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ナンバー17、2010年 目次へリンク 2010年11月30日発行
 
慶應義塾大学病院の医療情報サービス拡大―KOMPASインターネット公開―
長友 千代美(ながとも ちよみ)
信濃町メディアセンター係主任
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1 はじめに
 2009年1月に慶應義塾大学病院内の薬待合エリア一隅に開設した「健康情報ひろば」では,患者さんやご家族の方へ医療・健康情報を提供するサービスを実施している(参考文献1)。1日平均170名が「健康情報ひろば」に訪れる。病気・検査・くすり・栄養等の医療・健康情報を求めている方は,図書・雑誌の閲覧と共に慶應義塾大学病院の医師,看護師,薬剤師,栄養士ほか医療スタッフが患者さんのために書き下ろした慶應オリジナルWebコンテンツKOMPAS:Keio Hospital Information & Patient Assistance Serviceも多く活用している。KOMPASは「健康情報ひろば」設置のパソコン7台のみでの限定利用となるため,医療・健康情報を提供するサービスを一般の方も利用できるインターネットを介してのサービスへと拡大した。本稿では,インターネットに公開した2010年3月までの9ヶ月間の取り組みと現況について報告する。

2 インターネット公開に向けて

(1)記事内容の評価および判定
 KOMPASを一般公開するにあたり,医師・医療事務・技術系職員・信濃町メディアセンター事務局(以下,事務局)48名で構成されている健康情報ひろば・KOMPAS運営委員会で議論され,KOMPASコンテンツの見直しが必要とされた。医師レベルでの専門的な言葉があるため,記事ごとに表現の難易度が異なっている点がある。一般の方が読んで分かりやすく,更に全体の統一感を高めることを目的に,先ずは記事の内容の評価と修正に着手した。コアメンバーで作成したKOMPAS記事評価シートと,修正を入れる記事コピー(KOMPASコンテンツ:病気355件,検査134件,その他81件)を6月12日の運営委員会で配布し,評価を依頼した。評価は二通りあり,他科の医師によるピアレビューと非医療者による評価である。後者については,ひろばボランティア,看護医療学部学生,信濃町メディアセンタースタッフに協力を仰いだ。

(2)コンテンツ・トップページ再構築
 7月上旬に評価結果を回収し,執筆者へ改訂を依頼した。評価者のコメントを尊重しつつ,最終判断は執筆者に任せ,特に図表やイラストについては著作権上問題の起きない配慮をお願いした。依頼にあたっては以下の資料を添えた。
 ・原稿修正要領および執筆要項
 ・記事修正の例
 ・コンテンツをWordに編集した原稿ファイル
 ・評価コメント付き原稿
 夏に集中的に作業をしてもらえるようにと,改訂原稿の締め切りを8月に予定した。入稿の遅れは20%ほどであったが,訂正の有無を含めての回収は不可欠であり,10月まで延期してほぼ100%の回収を果している。慶應義塾大学病院が発信するオリジナルのコンテンツを公開するにあたり,評価・修正は必須であったこと,また,限られた予算内での記事修正には全体のボリュームを先に把握しなければならなかったことから,教授会の席での呼び掛けも含めて,全執筆者に強く協力を求めた。全タイトルの読みを付与する以外に,修正するコンテンツ数は予想より多く80%を超え,KOMPASコンテンツ修正とWeb版構築にかかる経費は当初の予算を超えてしまった。そこで業者側から単純な原稿修正は事務局で行うよう作業の振り分けが提案され,30%程度の修正を受け持つこととなった。これは業者の多大なる協力の上での解決策であった。回収した修正原稿は,事務局からの依頼内容が徹底せず,タイトルにふりがなが無いものが全体の90%を占め,また改訂原稿の修正履歴が無いものもあり,事務局の作業量は予想を遥かに超えるものとなった。
 健康情報ひろばのために開発したKOMPASには通院患者さん向けの院内案内(20件ほど)を含んでいるが,Web版では外部リンク集と共に,公開不要と判断した。また,ひろばパソコン用とWeb版でトップページデザインは異なるが,コンテンツ部分のデータベースは一元管理して経費を抑えている。
 インターネット公開により,アクセス数の増加が期待される。アクセスログを解析しアクセス数トップ3を注目の記事として毎月紹介することとした。「KOMPASについて」と「免責」の記事も改訂し,3月1日の公開時点で,病気(354件),検査(133件),その他(84件内,非公開20件)合計551件のコンテンツを掲載した。

3 利用状況(アクセスログ解析)
 慶應義塾広報室から配布されている制作会社向けWeb制作ガイドラインには,利用状況を管理する際,無料で利用できるGoogle Urchinソフトウェアの使用を推奨している。インターネット公開後のアクセスログの把握にはこれを採用した。但し,業者との共通した統計管理も必要であることから,現時点ではUrchinと共に,KOMPASのサーバに付随しているより簡便なアクセスログ解析AWStatsも活用している。ここで紹介する利用数はAWStatである。2010年3月〜7月までの利用状況は図1に示した。月毎に利用数が増加し,公開後5ヶ月で訪問者数が3倍,利用されたページ(コンテンツ)数は2倍以上となっている。
 参考までに7月の状況を紹介すると,コンテンツは554件に増え,アクセス数は図1に示す訪問者数59,331人,利用ページ数94,174件であり,どのようにアクセスしたかの解析を示すのが,図2である。外部検索エンジン利用が76.6%を占め,Google-J, Yahoo-Jからの検索がほとんどであった。
 エンジンでヒット率を上げるためのSEO:Search Engine Optimizationは基本的な対策のみ講じている。たとえばhtml内のtitleタグに「記事タイトル¦慶應義塾大学病院KOMPAS」という形で組み込み,KOMPASで検索した時に上位に表示されるようにしている。また,Webサイトの信頼性という観点から,更新日の明示,医療情報の出典などが明確であるように心がけた(参考文献2)。こういった工夫を実現させるには,KOMPAS設立当初から協力をいただいているハルデザインコンサルティングの協力に負うところが大きかった。

4 おわりに
 この結果を踏まえて,KOMPASを慶應義塾大学病院の情報発信源としてさらに充実させて行きたい。最新の医療情報をいち早く享受できるトピックの連載を強化し,イラストの追加, 大学病院ならではの希少疾患についての掲載も検討している。医療情報は鮮度が重要であり, 医師を始めとする医療従事者との協力関係が不可欠である。これらをサポートして行く事務局の立場から, 院内関係者との協力を密にして, より深く関わって行きたいと考えている。

参考文献
1)舘田鶴子,南野典子.“慶應義塾大学病院ひろばプロジェクト”.MediaNet.no.16, 2009, p.40-43.
2)後藤悌.“インターネットにおけるがん医療情報の現状と,改善への取り組み”.情報管理.vol.53, no.1, 2010, p.12-17.

図表
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