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ナンバー17、2010年 目次へリンク 2010年11月30日発行
 
SFCのデータベースコンサルタント制度―これまでとこれから―
保坂 睦(ほさか むつみ)
湘南藤沢メディアセンター係主任
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 湘南藤沢キャンパス(以下,SFC)は,慶應義塾大学のキャンパスとしては,比較的新しい部類に入る。90年代初頭のSFCは,インフラの未整備も手伝ってか,教職員と学生が一緒になって,あらゆることを協同しながら作り上げていくという気概に満ちていた。湘南藤沢メディアセンター(以下,MC)でも,当時は組織が一緒であった湘南藤沢計算室(現・湘南藤沢ITC)とともに,学生の力を借りてサービスを充実させる方針をとった。それがすなわち,今に続く「学生コンサルタント制度」である。90年代前半までには,CNSコンサルタント(コンピュータ/ネットワーク),AVコンサルタント(カメラ/動画編集),MACコンサルタント(Macintosh利用サポート,現在廃止),データベースコンサルタント(商用データベース利用サポート)という4種のコンサルタントが「半学半教」を掲げつつ,MC内で勤務していた。(注・参考文献1)それぞれのコンサルタントには10〜20名の学生が所属しており,ところせましとUNIXコンピュータが設置されたMC内で彼らが活躍する様は,今でいうところの「インフォメーション・コモンズ」に近いものがあったといえよう。SFCは,最寄の駅から遠く,鄙びた環境に囲まれ,ある意味「陸の孤島」である。さらに,昼休みもままならない程忙しいプロジェクトや授業を抱えた学生が数多く存在し,少しでも便利な環境でのアルバイトが求められたという事情も,学生コンサルタント制度の充実に影響したかもしれない。
 これらのコンサルタントのうち,レファレンススタッフが統括しているのが「データベースコンサルタント」(以下,DBコン)である。DBコン制度は,学内インフラが整備されつつあった93年度(創設 4年目),学内ネットワーク上での商用データベースサービスが始まった時期に誕生した。DBコンはプリンタ利用のサポートとともに,当時主流であったCD-ROMデータベースの利用手続きや使い方指導,『DBガイド』の編集・発行(2001年で中止)などを行っていたが,次第に館内ガイドや一般的な図書館利用サポートについても,レファレンススタッフとともに担っていくことになる。2010年度春学期現在,DBコンに登録している学生は18名。一部大学院生も所属しているが,主力は学部生である。新人は,代々の先輩より紹介してもらう他,MCスタッフが春学期に協力して実施する「資料検索法」という授業を履修していた学生から希望者を募ったり,あるいは学生が自主的にMCでのアルバイトを求めてきたり,などのルートで採用することが多い。なお,MCが管轄している学生アルバイトには「配架アルバイト」という職種もあり,こちらはひたすら返却本を書架に配架する仕事であるが,キャンパス内で効率的に働きたいということか,各種コンサルタントとかけもちをする学生もしばしばいる。
 現在のDBコンの主な仕事は,夕方から夜間にかけてのデータベース利用者サポートである。学期中の14時45分から21時まで,レファレンスデスク横のDBコンデスクで,所属学生同士でシフト調整しながら2名体制で勤務する。勤務単位は一コマ90分,授業時間にあわせて交代するシステムをとっている。DBコンには毎月,他コンサルタントとともにWeb上の勤務表システムにて申告してもらい,総務担当にて勤務を一括管理している。レファレンススタッフからの事務連絡やスケジュール調整は,メーリングリストの他,Pukiwikiを利用した事務用サイト上で行っている。メールでは蓄積できないマニュアル/ストック系の情報を盛り込み,学内でも自宅でも参照できるよう工夫している。DBコンが作成した外部向けウェブサイト(注・参考文献2)もあるが,正直言って素敵なコンテンツを提供できているわけではない。毎年代替わりする担当に継続的にメンテナンスをしてもらうのは難しいことを実感している。なかなか機能しないウェブサイトに代わり,2009年秋学期からはtwitterでの発信を開始した(注・参考文献3)。シフト勤務中に,学校生活やDBに関わることについてツイートすることが日課である。学生とともにサービスを行うことは,スタッフにとっても学生の考え方や学習ニーズを知る上で貴重な機会となっている。
 学期中には「データベース・ウィークス」と呼ばれるセミナーを開催する。最近の内容は,初心者向けの「10分間セミナー」(KOSMOS利用法,雑誌論文,新聞記事,統計の探し方など),データベース別説明会,DBコンによるオリジナルセミナー(「国際関係」「建築」「就職用DB」など,テーマを自由に設定して説明する)などである。開催時期・回数などは学期直前にスタッフ側で決定し,学期始めのミーティングにて,担当を決めてもらう。学期内に25〜40回程度,1日2〜3回(おおむね15時/17時前後から開始)として設定するのだが,ある学期には参加者が多かった月日や時間帯に,翌年も参加者が多いとは限らない。ここ数年,図書館が開催するセミナー類への参加が以前ほど見込めず,せっかくセミナーを実施しても,3人程度来れば良い方で,誰も来ずに開催できないということもあった。参加者が少ない原因はいろいろ考えられる。広報が行き届かない,時間帯や場所が悪い,内容が学生のニーズにマッチしない,わざわざ参加するだけのインセンティブが足りない,ターゲットの絞り込みが悪い,など。セミナー自体は「多分役に立つだろう」と思われている節はあるのだが,毎学期セミナーが開催されていることは知っていても,参加するのは「面倒くさい」という一般学生のなんと多いことか。せっかく参加してくれても,参加者自身の情報リテラシーレベルと,DBコンから説明される内容が合わないケースでは,「こんなセミナー役に立たない」という烙印を簡単に押されてしまうのである。
 そんなわけで現在,DBコン制度はちょっとした危機にある。セミナー開催の危機のみならず,せっかくデスクで勤務していても,学生からの質問そのものやDBサポート件数が少ないこと,DBコン所属者同士の横のつながりが薄いこと,これといった義務やグループ活動をあまり課していないことなど種々の理由から,MCへの所属意識が低くなっているのである。所属意識が低ければ,自発的な活動も生まれにくくなり,そのために「移動する必要がなく,勤務時間に暇なら勉強できる,たいした知識も必要としない楽バイト」としての認識が,DBコン所属学生自身に限らず,一般学生からの評価としても定着してしまったきらいがある。このことは,伝統と制度にあぐらをかき,自主性にまかせるという名目で放任主義をとってきたスタッフ側に責任の一端があろう。データベースやネットワークが普及していなかった90年代と比べ,個人のコンピュータリテラシーの向上,情報の氾濫といった環境の変化に,従来からの「DBコン制度」のままでは適応できなくなっていることは明白である。しかしせっかくこれまで築いてきた,学生を活用する仕組み,そして共に創りあげる文化を失わないためにはどうしたらよいのか。地道ではあるが,DBコンの存在意義を改めて確認し,所属学生の情報リテラシー能力と知識を底上げすること,DBコン同士/スタッフとのコミュニケーションを深めることが何よりも肝要であろう。これらのことは実際にセミナーやデスクで説明役を担うDBコン自身にも感じられることらしく,2010年度の春学期からは自主的に「勉強会」を実施する動きが出てきた。勉強会では,自分たちが学生としてMCとそのリソースを利用する上で,疑問に感じる様々なことを,講師役のスタッフが答えるという形式をとったが,企画/参加した学生からは「ぜひまたやりたい」という積極的な感想をもらうことができた。今更ながら,今後はこれらの部分を丁寧にサポート/適切にコミットしていくことで,所属学生の意識醸成と役割の再構築をある程度は行うことができるのではないかと考えている。

注・参考文献
1)松本和子.“湘南藤沢メディアセンター”.(MEDIANETレポート・利用者教育).MediaNet.no.2, 1994, p.74-76.
2)DBコン公式ウェブサイト.http://dbcon.sfc.keio.ac.jp/,(参照2010-08-17).
3)DBコンtwitter.http://twitter.com/sfc_dbcon/,(参照2010-08-17).

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