レポートを書く
大学の授業では、たくさんのレポート課題が
課されます。
同時並行で何本も書かなければ
いけないこともあるでしょう。
レポートを書くには書き方のコツを知ることと、
経験を積むことが大切です。
この章では、基本的なレポートの型と、
書き上げるまでのプロセスについて学びます。
レポートとは何か?
大学におけるレポートは、感想文とは違う、とよく言われます。自分の考えや思いを自由に表現する感想文に対して、大学のレポートは、問いに対して、客観的な根拠を示しながら、自分なりの答えを導き出すものです。
レポート課題によっては、課題図書を読んで要約させるタイプのものから、与えられた問題提起(問い)に対して論証させるタイプのもの、さらには自分で問いを立てるところから求められるタイプのものなど様々です。
感想文とレポートの違い
よく使われる表現 | ||
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感想文 | 主観的 | 「私は・・」「面白かった」「・・と思った」「これから勉強を頑張りたい」 |
レポート | 客観的 | 「〇〇によると、・・・であることが示されている」 「よって、・・と考えられる」「・・といえる」 |
主なレポートの種類
報告型の課題 | 「〇〇を読んで要約しなさい」 「〇〇について調べて問題点をまとめなさい」 |
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論証型の課題 (問いが与えられている) |
「〇〇について論じなさい」 「〇〇についてあなたの考えを述べなさい」 |
論証型の課題 (問いを自分で立てる) |
「授業で扱ったトピックの中から関心を持ったテーマについて自由に論じなさい」 |
レポートの基本構成
与えられた、あるいは自分で立てた「問い」に対して自分の結論に導く「論証型」のレポートの場合、最も基本的な構成は「序論―本論―結論」です。
序論 | 「問い」を提示する 扱う問題の背景や、その「問い」を示す意義や目的を説明する |
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本論 | 議論を展開する 客観的な根拠(文献、調査・実験結果など)を提示しながら、自分なりの「答え」に導く |
結論 | 議論を総括する 「問い」への「答え」を明示する |
また、根拠として利用した文献などの情報は、レポートの最後に参考文献としてリスト化します。書き方については、「情報を利用する(引用・著作権)」の章を参照してください。
TIPS
自分でアンケート・インタビュー・実験・フィールドワークなどを行った場合は、本論にその調査手法についての説明や調査結果を入れます。単独で章を立てることも多いです。
レポートで求められる態度
レポートを書くに当たっては、次のような態度が求められます。
- 自分の書いたものに責任を持つ。
- あいまいなことは書かない、嘘を書かない、ごまかしをしない、自分の書いたものには責任を持たなければなりません。レポートには、自分の理解し得たことを自分の言葉で書きましょう。
- 自分の考えたことと他者の考えたことを区別する。
- 自分の主張を裏付けるために他者の研究・調査結果、文章を根拠として提示する際、自分の考えたことと他者の考えたことは明確に区別しなければなりません。他者の考えを自分のもののようにして書くことは、「剽窃(ひょうせつ)」と呼ばれ、厳しい処分を伴う不正行為です。根拠となる情報をレポートなどで利用するためには、「引用」という方法を用い、出典を明示します。引用については「情報を利用する(引用・著作権)」の章で解説します。
- 利用した情報の真意を損ねることはしない。
- 他者の文章を利用する場合には、その文章の趣旨をきちんと理解していることが必要です。オリジナルの文章における前後の文脈を無視して、都合の良い一部分のみを抜き出して利用することは、オリジナルの真意を損ねることになりますので決して行ってはいけません。また、複数の他者の考えた部分部分をつなぎ合わせて利用してはいけません。
レポート提出までの作業
ここからは、課題が出されてから提出までの具体的な作業を見ていきます。
レポートの趣旨を理解する
まず課題文をじっくり読んで、条件や趣旨を把握しましょう。
- 締め切り日は?
- どんなに内容が優れていても、締め切りを過ぎてしまうと、最悪の場合、受け取りを拒否される可能性もあります。提出方法もしっかり確認した上で、余裕を持った計画にしましょう。
- 文字数は?
- 文字数は、ある程度内容を決定します。与えられた文字数で書くには、どれくらいの大きさの問題設定が妥当かおのずと決まってくるからです。
- 出題テーマは?
- 講義のノートやテキストで、授業でそのテーマがどのように説明されたかを確認します。授業で扱われていない場合は、授業内容と照らして、そのテーマとの関係性を検討します。
- 出題者が期待しているものは何か?
- その課題は、どのくらいの範囲や深さの調査が求められているのでしょうか?調査の範囲を考えることで、完成までにかかる時間を推測することもできます。
スケジュールをたてる
趣旨を理解したら、いつごろまでに何を終えておけばよいのか、テーマ決定、情報収集、実際に書く時間などを考えて提出までのスケジュールを具体的にイメージして計画します。
執筆計画のためのポイント
- とにかく早目にとりかかる
- 先延ばしにすると、同じ課題に取り組むクラスメイトたちに先に図書館で資料を借りられてしまい、必要な資料がない!と焦る人が多くいます。また、立てた計画は常にうまく進行するとは限りません。できるだけ余裕のあるスケジュールにしましょう。
- 他のやるべきこととのバランスを考える
- 他の課題、授業の予習や復習、サークル活動、アルバイト・・。他の予定とのバランスを考えながら、このレポートのためにかけられる時間はどのくらいあるのか、見積りましょう。
- 現実的で実行可能な計画をたてる
- 壮大な計画をたてても、期限までに実行できなければ全く意味がありません。見積った時間の中で、確実に完成することができる現実的な計画をたてましょう。
扱うテーマを決めて下調べする
課題ですでに「〇〇について」とテーマが与えられている場合でも、テーマの範囲が広い場合には、レポートではどの部分を取り上げるのか、あるいはどの切り口で論じるか、自分でテーマを絞る必要がある場合があります。
大まかなテーマが決まったら(あるいは提示されていたら)、そのテーマについて情報収集を行います。
情報収集においては、そのテーマの周辺にはどのような課題や意見があるのかを確認し、あわせて自分の中に湧いた疑問点などから、「問い」の候補を探すことを意識しましょう。
下調べを行う主な情報源
- 講義のノート
- 教科書・参考書
- 辞書・事典
- インターネット
- そのテーマの入門書
情報の集め方については「情報を収集する」の章で解説します。
TIPS
アイディアに行き詰まった時は、ブレインストーミングをしてみることが有効です。
ブレインストーミングは本来は集団で行う発想法ですが、個人でも行えます。
テーマに関連する言葉や概念を思いつくままに書き出してマッピングしてみましょう。
思考の視覚化の手法には、「マインドマップ」「コンセプトマップ」などがあります。
問いを設定する
テーマの輪郭が見えてきたら、自分が疑問に思ったことや興味をひかれたことに焦点を置き、レポートにおける「問い」を設定します。
例えば「日本のグローバル化について」というテーマの場合、このテーマの中で疑問を持ったことを、問いとして疑問文の形で書いてみましょう。
例)日本の若者は内向き志向と言われるが本当にそうなのか?
次に、レポートの文字数や期限も考慮しながら、執筆可能なサイズの問いへ調整します。
例)慶應の学生における、海外志向について
問いのサイズ調整に使える観点
誰が(Who) | 大学生、大学1年生、男子/女子学生、慶應の学生 など |
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いつ(When) | 最近数年、1980年代 など |
どこで(Where) | 日本全体、首都圏、慶應義塾大学、日吉キャンパス など |
どのように(How) | 心理学的視点から、大学生としての視点から、〇国との比較から など |
自分の答えに導く情報を収集する
問いを設定したら、自分なりの答えへと導く(論証する)ための根拠となる情報を収集します。
下調べの時の広く浅い情報収集とは異なり、自分の答えを裏付ける事実・データ・調査結果などを集めます。時間をかけて調査ができるレポートであれば、自分でアンケートなどを行ってデータを集めるのもよいでしょう。
ただし、思い通りの情報が得られない場合も多くあります。そういった場合は、図書館のレファレンスデスクで、情報の探し方について相談してみましょう。
問いの設定を見直す
それでも、目的の情報が集まらない、情報が多すぎる、調べると自分の考えに誤りがあったなど、自分の問いの修正が必要になることはよくあることです。
途中でうまく進んでいないと感じたら、もう一度、自分の設定した問いについて考え、柔軟に対処しましょう。
アウトラインを作成する
集めた情報を元に、構成を練ります。
例)
日本のグローバル化について
【序論】
日本の若者は内向き志向になっていると言われるが本当にそうなのか?
慶應の学生を対象に留学に関するアンケート調査を行い検証する
【本論】
・若者の内向き志向についての文献での意見を提示する
・日本の大学生の海外留学数の推移を示す
・慶應の学生の海外留学数を示す
・アンケート調査の手法を説明する
・アンケート調査結果を示して分析し、内向き志向について反証する
【結論】
内向き志向ではない!
下書きする
アウトラインにしたがって、自分の主張を裏付けるための材料(文献・データなど)を利用しながら、論理を組み立てていきます。
下書きが完成したら、書いたものを読んで以下の点を確認しましょう。
仕上げをする
アウトラインにしたがって、自分の主張を裏付けるための材料(文献・データなど)を利用しながら、論理を組み立てていきます。
下書きが完成したら、書いたものを読んで以下の点を確認しましょう。
- 参考文献リストを書く
- レポートで利用した文献やデータなどの出所を明示するために引用文献・参考文献のリストを付けます。
書き方は「情報を利用する(引用・参考文献)」の章を参照してください。 - 校正する
- 誤字・脱字はありませんか?
指定の文字数に過不足がないかもチェックしましょう。 - タイトルの確認
- タイトルはレポートの内容を適確に表していますか?読み手に興味を湧かせるようなタイトルであればなおよしです。
- 表題紙作成
- 必要に応じて表題紙をつけます。学籍番号、所属、学年、氏名、授業名、レポートのタイトルなど、書き忘れがないか確認しましょう。
- 提出!
- 指定の提出方法に従って余裕を持って提出しましょう。
TIPS
<もっと知りたい方は>
-
井下千以子,2019,『思考を鍛えるレポート・論文作成法』,第3版,東京:慶應義塾大学出版会.
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市古みどり,上岡真紀子,保坂睦,2014,『資料検索入門 : レポート・論文を書くために』,東京:慶應義塾大学出版会.
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慶應義塾大学日吉キャンパス学習相談員,2014,『学生による学生のためのダメレポート脱出法』,東京:慶應義塾大学出版会.