設置/コンパクトなカウンター机採用
 
 まずは仕切り付きで電源のある机,快適な椅子を40席分確保。2007年度に利用者調査ワーキンググループが行ったフォーカスグループインタビュー(参考文献1)で,一人で集中できる場所が欲しいという意見があり,これを採り入れた。また,フリーアクセス床を採用し,電源が利用の邪魔にならないようにした。検索用PCとセミナースペースの分離にあたっては,場所の区切りが可視化でき,かつ出入りを自由にしたいという要望から,コクヨの「キボス」というシステムを採用した。このシステムは,柱で枠組みを作り,壁のないスペースを作ることができるもの。さらに,セミナースペースを創出するために,カウンターを縮小し,利用者が少しでも親近感を覚えられるよう,仕切りのない机を選択した。当初予定していた予算だけでは足りず,キャンパス調整費などの応援を得た結果,なんとか工事の発注にこぎつけることができた。実施は2008年2月。オープンは3月中旬であった(写真3)。

4 効果と課題
 館内サイン計画開始と2階改修のタイミングが重なったことで,2つの事業の相乗効果が表れたようだ。総合案内板とフロアマップには新レイアウトが取り入れられ,逆に2階改修には,フロアイメージのカラーを念頭に家具の色味等を考えることができた。フロアマップの画像データは,Webサイトやパンフレットなどにも活用できるようになった。総合案内板は,入口すぐの場所に設置したため,途方に暮れる利用者はほとんどいなくなった。目をあげれば,CNS/AVカウンターが1階の奥にあることがすぐにわかり,利用者は目的に応じた窓口を探すことができる。総合案内板に表示されたカラーが,各階フロアマップや室名表示に反映されて,全体の統一感を出すのに一役買っている。2階では,学期を通して,広い個別席が大人気。利用説明会も,PC利用者を妨げることなく開催できるようになった。3年目に設置したレファレンスエリアのサインも,場所の機能を明示している。
 課題もある。館内サインは表面シートの交換が可能だが,突発的対応ができないため,レイアウト変更などはシールなどで対応せざるを得ない。2階では,改修によって個別席へ利用者を呼び込むことに成功したが,「相談する」という機能を利用者にきちんとアピールし得ているかどうかは疑問。将来的にはワンストップカウンターを提供することを見据えつつ,全体の機能を見直していくべきだろう。
 図書館は生き物である。時間が経つとともに,サービス内容も変化する。当然,館内サインもレイアウトも変わっていく運命にある。これからの変化を楽しみつつ,次回の機会では,さらなる進化(!?)にあわせた“場所の脱皮”を期待したい。

参考文献
1)浅尾千夏子,藤本優子.“利用者調査ワーキンググループ活動報告 ―学部生に対するフォーカスグループインタビューを中心に―”.MediaNet.no.15, 2008, p.32-35.

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