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ナンバー17、2010年 目次へリンク 2010年11月30日発行
ティールーム
図書館の利用方法の移り変わり
大場 茂(おおば しげる)
文学部教授
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 もう20年も前の話であるが,私はデンマーク工科大学に1年間留学していた。ある日の夕方,文献のコピーをとるために図書館の閉館5分前に入館したところ,年配の職員にすごい勢いで苦情をいわれたことがある。「あなたは私達の超過勤務時間に対して給料を払ってくれるのか」という内容であった。日本では銀行なども含めて,営業時間とはユーザー側の利用可能時間をもちろん意味する。しかし,デンマークでは勤務時間を意味し, つまり閉店時間は電気を落として職員が帰る時間なのである。一般の商店なども,営業時間終了の15分前頃から店のシャッターを閉め始める。仕事も商売も大事だが, それよりも自分達の生活の方がもっと大切だという意識が強い。日曜日は観光客相手の店以外は閉まるので, 土曜日に買い物をしていたことがなつかしい。
 さて,研究テーマを考えたり論文を書いたりするときに,まず関連する文献調査が必要となる。私の専門である化学の分野では,Chemical Abstract(略称ケミアブ)が古くから刊行されていて,以前にはこれを使った手動での検索が常套手段であった。Subject indexやAuthor indexをたどりながら冊子をさがしてページをめくるという,非効率な作業であった。そして文献にたどりつくと,コピーをとりファイルに閉じて,貴重な資料として大切にしていた。オンラインでのデータベース検索も,20年前頃から利用できるようになったが,コンピューターの接続時間とヒット件数などにもとづいて課金されるため,事前に図書館の人と検索のキーワードなどを相談しておく必要があった。今やそれが,自分の居室のパソコンからインターネットを通して自由に使え,しかもヒットした論文のpdfファイルも多くの場合,その場で手に入る状況となった。
 私は日吉メディアセンターのデータベース一覧の中の「雑誌記事:ジェネラル」に分類されている「Web of Science」を良く利用する。そのきっかけは,このデータベースの試用期間のアナウンスのメールが,日吉メディアセンターから届いたことであった。ちょうど調べたいものがあったので,興味半分に検索してみたところ,キーワードをもとに,ずばりその論文に行きつくことができた。これは,使える!と実感したわけである。このデータベースは,目的とする情報が最初から見つからなくても,その研究対象に関する最新の論文をさがし,それに引用されている文献をたどることで,芋づる式にほしい論文が収集できる。なお,メディアセンターで提供されているデータベースのうち,自然科学の分野に関するものでもまだ使ったことがないデータベースもあるので,それらの特徴や使い勝手についての紹介があると,もっと使いやすくなる気がする。
 論文に引用されていて,見たいのになかなか見れないものとして,図書がある。洋書の特定のページだけ見たいとしても,文献のようにオンラインですぐ手に入る体制にはまだなっていない。和書ですら,良書であっても発刊されて20年後には在庫がなく販売中止になっているものが少なからずある。今はデジタルデータの取り扱い方法が格段に発達しているので,今後はオンデマンド形式での受注が増えるものと思われる。メディアセンターでは,E-ジャーナルだけでなくE-ブックも利用できるが,現時点では自然科学のあらゆる専門書が見られるというわけではない。それは当然,経費の問題ともかかわってくるが,10年あるいは20年後には,もっと専門書がパソコンの画面上で見れるようになっているのではないだろうか。現在E-ブックとして,化学書資料館の「実験化学講座」と「化学便覧」などの利用が可能であり,目次からさがすのではなく,キーワードを入力して該当ページに飛べるので便利である。ただし,印刷はページごとに1枚1枚指定しなければならず,資料としてまとめて何ページか読みたいときは不便である。
 E-ジャーナルやデータベースを利用しても,ユーザーには課金されない。しかし,その裏で大学は高額な料金を支払っている。このことを肝に銘じ,大いに利用しようではないか。

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