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ナンバー16、2009年 目次へリンク 2009年9月30日発行
 
薬学メディアセンター(芝共立薬学図書館)―振り返り,先に進む―
関口 素子(せきぐち もとこ)
メディアセンター本部事務長付課長代理
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 芝共立キャンパスにいらしたことはありますか?
 三田キャンパスから徒歩圏内にあるにも係わらず,2008年4月の薬学メディアセンター発足以来まだ足を運んだことのない方も多いようだ。本稿では図書館システム統合を基軸に1年目を駆け抜け,2年目を迎えた薬学メディアセンターの現在を紹介する。

1 共立薬科大学図書館
 その前に,この図書館の歴史を知りたくなり,共立薬科大学の四十年史(参考文献1)と七十年史(参考文献2)から図書館に関する記述を拾い,またかつての担当者に話を聞かせていただいた。
 共立女子薬学専門学校の創立は1930(昭和5)年に遡り,当時から校友会図書部が資料を購入し図書室を運営していたことが記されている。校友会は,“教育方針のモットーとして掲げた「和」の精神を如実に実現させるため”に,校長が会長を務め学生が全員加入し組織されていたもので,種々の課外活動を積極的に行ったとのことである。しかし,校友会費を財源にした図書の購入では確固たる財政の後ろ盾もなく,苦労も多かったようだ。
 戦火が激しくなった1945年5月26日には,学校が3度目の空襲を受け,“焼夷弾落ち附属図書館が一時猛火に包まれたが消しとめる”との記述がある。この日は慶應義塾三田キャンパスも空襲を受け,図書館が書庫以外を焼失という大きな被害を受けている(参考文献3)。直線距離で1.2kmしか離れていない二つの図書館が,同じ日に同じ惨状を経験したという事実を知り,戦友がここにきてまた出会ったような不思議な感覚を覚えた。
 その後,1949年に専門学校から大学に昇格したことにより図書館の充実が叫ばれ,1955年に建設された建物の1階全フロアが図書館として使用されるようになり,さらに増改築を重ね資料も徐々に増え規模を拡大していった。1985年,学術情報検索用パソコン1台を導入したのをきっかけに蔵書データの蓄積を始め,1995年には図書館LANを構築し,閲覧・検索システム(情報館)を稼働させた。
 そして2000年11月に現在の3号館(研究棟)が竣工し,1号館(学生厚生棟)と2号館(教育棟)を結ぶ3階の渡り廊下の目の前に図書館が,さらに4階には電動集密式の保存書庫が設けられ,今の形が出来上がった。その頃から将来的な書庫狭隘問題を視野に入れ,電子ジャーナルの検討・推進も行い現在に至っている。

2 館内ツアー
 施設の概要は,昨年のMediaNetの巻頭言で杉本薬学メディアセンター所長が述べたとおり(参考文献4)であり,ここでは主に写真で館内の様子を紹介する。

(1)薬学メディアセンター入口(南側)
 BDS機能の付いた入退館ゲートにバーはなく,自由に入館できる。ゲート通過者数は自動カウントされている。閉館後23時まで,また休日も教職員と大学院生は各自の芝校舎入館証をドア右手のスロットに通すことで,開錠し入館することができる。北側にも開館時間帯のみ利用できる入口がある。

(2)新着雑誌コーナーと複写機
 入館してすぐ右手に,約300誌の新着雑誌を和洋別に並べている。和洋区分は出版地による。ここに置かれるのは未製本のみで製本後は4階保存書庫に配架される。今後洋雑誌の電子化が進んだ場合はこのコーナーの別用途での有効活用が望まれる。
 複写機はゼロックスカード式で,モノクロ用,カラー用各1台。カードは各講座からの持ち込み,あるいはカウンターで借り出し,コピー終了後に現金清算のどちらかになっている。

(3)サービスカウンターと事務室
 入館して左側が貸出・返却およびレファレンスを行うサービスカウンターとなり,そのすぐ奥が3名のスタッフが働く事務室になる。昼間はこのように開放され利用者の動きを感じ取りやすい。夜間および土曜日のカウンター業務は外部委託で,その時間帯は事務室との間が鉄扉3枚で仕切られる。

(4)館内一望
 カウンター側から館内を一望した図で,手前より検索コーナー,参考図書用低書架,閲覧席,柱の右が高書架,その手前のガラス張りの空間がグループ学習室となる。閲覧席とグループ学習室の棲み分けがうまく機能しており,喧騒にまつわるクレームはまず聞かれない。検索コーナーのPC2台はほとんどがOPAC検索のために使われている。今後一層増えていく電子コンテンツの利用促進のためにも,芝共立ITCに協力を要請して検索コーナーを拡充させることが望まれる。
 高書架は31面を数え,NDC分類400番台(自然科学)の専門図書とそれ以外の教養図書に大別される。シラバス掲載の参考書を集めた指定図書コーナーと薬剤師となるための試験対策本を充実させたコーナーは特徴的で,非常に多くの利用がある。

(5)ブラウジングコーナー
 北側の一番奥に位置し,教養雑誌,新聞,旅行ガイドブック等を備えている。単科大学の時は全学生,教職員のニーズを満たすために,教養図書/教養雑誌の購入にも力を入れたと聞いている。資料費で購入したそれらのうち古くなったものは,年2回学内無料頒布会を開き,好評を得ている。
 壁面の絵画は卒業生の手になるもので,キャンパス内のあちこちに飾られ潤いを与えてくれている。

(6)4階保存書庫
 卒論にとりかかる4年生以上の学部生,院生,教職員が各自のカードで入口を開錠し利用する無人の書庫。製本雑誌,保存図書,学位論文などを収めている。複写機もあり各自で用を済ませる利用者がほとんどで,入庫者数など利用の実態は不明。現段階では際立った書庫スペース問題は見られないが,徐々に顕在化することは明らかで,早めに対応策を用意する必要がある。

3 一年を振り返る
 薬学メディアセンターとしての初年度は,図書館システムの統合が最重要課題であり,2009年3月までの1年を作業期間と定めた。それに先立ち,まず2008年4月当初から塾内ILLを実施するための基本的共有ルールとして,共立薬科大学(以下,共薬)時代にはなかった延滞料や図書紛失弁済等の規則を利用者にご理解いただく手続きが必要となった。スタートラインに立つまでの担当者の種々のご苦労はいかばかりであったかと思う。その後専任職員の交代が相次ぎ,バトンをいかに落とさずリレーするかの1年でもあった。
 システム統合は,共薬の図書館システム「情報館」の中身を1年かけてそっくりCALIS,KOHEI,といった慶應義塾大学メディアセンターのシステムに移行させる作業であり,綿密な計画と多大な労力を必要とした。それでもメディアセンター本部の全面的協力を得て,2009年3月末には運用に支障のないレベルでのデータコンバートを終え,芝共立キャンパスでの新学期開始前日の4月6日に慶應義塾大学蔵書検索システムKOSMOS II OPACに「芝共立」という配置場所コードを持った図書や雑誌データを公開することができた。その結果,4月以降の塾内現物ILLの件数増加は目覚ましく,昨年度1年間でOUT(借用)147件,IN(貸出)7件に過ぎなかったものが,今年度は4〜5月の2ヶ月間だけで,すでにOUT 117件,IN 134件に上っている。
 最終的なコンバート件数は,図書書誌データ45,780件,雑誌書誌データ962件,雑誌製本物理単位データ25,032件,雑誌未製本物理単位データ9,043件である。

4 2年目からのあゆみに向けて
 KOSMOSへの移行は一通り終了したものの細部には不完全データもあり,全塾メディアセンター一丸で来年度に向けて進んでいる次期図書館システムに,より完成された形で乗り換えるためのデータ整備を現在進めている。
 電子ジャーナル・データベースは,慶應義塾大学として契約を一本化したことで支出削減になったものも多く,また利用可能な電子ジャーナルタイトルが大幅に増えたことも追い風として,電子媒体資料の提供には一層力を入れていきたい。
 この図書館に身を置くとあちこちで感じられるのが,きめの細かい手厚いサービスである。学生から直接に意見を聴く場として,共薬時代から年2回開催している学生図書委員会では「館内にごみ箱を」,「ドアの開閉音がうるさい」,「照明が暗い」,「席を増やして」など,様々なレベルの要望が出され,大いに参考にしてきたようだ。これからも共薬からの良き伝統として,小規模だからこそできる小回りを利かせたサービスには常に取り組んでいきたい。
 前任者の退職により2008年12月に何もわからぬままに渦中に飛び込み,周囲の方々には多大なご心配をお掛けしたが,薬学メディアセンターが大過なく2年目を迎えていることを,この場を借りて皆様にお礼申し上げる。

参考文献
1)共立薬科大学四十年史編集委員会編.共立薬科大学四十年史.共立薬科大学,1970, p.298.
2)共立薬科大学編.共立薬科大学七十年史.共立薬科大学,2002, p.127.
3)慶應義塾大学三田情報センター編.慶應義塾図書館史.慶應義塾大学三田情報センター,1972, p.348.
4)杉本芳一.“薬学メディアセンターの発足にあたって”.MediaNet.no.15, 2008, p.5.

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