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ナンバー17、2010年 目次へリンク 2010年11月30日発行
特集 KOSMOS III―新図書館システムの導入―:第2部
KOSMOS―keio.jp認証連携と認証サービスの今後
田邊 稔(たなべ みのる)
メディアセンター本部課長代理
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1 keio.jp認証サービスとMy Library
 これまで,図書館が提供するkeio.jp認証サービスとしては,『図書利用状況照会』と『EJ/DBリモートアクセス』の2つがあった。今回の『KOSMOS My Library』は,第3のサービスというよりも,“図書利用状況照会の機能拡張版サービス”という位置づけに近い。図書利用状況照会では,自分の貸出・予約・未収金の状況を照会するだけのサービスだったが,My Libraryでは,利用者自らがリアルタイムで予約・更新(貸出期限延長)できる機能が加わった。KOSMOSを開始した4月以降,My Library経由での予約・更新の利用数が急速に伸びたことから考えても,利用者が長年待ち望んでいた機能であったことが分かる(図1)。さらに,認証さえ受けていれば,タグやレビューなども登録できる。もう一つ大きな違いは,従来の2つのサービスと異なり,慶應IDを持っていなくとも,図書館に利用者登録を行い,ID/Passwordを取得すれば,サービスを利用できるという点である。

2 PDSの機能とセキュリティの確保
 Ex Libris(以下。E社)のPrimoパッケージに標準装備されている『PDS(Patron Directory Service)』には,Alephパッケージの利用者データ(Patron)と直接連携できる独自の認証機能の他に,「Remote-LOGIN」や「Remote-SSO」と呼ばれる機能があり,外部の認証サービスと連携することができる。但し,セキュリティの観点から,KOSMOS(PDS)とkeio.jpが直接連携する形ではなく,先行事例として実績のあるEJ/DBリモートアクセス(以下。KRAS)のサーバが仲介する方式を採用した。おかげで,インフォメーションテクノロジーセンター(以下。ITC)・メディアセンターとも効率よく開発することができた。なお,PDS⇔KRAS⇔keio.jp間はすべてSSL通信とし,経路上セキュアな通信を確保することとした。

3 PDSとkeio.jpとの連携ポイント
 まず,KOSMOSの認証サービスへ入る基本導線を以下の4つと想定した。
 (1)KOSMOSトップの「ログイン」ボタンから
 (2)KEIO-OPAC書誌一覧の「リクエスト」リンクから
 (3)図書館HPやお気に入り(ダイレクトリンク)から
 (4)keio.jpのアプリケーションメニューから
 今回の実装に際し,最大のポイントだったのは,「慶應ID保持者と慶應ID非保持者へのシームレスな対応」である。つまり,慶應IDを持っている人にも,持っていない人にも,同じ認証画面,同じ画面遷移でサービスを提供することを我々の最重要課題と捉えた。そのため,E社への基本要件として,以下の2つを提示した。
 (1)認証ログイン画面は慶應側が提供するものとし,慶應ID保持者用と非保持者用を共通のものとする。
 (2)図書館システム側では慶應IDを保管しないこと。
 慶應IDはITCが管理するIDであるため,入力されたID/Passwordを一時的にせよ,図書館システム上を通過することも,保管することも許されるものではない。そのため,ITCが用意したkeio.jpログイン画面を使うことを必須要件とした。但し,ログイン画面は共通でも,慶應IDでログインされた場合と非慶應ID(図書館利用者ID)でログインされた場合では,裏側の仕組みは大きく異なる。この実装にはかなり手を焼いたが,具体的な実装方法としては,大きく下記の通りとなる。(図2
 (1)入力されたID体系で判別する。
 (2)慶應ID体系の場合は,keio.jpに認証を要求する。
 (3)それ以外(図書館利用者ID)の場合は,X-Serviceの認証APIを使って,Aleph利用者情報に直接認証を要求する。
 (4)認証エラー処理は,(2)と(3)それぞれで行う。
 (5)認証通過後の動きは,(2)と(3)で共通とする。

4 KOSMOSログイン端末の誕生
 今回のkeio.jp連携でもう一つ大きな進展があったのは,従来のOPAC端末が「蔵書検索に特化した専用端末」という位置づけだったものが,館や設置ゾーンによっては,ログイン認証して予約・更新ができる端末「KOSMOSログイン端末」を用意できたことだ。そもそも,OPAC端末は強固にフィルターされており,蔵書検索以外何もできない(させない)“極端に自由度の低い端末”である。そこに,認証サービスを載せることは,当然ながら“御法度”だと思い込んでいた。しかし,ITCに相談したところ,ITC端末でもITCアカウントで認証利用させていることもあり,きちんと利用指導を行い,システム面・運用面でリスクをカバーできるのであれば,問題なかろうとの見解だった。
 OPAC端末で認証サービスを提供するにあたり,最大の問題となったのが,「サービス利用後,いかにログアウトしてもらうか」と「ログアウトされなかった場合のリスクをどこまで最小化できるか」ということだった。そこで工夫したこととして,運用面ではログアウトを促すために,端末そのものに大きく「利用後は必ずログアウトしてください。ログアウトしない場合,誤って次の利用者があなたのIDを使ってしまう恐れがあります。」といった注意喚起のシールを張ることにした。システム面では,3分間未操作状態の場合に端末を自動ログアウトする仕掛けを作った。もちろん,未ログイン状態で3分間の間に次の利用者が飛び込んだ場合のリスクはあるが,それは一種の“事故”と割り切ることとし,運用を開始するに至った。

5 認証サービスにおける今後の課題
 最後に,認証サービスとしての今後の課題を5点ほど掲載する。

1)中継サーバの信頼性向上
 KOSMOS My Libraryとkeio.jpとの連携にKRASを中継させることで,KRASそのものの役割が重要となり,サーバの強化が急務となっている。具体的には,もう1台ミラーセットを用意し,最低限コールドスタンバイ構成を取り,万一の場合,最短のダウンタイムで切り替えられるよう,構築を急ぐ予定である。

2)keio.jpへの図書館サービスの見せ方
 現状,keio.jpログイン後のアプリケーション一覧には「KOSMOS My Library」という1つのアプリとして実装しているが,今後,キラー的なアプリは「粒」で見せるなど工夫が必要だと思われる。

3)『学認(愛称:GakuNin)』(注1)との連携
 PrimoのPDSやKRASのEZproxy(注2)は,Shibboleth(注3)認証にも対応しているため,数年後にはNII-UPKIが提供しているGakuNinと連携したコミュニティサービスを実装することになろう。(図3

4)モバイル版OPACからの予約・更新
 現在,携帯電話向けのモバイル版KOSMOS(参照系のみ)は外部ASPにて提供しているが,今後,認証付きサービスを載せるためには,ASP版ではなく,慶應内のサーバにモジュールを置くモデルか,API化して提供する必要がある。

5)電子学術書利用実験プロジェクトとの連携
 現在進行中の「電子学術書利用実験プロジェクト」について,2010年12月より利用実験を開始する予定である。利用範囲を慶應所属者に限定したり,コンテンツ利用ログを取得するなど,本人認証が必須となるため,KOSMOS⇔keio.jp⇔電子書籍アプリの連携を実装する必要がある。


1)「学術認証フェデレーション(愛称:GakuNin)」とは,学術e-リソースを利用する大学,学術e-リソースを提供する機関・出版社等から構成された連合体のこと.各機関はフェデレーションが定めた規程(ポリシー)を信頼しあうことで,相互に認証連携を実現することが可能となる.
2)「サイト契約の電子ジャーナルを遠隔地から利用させる」という目的に特化して開発されたソフト.現在はOCLCが販売,維持管理している.
3)米国EDUCAUSE/Internet2にて2000年に発足したプロジェクトで,SAML, eduPerson等の標準仕様を利用した認証・認可のための標準仕様策定とオープンソース提供を行っている.

図表
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図1
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